レポート・報告書
アジ研ポリシー・ブリーフ
No.279 パプアニューギニア:農業とインフラ整備
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- 人口増加などを背景に食料・穀物輸入が高まるパプアニューギニアでは、強靭性強化のため国内農業振興が課題。
- 道路・電力など大規模なインフラ整備とともに、地域の市場(マーケット)の整備・管理能力の向上が必要。
パプアニューギニア(PNG)では、ココア、コーヒー、パーム油など輸出作物のためのプランテーション開発が進む一方、農産物・穀物の輸入の増加が顕著である。その背景には人口増加、国民の生活スタイルの変化に対応して国内での農産物供給が十分に拡大していないことがある。道路・電力などインフラが不十分であること、自給自足的な農業で生計を立てる集団がなお多く、農業生産への参入が増加しないといった理由がある。
人口センサス(2024年)によれば、PNGの総人口は、2011年の728.5万人から2024年の1018.5万人に増加し、人口増加率が依然として高い。また、統計局(NSO)の2022年社会人口労働調査によれば、生産年齢人口(同調査では10歳以上)937.8万人のうち、雇用された人口(労働参加率)は415万人(45.3%)にとどまる。上述のように自給自足的な農業が公式統計に反映されないほか、PNG経済の牽引役である鉱物資源開発の雇用創出力が低いこと、技能のある労働者が少ないことが理由にあげられる。また、415万人のうち農林水産業に従事するのは39.5%である(農林水産業の技能労働者は37.8%、同様に農地等の所有は34.4%)。
首都ポートモレスビーなど都市部の大型のスーパーマーケットの食料品売場を訪れるならば、地場の農産品のほかに、生鮮野菜や米などの輸入品が多いことに気づくだろう。世銀資料によれば、主たる輸入先は、豪州が最も多く、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシアが続く。食糧輸入のなかで注目すべきは米である。米の消費は都市部で多く、米の国内消費の85%が輸入である。実際にスーパーマーケットの店内ではタイ、豪州などからの輸入米が多い。
一般にPNGのような資源開発・輸出国では通貨高となる傾向があり、食料の輸入にも有利になると考えられる。資源開発・輸出が成長の原動力となっている一方、資源の国際価格の変動などがPNG経済に影響する。
コロナ禍後のマイナス成長(2020年)から回復基調にあったPNGでは、近年、景気後退が顕著となった。2023年3月以降の通貨キナの下落が続く。1米ドル=3.5キナ(2023年末)から2025年12月末には1ドル=4.25キナへと下落した。世銀資料によれば、2024年の物価上昇率は7.9%であった(成長率は4.1%)。通貨安は米など輸入食料の消費が多い都市部人口を直撃している(都市部人口は2割程度)。輸入食料の価格上昇に対して都市部の小売店では調達先を国内に変更する動きもあるが、安定的な供給には課題が多い。農業生産拡大のための取り組みを強めることが必須である。
農業インフラとしての市場の整備が課題
PNGにおいては道路などインフラ整備が大きな課題である。首都ポートモレスビーと第2の都市レイ(Lae)をつなぐ道路が完成したと言われるが、2025年11月の筆者の訪問時には未舗装の部分があったり、橋の工事が未完了であったりするなど、基幹路線として利用が拡大するにはなお時間がかかるようである。ADBのある専門家によれば、道路整備と組み合わせる形でローカルの「市場」(マーケットプレース)の整備も行われている(2025年11月インタビュー)。市場を通じて生産者は現金所得を得ることができ、人々は生鮮食品を入手することができる。市場の入場料ないしは使用料の徴収を通じて収入が得られる行政側にも市場の促進は魅力的な施策である。また、輸送その他サービス業への波及効果も見込まれる。また、近くに市場ができることで、それまで自給自足的な農業を営んでいた者が、市場で売るために農業生産を増やすことも期待される。治安維持が課題の地域もあり、市場の警備員を含むスタッフの基本的なスキルの向上による市場の安全や運営の効率性を確保することが不可欠である。また、市場のなかに売店や飲食店等を入れることで経済効果を高める狙いもある(文献①)。また、道路建設・改善により、農村部よりも購買力が高い都市部へのアクセスが向上するならば、農民がより高い利益を得られる機会となり得るだろう。
水産資源の活用も課題
インフラ整備の課題は道路だけではない。約2割と言われる低い電力普及率が地元の水産資源の利用を大きく制約する面がある。冷蔵庫が使えないとコールドチェーンの構築が困難であり、その結果、長期保存できる缶詰や干し魚などが重宝される。たとえば、スーパーマーケットでは、フィリピン産の干し魚など輸入品も多く流通する。海に囲まれた国でありながら、国内の水産資源の活用が十分に行われていないのである。
観光とのリンケージなど新たな手法も必要
美しい自然環境や多様な文化に恵まれるPNGにおいて観光も重要な産業である。日本では定番とも言える観光客による消費を促す仕組み作りが、PNGでも有効かもしれない。ポートモレスビーの海岸部にあるKoki魚市場は、施設が整備され、新鮮な魚介が売られ、誰もが訪れる有名な魚市場であり、地元の人たちに混ざって観光客の姿もみられる。市場の片隅では買った魚の鱗をその場で取ってくれるサービスもある(写真②)。市場周辺に安全で、新鮮な魚介を調理して提供するレストランなどの施設が整備されるならば、売上の拡大に寄与するだろう。
まとめ
広大な国土を有するにもかかわらず、PNGは食料生産におけるそのポテンシャルを活かすことができていない(文献②)。気候変動や世界経済の不安定性など食料供給の安定性に対するリスクが顕著となるなか、食料安全保障面での強靭性を高めるためには、道路・電力など基本的なインフラ整備とともに、人々がより農業生産を増やしていくようなローカルな施設や制度の整備にさらに取り組む必要があるだろう。
参考文献
- Elizabeth Kopel, “Strategy to Improve Market Place in Papua New Guinea,” Spotlight [National Research Institute, PNG], 2021.
- FAO, EU, & CIRAD. Food Systems Profile: Papua New Guinea. Catalysing the Sustainable and Inclusive Transformation of Food Systems.
(いまいずみ しんや/アジア経済研究所)
本報告の内容や意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式見解を示すものではありません
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