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アジ研ポリシー・ブリーフ

No.250 第2次トランプ政権における関税負担率:2025年10月まで

2026年2月6日発行

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  • 2025年10月時点で対米輸出における関税負担率が最も高いのは中国であり、40%弱を示す。
  • 日本の対米輸出における関税負担率は15%程度で推移している。
  • 日本の通商・産業政策には、輸出構造の多角化を含む中長期的戦略が求められる。

トランプ第2次政権(Trump 2.0)の発足以降、米国の関税政策は急速かつ頻繁に変化している。通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミ製品や自動車・同部品、トラック、木材・製材、銅などに追加関税が課されている。また、一部の製品については国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、2025年4月5日から10%のベースライン関税が導入されたが、同年8月7日以降は相互関税率へと移行し、国ごとに異なる追加関税率が適用されている。一方で、半導体製品など、2025年時点においても追加関税の対象外となっている品目も存在する。本ポリシー・ブリーフでは、こうしたTrump 2.0下の関税措置を踏まえ、各国の対米輸出における関税負担率を分析する。

関税負担率

米国の各国からの輸入に関する月次データは、Global Trade Atlasより取得した。具体的には、米国における輸入額(国内消費向け)および関税支払い額を用い、後者を前者で除した値を関税負担率と定義する。つまり、各国からの輸入において実際に支払われた関税総額を輸入総額で割ることにより、1米ドル当たりの輸入にかかる関税額を示す。

このように算出される関税負担率は複数の要因に左右されるが、なかでも対米輸出における品目構成の影響が大きい。相対的に追加関税率の低い品目を多く輸出している国ほど、関税負担率は低くなる。したがって、追加関税率が品目ごとに異なる状況下では、関税負担率を用いることで、各国の対米輸出全体において実際にどの程度の関税負担が生じているのかを把握することができる。他方で、関税負担率の変化を解釈する際には、輸出額や品目構成の変化を併せて考慮する必要がある。

関税負担率の国家間比較と推移

図1は、2024年の対米輸出額上位20カ国を対象に、2025年10月時点における対米輸出の関税負担率を示している。中国の関税負担率が最も高く、40%弱に達している。これは、通商法301条に基づき第1次トランプ政権およびバイデン政権下で課された追加関税に加え、第2次トランプ政権においてIEEPAに基づく20%の追加関税が上乗せされているためである。

図1.2025年10月時点の関税負担率(%):

図1.2025年10月時点の関税負担率(%):

出所)筆者による計算。

中国に続いて関税負担率が高いのは、ブラジル、インドネシア、インドであり、いずれも20%強を示している。ブラジルに対しては、IEEPAに基づき、7月30日から40%の追加関税が課されている(11月13日以降、一部の農産品は追加関税の対象から除外)。インドに対しても、8月27日から25%の追加関税が課されている。一方、インドネシアについては、他国に対する追加関税と同様のものが課されているのみである。40%近い最恵国待遇(MFN)税率が設定されている履物の輸出シェアが高いことが、関税負担率の水準を上げていると思われる。  

次に高い関税負担率を示しているのが日本と韓国であり、いずれも15%程度となっている。日韓に適用されている相互関税率は15%であるが、これは一律に15%の追加関税が上乗せされる措置ではない。MFN税率が15%未満の場合に限り、最終的な関税率が15%となる仕組みであり、MFN税率が15%以上の品目には追加関税は課されない。このため、多くの国が15%を超える相互関税率を課されている状況下では、相互関税率の対象品目に関する日韓の関税負担は相対的に小さい。それにもかかわらず、全体としての関税負担率が他国より高いのは、対米輸出の主要品目が自動車であるためである。自動車については、IEEPAに基づき、4月3日から25%の追加関税が課されている。

日本および韓国よりも低い関税負担率を示す国は、大きく二つの類型に分けられる。第一に、追加関税措置の対象外となっている品目を多く輸出している国であり、集積回路の主要輸出国(マレーシアや台湾、イスラエルなど)などがこれに該当する。第二に、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のメンバー国であるカナダとメキシコである。USMCAの原産地規則を満たす製品については、追加関税の一部または全部が免除されるため、両国の関税負担率は数%にとどまっている。

次に、図2は関税負担率の時系列推移を示している。日本、中国、タイ、メキシコの4カ国を取り上げている。中国に対しては、上述の通り、通商法301条に基づく追加関税に加え、第2次トランプ政権発足後、IEEPAに基づき2月に10%の追加関税が導入され、3月には20%へと引き上げられた。また、同時期に鉄鋼、自動車および同部品に対する追加関税が課された結果、関税負担率は5月にピークを迎えている。その後は、輸出品構成の変化を背景に、関税負担率はわずかに低下している。

図2.関税負担率の時系列推移(%)

図2.関税負担率の時系列推移(%)

出所)筆者による計算。

日本では、IEEPAに基づく品目別追加関税の賦課が本格化した3月以降、関税負担率は緩やかに上昇したものの、6月以降はほぼ横ばいで推移している。一方、タイでは、自動車部品に25%の追加関税が課された5月以降、関税負担率は徐々に上昇している。さらに、10%のベースライン関税の対象品目に対する追加関税率が、相互関税率の適用により19%へ引き上げられた8月以降、関税負担率はわずかながら上昇した。これに対し、メキシコでは、IEEPAに基づく25%の追加関税が導入された3月に関税負担率が上昇した後、大きな変化は見られない。これは、USMCA原産品について追加関税が免除されていることを反映している。

含意

Trump 2.0下の関税措置は、名目上の関税率よりも輸出品目構成を通じて各国の実効的な関税負担を左右している。日本に対する相互関税率は相対的に低いものの、対米輸出が自動車に依存しているため、IEEPAに基づく高率関税の影響を強く受け、関税負担率は高止まりしている。関税負担率の横ばいは安定を意味するものではなく、輸出構造調整による短期的対応が難しい現状を示唆する。日本の通商・産業政策には、関税交渉に加え、IEEPA適用品目への対応と輸出構造の多角化を含む中長期的戦略が求められる。

はやかわ かずのぶ/バンコク研究センター)

本報告の内容や意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式見解を示すものではありません

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