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朝鮮労働党第8次大会と新戦略

一般書

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朝鮮労働党第8次大会と新戦略

著者/編者

出版年月

2023年2月

ISBNコード

978-4-258-04651-5

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内容紹介

内容紹介

朝鮮民主主義人民共和国の金正恩体制が発足して10年が経過した。本書は、アジア経済研究所「朝鮮労働党第8次大会と新戦略」研究会の最終成果として、金正恩時代の約10年間における経済改革と対外政策の特徴を明らかにしつつ、今後の展望を試みるものである。本研究会は当初、朝鮮労働党第8次大会をめぐる現状分析を行うことを想定していたが、党大会後に事業総括報告の全文が公表されないなど、これまでになく情報収集に困難を生じた。そのため、公式報道や実際に講じられた措置、現地の研究論文などの解説といった断片的な事実を積み上げ、帰納的に政策の意図や方向性を導き出すことに注力した。

目次

まえがき

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序章:金正恩時代における政策の連続と変化

筆者:中川 雅彦

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第1章 流動化に向かう幹部人事政策

筆者:中川 雅彦

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第2章 数値目標のない経済計画

筆者:中川 雅彦

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第3章 新たな企業管理制度の確立過程と導入事例

筆者:朴 在勲

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第4章 中央銀行法および商業銀行法の制定と金融制度の変化

筆者:文 浩一

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第5章 対米抑止政策と外交

筆者:宮本 悟

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まえがき

まえがき

本書は、アジア経済研究所における2021年度基礎的総合的研究「朝鮮労働党第8次大会と新戦略」研究会の成果である。本研究会では、経済改革と核戦略を軸にして金正恩時代に入ってからの朝鮮民主主義人民共和国の政治・経済・対外関係に関する現状分析を試みた。

現状分析は本来、現地調査、現地の報道や刊行物、現地訪問者からの聞き取りなどによって得られる情報を整理することに始まる。しかし、日本の公的機関によるこの国での現地調査の機会は、日朝関係が改善しないかぎり、ほぼ絶望的である。また、平壌の公式報道や出版物から得られる情報も限られ、なかでも経済指標の発表は乏しい状況にある。このため、この国の現状分析に携わる研究者はしばしば資料の収集状況によって研究テーマや研究内容を大きく変更せざるを得
なくなることがある。

これに加えて、2020年初めからのパンデミックに伴う朝鮮側の国境封鎖によって、平壌の刊行物や訪朝者からの情報も入手が困難になっている。しかも2021年初めに開かれた朝鮮労働党第8次大会は、事業総括報告の全文が公表されないなど、これまでなく情報の開示が乏しいものであった。本研究会は当初、党第8次大会をめぐる現状分析を行うことを想定していたが、大会に関して得られた情報はあまりにも貧弱であった。そのため、現状分析の対象は金正恩時代のこれまでの10年間に拡げられ、そのなかで党第8次大会に関して言及されることになった。そして、分析の焦点は金正恩時代に入ってから新たに生じた政治および経済での政策の変化を見出すことに置かれた。

本書の各章はいずれもおもに朝鮮語資料を用いて書かれたものであるため、参考文献には朝鮮語資料が並んでいるが、そこでは朝鮮語による表記は省略されている。その理由は、朝鮮語を解しない読者にはそもそも朝鮮語の表記は意味がなく、日本語表記によって当該資料がいつ、どこで、何語で書かれたものであるかを知ることができ、一方、朝鮮語を解する読者にとっては、日朝の語順の共通性や漢字語の共通性によって日本語から当該文献を探すことが十分可能なためである。


編者 中川雅彦