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マクロ計量モデルの活用

一般書

CC BY-ND

韓国文在寅政権の経済政策

著者/編者

出版年月

2022年12月

ISBNコード

978-4-258-04652-2

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内容紹介

内容紹介

朴槿恵大統領の弾劾・失職を受けておこなわれた2017年3月の大統領選挙では、「積弊清算」をスローガンに掲げた文在寅が当選した。韓国政治は保守と進歩の対立が先鋭化していることが知られているが、韓国では李明博、朴槿恵と保守系政権が続いて9年ぶりの進歩系政権の誕生となった。朴槿恵大統領の弾劾に至る過程では政治と財閥の癒着や社会的格差の拡大・固定化に対する批判が強まった。それだけに進歩系の政治家や知識人のなかでは、経済政策の転換を求める声が強かった。進歩派は韓国経済の課題はどこにあると考えているのだろうか、それを受けて文在寅政権はどのような政策を構想し、実行しようとしたのであろうか、そしてそれは果たして成果をみたのだろうか。このような問題意識から、本書は文政権期5年間の韓国の経済政策について、労働、財閥・大企業、中小・ベンチャー企業、対外経済、社会保障の各分野を中心に、その背景と実施過程、成果と限界を明らかにした。

目次

まえがき

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序章:文在寅政権の経済政策――その背景と帰結――

筆者:安倍 誠

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第1章 文在寅政権の労働政策――成功した政策と失敗した政策――

筆者:高安 雄一

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第2章 文在寅政権の財閥・大企業政策――改革圧力から成長戦略への取り込みへ――

筆者:安倍 誠

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第3章 文在寅政権の中小・ベンチャー企業政策――連続性と新たな方向性――

筆者:金 炫成

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第4章 韓国の内向き志向と文在寅政権の対外経済政策

筆者:奥田 聡

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第5章 文在寅政権の社会保障改革と財政負担の増大

筆者:渡邉 雄一

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第6章 文在寅政権における経済政策の策定・遂行・重点の変化――なぜどのように看板政策は失速・変化したのか――

筆者:磯崎 典世

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まえがき

まえがき

本書は 「韓国文在寅政権の経済政策――その理念と実際――」 研究会(2020~2021 年度)の成果である。2017年5月に、韓国では9年ぶりの進歩派政権となる文在寅政権が誕生した。朴槿恵大統領の弾劾を受けて誕生したこともあり、文政権は発足当初から経済分野においても従来の政権ではみられなかった、極めて進歩色の強い政策を打ち出していた。同時にそれに伴う野党との対立や政権内での軋轢も大きくなっていた。大きな変化を目の当たりにして、政策の経済的・思想的背景と政策立案・実行の過程、さらに政策の効果について分析する必要があると考えたことが研究会を立ち上げた第1の動機である。

他方、日本では政界はもちろん学界やマスコミも、韓国の進歩系政治家や知識人とのつながりは弱く、その考えは十分に紹介されてこなかった。折しも、徴用工をめぐる判決や日本による対韓輸出管理の強化などによって日韓関係はかつてないほど悪化していたこともあり、日本では文政権がおこなうことすべてを否定するような論調が支配的であった。文政権の政策を客観的に把握・評価し、その成果を広く一般に公開することが求められていると痛感したことも、本研究会を発足させる大きな動機となった。

当初の研究計画では、研究の手段として韓国現地での政策担当者・専門家とのインタビューおよび1次資料の収集を重視していた。しかし、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、研究期間内に韓国に渡航して調査をおこなうことができなかった。そのため、インターネットや郵送等で入手可能な資料のみをもとに研究を進めざるを得ず、政策の背景や政策立案・実行過程を精緻に分析することには限界があった。研究会では、まずは実行に移された経済政策を現実の経済との関係に留意しながら跡づけるとともに、政権末期における政策の展開を同時進行的に把握していくことに注力した。その情報を整理し、政権終了時点での評価をおこなってまとめたのが本書である。幸い、2022 年秋以降、韓国への渡航は再び自由におこなえるようになってきている。今後、本書を土台に韓国の経済政策に関する研究をさらに深めていきたい。


2022年10月
編者 安倍 誠