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マクロ計量モデルの活用

学術書

CC BY-ND

マクロ計量モデルの活用

著者/編者

出版年月

2022年10月

ISBNコード

978-4-258-04650-8

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内容紹介

内容紹介

『マクロ計量モデルの基礎と実際――東アジアを中心に――』(2018年)、『マクロ計量モデル――その利用と応用――』(2020年)に続く、アジア経済研究所「マクロ計量モデルの活用」研究会(2019~2021年度)の最終報告書。前2著の内容をある程度理解している読者に、マクロ計量モデルおよびそれと連携、またはそれを補完するモデルとしての応用一般均衡(AGE)モデルとベクトル自己回帰(VAR)モデルを解説することにより、さまざまな事象に対する経済モデルの活用に資することが期待される。

目次

第1章 総論 経済モデルによるシミュレーション

筆者: 植村 仁一小山田 和彦、ブー・トゥン・カイ

第2章 実験ツールとしてのマクロ計量モデル

第3章 動学的応用一般均衡モデルを利用したシミュレーション実験――中国・台湾・米国が「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」に参加した場合の経済効果――

第4章 東アジアにおけるFDIと輸出、GDPの関係――ベトナムのケースを中心に――

筆者: ブー・トゥン・カイ

はじめに

はじめに

本書は、アジア経済研究所「マクロ計量モデルの活用」研究会(2019 ~ 2021年度)の最終報告書であり、それは2018年、2020年にそれぞれ公刊した『マクロ計量モデルの基礎と実際――東アジアを中心に――』『マクロ計量モデル――その利用と応用――』(いずれも植村仁一編、アジア経済研究所)に続く活用編と位置づけられるものである。対象とする読者は大学中級程度の経済学、統計学および計量経済学の基礎知識をもつ幅広い層を想定しているが、さらに前2著の内容程度はすでに身に着けている「マクロ計量モデルをはじめとする実用経済モデルをツールとしてある程度使える読者」と付け加えてもよい。なお、書名は研究会・書名の継続性から「マクロ計量モデルの活用」としてあるが、加えてマクロ計量モデルと連携する、あるいはそれを補完するモデル、とくに応用一般均衡(AGE)モデルとベクトル自己回帰(VAR)モデルも取り扱っている。これら3種類のモデルの得意・不得意分野を含む特徴などにも触れることにより、さまざまな事象に対する経済モデルの活用に資したいと考えている。

本書の構成は以下のとおりである。

第1章「総論 経済モデルによるシミュレーション」(植村仁一、小山田和彦、ブー・トゥン・カイ)では、一般に人為的な実験のできない経済の分野における分析ツールの必要性を述べ、本書で取り扱う3種類の実用経済モデルの特徴およびその長所と短所についてまとめている。

第2章「実験ツールとしてのマクロ計量モデル」(植村仁一)では、マクロ計量モデルによるシミュレーション実験の形態を解説し、単一国モデルとしてマレーシアを取り上げ、モデルの満たすべき特性などを確認するためのシナリオ実験を行い、追加的な実験とあわせて政府の財政出動は細く長くあるべき、という結論を導いている。また、「東アジア地域・貿易リンクモデル(以下、「東アジア貿易リンクモデル」)」の活用では環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に中国、台湾および米国が参加するいくつかのパターンを想定し、それぞれによってTPP先行国、先行ASEAN、CLMVといったグループが受ける影響を計測する。シナリオの一部は第3章(小山田和彦)と共有しており、別__のモデルによる同一シナリオの分析を試みている。

第3章「動学的応用一般均衡モデルを利用したシミュレーション実験――中国・台湾・米国が『環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)』に参加した場合の経済効果――」(小山田和彦)では、第2章同様にCPTPPに中国・台湾・米国が単独もしくは同時参加するケースを例として取り上げ、マクロ計量モデルベースの「東アジア貿易リンクモデル」を補完することを目的として新しく開発したAGEモデルを使って実施したシミュレーション実験について報告し、問題点を指摘している。実験では、米国のCPTPP参加によってベトナムが投資不足に起因する資本制約に直面することになり貿易利益を最大限には享受することができなくなることが示唆されており、また台湾と米国が同時にCPTPPに参加する場合に限りベトナム厚生改善傾向に転じることなどが明らかにされる。

第4章「東アジアにおけるFDIと輸出、GDPの関係――ベトナムのケースを中心に――」(ブー・トゥン・カイ)では、現代マクロ経済学の実証分析で主要なツールの1つとしてのVARモデルを活用し、外国から受け入れた直接投資(FDI)が各国のGDPや輸出にどのような影響を及ぼすかという問いを取り上げ、東アジア諸国のデータを用いて分析している。本章の前半では過去数十年のベトナムにおけるFDI受け入れに関する法的整備過程やマクロ経済や国際貿易、およびFDI受け入れの状況を概観している。後半においては、FDIと輸出、GDPの動学的相互依存関係を扱うのに適している符号制約VARというVARモデルの一種を用いて上述のテーマを分析している。分析結果から、ベトナムやタイ、マレーシアのケースでFDIはGDPに対して短期のみならず中長期においても有意に正の効果を与えること、タイのケースでFDIは証券投資よりも実物経済に対して効果をもつこと、定量的にはFDI乗数が短期では0.7 ~ 2.4ドル程度、長期では3.5 ~ 11.4ドル程度であること、FDI乗数が国によって異なり、ベトナムはタイとマレーシアと比べFDI乗数が小さく、その差が中長期になるほど大きくなるということが明らかになっている。


編者 植村仁一
2022年2月