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調査研究

研究会一覧2024年度

不確実性がASEAN等新興国の国際資本移動に及ぼす影響

概要

本研究の目的は,不確実性が新興国の資本移動に及ぼす影響を,ASEAN諸国に焦点をあてながら実証的に分析することである。近年,不確実性指標を構築する研究(Baker et al 2016; Ahir et al 2022)が増えているが,不確実性指標が資本移動に及ぼす研究はChoi et al (2023)など少数である。

世界金融危機以降,欧州債務危機,米中貿易摩擦,COVID-19パンデミック,ロシアによるウクライナ侵攻など,世界経済の不確実性を高める出来事が続いており,国際資本移動もその影響を受けている。不確実性が高い状況ではリスク・プレミアムが高くなり、投資家が投資を減らしたり(他に投資先を変更したり)すると考えられる(Choi et al, 2023)。

具体的な作業としては,新聞記事などをテキスト分析して構築された不確実性指標,国際資本移動に関する統計などからパネルデータを構築し,VARモデルなどの推計を行う。

実証分析の定式化については,無制約のパネルVARモデルから,理論的示唆に基づく制約を課すパネルSVARモデルの応用を想定している(Pedroni 2013; Canova and Ciccarelli 2013)。本研究の目的は,不確実性が新興国の資本移動に及ぼす影響を,ASEAN諸国に焦点をあてながら実証的に分析することである。近年,不確実性指標を構築する研究(Baker et al 2016; Ahir et al 2022)が増えているが,不確実性指標が資本移動に及ぼす研究はChoi et al (2023)など少数である。

データの選定に際しては,不確実性指標についてはCascaldi-Garcia et al (2023)や篠原他(2020),国際資本移動についてはKoepke and Paetzold (2020)などのサーベイ論文を参照し,その定義,利用可能性,応用可能性などの比較検討を行う。例えば,Ahir et al (2023)による世界不確実性指数(World Uncertainty Index: WUI)は,四半期ごとに発行されるEconomic Intelligence Unit (EIU)の国別レポートをテキスト分析して143カ国について作成されている。単一ソースに依拠するという問題点はあるが,各国の政治・経済情勢を統一的な方法で分析するEIUレポートを用いることで,時系列,国際間の比較を行いやすいという利点もある。ASEAN諸国については,ブルネイを除く9カ国で利用可能である。WUIを用いることで,例えば,①米中貿易摩擦に由来する不確実性の高まりがASEAN諸国への直接投資流入に及ぼす影響とその動学的特性,さらには他地域の新興国への影響との相違点,②自国あるいは米国,EU,日中韓など主要国で生じた不確実性がASEAN諸国への直接投資以外の資本流入(銀行融資,株式・債券投資など)に及ぼす影響,などについて実証分析が可能になると想定している。これらはVIX指数にはないWUIの利点であるとともに,研究会委員が知見を有するASEAN諸国に焦点をあてることで,現実に即したより深い分析や解釈が可能になる。また,直接投資も分析対象として銀行融資,株式・債券投資への影響と比較検討することでChoi et al (2023)を超える示唆が得られる。

実証分析の定式化については,無制約のパネルVARモデルから,理論的示唆に基づく制約を課すパネルSVARモデル、さらにはローカル・プロジェクション法の応用を想定している(Pedroni 2013; Canova and Ciccarelli 2013; Jordà2005)。

期間

2024年4月~2026年3月

研究会メンバー
役割 メンバー
[ 主査 ] 梅崎 創
[ 幹事 ] 周 揚

※所属は研究会発足時のものです。

予定する研究成果
  • 査読付外国語学術誌投稿