調査研究

研究会一覧 2022年度

移民の街サンパウロにおける外国人の安全をめぐる問題への取り組み(2022_1_40_005)

概要

 グローバル化の進展とともに国境を越えて移動する人々への関心が高まり、都市に集まる移民や外国人に関する研究が多数行われてきた。それらの中に、移住先での脆弱性から犯罪の標的となる可能性も高い外国人の安全をめぐる問題があり、改善に向けた取り組みが行われている。国内外の移民を多く受け入れ、ブラジルで人口が最大で経済の中心都市であるサンパウロには、現在でも多くの外国人が居住や往来をしている。しかし、サンパウロでは犯罪が日常的に多発するなど、治安は劣悪な状況となっている。  このような認識をもとに本研究では、移民受け入れで先駆的な国であるブラジルのサンパウロを対象として、外国人の安全をめぐる問題への取り組みについて分析する。提案者は、サンパウロ州がコミュニティをベースとした治安対策として導入した日本の交番制度に注目し、調査研究を行った。その結果、外国人は自身が置かれたいくつかの境遇のため、治安に関する情報を共有する場との関係性が希薄であることが明らかとなった。そのため本研究では、「サンパウロの外国人の安全を保障すべく、どのような取り組みが行われ、どれほどの効果をもたらしているか」という問いを立てる。そして、「政府や民間による取り組みが行われているが、外国人は不法滞在や違法就労な場合があり、言語の問題を抱え、ブラジル人とあまり交流せず、特定の地域に集住する傾向にある。そのため、外国人の安全問題をめぐる取り組みの効果は限定的である」という仮説を検証する。  その際、サンパウロの交番に加え、地域ごとに設置されている「コミュニティ安全審議会」、外国移民を支援するNGOや教会、外国人が多数居住や労働する地区などに関して、提案者が関係者に行ったインタビュー調査や参与観察のデータを活用する。そして、社会学における制度の整備とアクターの行為およびそれらの相互作用への着目を枠組みとして、主に民族誌的なアプローチによる定性分析を試みる。

期間

2022年4月~2023年3月

研究代表者

近田 亮平

研究成果

査読付外国語学術誌投稿