出版物
アジア経済研究所 書籍復刻プロジェクト
(アジアを見る眼)「くらし」シリーズ

「あそび」と「くらし」――第三世界の娯楽産業――
- 著者/編者 山本一巳・大岩川嫩
- ISBNコード 978-4-258-11006-3
- 底本出版年月 1994年3月
- 復刻出版年月 2025年9月
- 判型・ページ数 新書・272ページ
編者によるご紹介
「娯楽は、衣・食・住に次いで生活に欠かせないものである」(はしがき)と、という観点から、くらしシリーズの最後の一冊となる本書が生まれた。本書の34編が対象として取り上げたのは次の各国・地域である。
東アジア(韓国、中国、台湾、香港)、東南アジア(フィリピン、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、ベトナム)、南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ)、中東(エジプト、イラン、トルコ、イラク、イスラエル、モロッコ)、アフリカ(コートジボワール、コンゴ、ジンバブエ、ケニア、タンザニア)、ラテンアメリカ(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、ウルグアイ)、補章(日本)。
途上国・地域の人々の旺盛な暮らしの活力は「あそび」の文化に溢れている。社会学者の眼でその実態を紹介する各論の内容は、必ずしも「娯楽産業」という概念にとらわれることなく、素朴な庶民の“おしゃべり”の場も生活のなかでの「娯楽」として位置付け、伝統的な村落共同体の祭りの描写にも言及する。いっぽう、映画産業の斜陽化、テレビやカラオケの普及、野球、サッカー、ラグビーなどのスポーツへの能動・受動的な参加、国際的な産業と化した観光業の動向などが大きく取り上げられている。カラオケが日本発祥の娯楽としてあっというまに海外に広まったことは補章で知ることができる。室内競技・ゲームの盛衰も語られ、イスラム諸国やイスラエルでの宗教と娯楽の文化衝突、軋轢の場面も見逃されてはいない。ギャンブル性の高いカジノについてはウルグアイでの探訪があるが、市営当局者は「娯楽産業」という定義は否定していたという。
こうして、多彩にして多種多様な各国事情を知ることは、平和な世界でこそ成立する「あそび」の世界の文化交流促進を考えることに通じるといえよう。(大岩川嫩, 2025年4月)
復刻版(オンデマンド版)を購入する(有料)
<本書初版はPDF形式でリポジトリにて公開されており、ダウンロード可能です。>
目次
- はしがき(山本一巳)
- Ⅰ 東アジア
- 韓国 カラオケ・ルームの爆発的流行(中川雅彦)
- 中国 映画――政治、娯楽、芸術の狭間で(丸川知雄)
- 台湾 あそびと著作権(佐藤幸人)
- 香港 純粋なエンターテイメントの世界(沢田ゆかり)
- Ⅱ 東南アジア
- フィリピン 都市は映画、地方は闘鶏(山本一巳)
- タイ ムラに旅芸人がやってくる(重冨真一)
- インドネシア (その一)ジャカルタの「マラム・ミング」(松井和久)
- インドネシア (その二)歌謡界の二人のスーパースター(三平則夫)
- シンガポール 多様な遊びを楽しむ(原田忠夫)
- マレーシア モザイク模様の娯楽(鳥居高)
- ミャンマー パゴタ詣りに憩う人々(桐生稔)
- ベトナム 健全娯楽か退廃文化か――ドイモイ下で楽しむ人々(出井富美)
- Ⅲ 南アジア
- インド (その一)ボンベイの映画(押川文子)
- インド (その二)バンガロールのオートバイ・ラリー(井上恭子)
- パキスタン 日本人には見えにくい娯楽(深町宏樹)
- バングラデシュ ダッカ庶民の遊びと生活(村山真弓)
- スリランカ 民衆の娯楽と支配者の娯楽(中村尚司)
- Ⅳ 中東
- エジプト おしゃべり・サッカー・映画(清水学)
- イラン イスラームの規範のなかで(鈴木均)
- トルコ テレビ――国家独立の終わり(間寧)
- イラク 「サッカー国枠主義」と歓楽の都バグダード(酒井啓子)
- イスラエル 世俗の宗教の軋轢のなかで(池田明史)
- モロッコ 踊り子一座(宮治一雄)
- Ⅴ アフリカ
- コートジボワール ダンスとサッカー(原口武彦)
- コンゴ バビー・フット――ブラザヴィルの「ゲーセン」と職人気質(武内進一)
- ジンバブエ 入植者たちのスポーツライフ(平野克己)
- ケニア 楽しい娯楽・おそろしい「娯楽」(丹埜靖子)
- タンザニア 音楽を楽しむ三つの場(池野旬)
- Ⅵ ラテンアメリカ
- メキシコ 大衆の「憂さ」を晴らす映画とサッカー(相原好江)
- ブラジル 内に向かう娯楽(小池洋一)
- アルゼンチン 映画・タンゴ・サッカー(宇佐美耕一)
- コロンビア 大衆のスポーツ〜サッカーとテホ(幡谷則子)
- ウルグアイ 市営カジノでの対話(吉田ルミ子)
- 補章
- 日本 遊びをせんとや生まれけん(大岩川嫩)
- あとがき(大岩川嫩)