出版物
アジア経済研究所 書籍復刻プロジェクト
(アジアを見る眼)「くらし」シリーズ

「きもの」と「くらし」――第三世界の日常着――
- 著者/編者 宮治一雄・大岩川嫩
- ISBNコード 978-4-258-11005-6
- 底本出版年月 1993年3月
- 復刻出版年月 2025年9月
- 判型・ページ数 B6変形・266ページ
編者によるご紹介
人間社会固有の文化である「衣」の世界でも、とりわけ“衣服と環境”という問題意識をもって仕事着・普段着という日常着に視点を据えてみるとき、途上国の人々の現状にはどのような問題点がみえてくるのだろうか。それを本書は35人の論稿からまとめており、取り上げた対象地域は、次のとおりである。
東アジア(韓国、中国、台湾、香港)、東南アジア(タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、ベトナム)、南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカ)、中東(イラン、エジプト、トルコ、イエメン、イラク、イスラエル、アルジェリア)、アフリカ(タンザニア、コートジボワール、ウガンダ、南アフリカ、ジンバブエ、ケニア)、ラテンアメリカ(ブラジル、メキシコ、コロンビア)、オセアニア(パプアニューギニア)、補章(日本)。
この時期の諸報告が語るものは、おどろくほど多様な各国・地域の衣服のありようである。それらは、各民族の歴史、社会そしてその時点での政治状況をも反映していて、興味が尽きない。韓国や日本では伝統衣装である韓服、和服は日常着からはすでに姿を消している。いっぽう南アジアのインドなどの国々では民族衣装のサリーがその機能性と美を誇って女性の日常着に主流の位置を占め続けているし、東南アジアのビルマ(ミャンマー)でも腰巻様のロウンギ―が男性にも健在だった。イランなどのイスラム諸国ではいったん後退した女性のヘジャブ着用などがイスラム原理主義の台頭などの政治社会状況とあいまって復活、厳格化されている。イエメンの男性の半月刀(ジャンビーア)を帯びた普段着姿もある。
21世紀も四半世紀を迎えた現在、ここで取り上げた国々・地域の実情がどうなっているのか、意外と変わっていないのか、再論の機会を待望したい。(大岩川嫩, 2025年4月)
復刻版(オンデマンド版)を購入する(有料)
<本書初版はPDF形式でリポジトリにて公開されており、ダウンロード可能です。>
目次
- はしがき(宮治一雄)
- Ⅰ 東アジア
- 韓国 「過消費」傾向の衣料品(水野順子)
- 中国 漢民族の伝統から多様化へ(木崎翠)
- 台湾 服装にみられる気楽さ(佐藤幸人)
- 香港 過密都市の気軽なマイペース(沢田ゆかり)
- Ⅱ 東南アジア
- タイ アパレル変遷(末廣昭)
- フィリピン 熱帯性気候とアメリカ文化(福島光丘)
- シンガポール 民族服からブランドファッション(原田忠夫)
- マレーシア イスラムと日常着(鳥居高)
- インドネシア 伝統に根ざした現代ファッション(佐藤百合)
- ミャンマー 「腰巻き」を選んだビルマ人(髙橋昭雄)
- ベトナム スカートからズボンへ、そしてスカートへ?(竹内郁雄)
- Ⅲ 南アジア
- インド サリーの「伝統」(押川文子)
- パキスタン シャルワール・カミーズ(山中一郎)
- バングラデシュ バングラデシュの衣装あれこれ(村山真弓)
- ネパール 少女と娘と嫁――衣服さまざま(井上恭子)
- スリランカ シンハラ人の服装文化(中村尚司)
- Ⅳ 中東
- イラン チャードルの下の多様性(鈴木均)
- エジプト ムハッガバート現象(長沢栄治)
- トルコ 西欧化とイスラーム(長場紘)
- イエメン ターバンとヤーバーン(佐藤寛)
- イラク 「伝統」と「おしゃれ」と「イエ社会」(酒井啓子)
- イスラエル 「現代」を拒否する人々(池田明史)
- アルジェリア 伝統服からイスラム服へ(宮治一雄)
- Ⅴ アフリカ
- タンザニア 洋装のタンザニア(池野旬)
- コートジボワール パーニュ女性考(原口武彦)
- ウガンダ カンズとブスティ(吉田昌夫)
- 南アフリカ 空港で働く人々(林晃史)
- ジンバブエ 新たなる伝統をめざして(平野克己)
- ケニア 洋服と伝統衣装・男と女――ケニアの衣生活(丹埜靖子)
- Ⅵ ラテンアメリカ
- ブラジル 制服と規律(小池洋一)
- メキシコ メキシコ人はどこで衣料品を買うか(星野妙子)
- コロンビア ポンチョのルーツ――アンデス高地民族の日常着(幡谷則子)
- Ⅶ オセアニア
- パプアニューギニア 裸と着衣に関する一章(塩田光喜)
- 補章
- 日本人と洋装――鹿鳴館から女がジーンズをはくまで(大岩川嫩)
- あとがき(大岩川嫩)