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アジア経済研究所 書籍復刻プロジェクト

(アジアを見る眼)「くらし」シリーズ

「たべものや」と「くらし」――第三世界の外食産業――

  • 著者/編者 岩崎輝行・大岩川嫩
  • ISBNコード 978-4-258-11004-9
  • 底本出版年月 1992年3月
  • 復刻出版年月 2025年9月
  • 判型・ページ数 B6変形・302ページ
編者によるご紹介

人間社会の食生活のなかでも、「およそ家庭以外の経済活動をともなう飲食行為すべてを考察範囲とする」(あとがき)方針によって、“外食産業”をテーマとする本書が編まれた。取り上げた40編は次のとおりである。

東アジア(韓国、中国、台湾、香港)、東南アジア(タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、ベトナム)、南アジア(ネパール、パキスタン、インド、バングラデシュ、スリランカ)、中東(イラン、エジプト、トルコ、イエメン、イラク、イスラエル、アルジェリア)、アフリカ(タンザニア、ザンビア、コートジボワール、ザイール、ナイジェリア、ケニア)、ラテンアメリカ(ブラジル、アルゼンチン、チリ、メキシコ、コロンビア、ペルー)、補章(ロサンゼルス、ロンドン、パリ、日本)。

対象とした各国・地域では民族の伝統的な食生活は健在であり、現地で生活した研究者たちの語る「たべものや」の具体的な体験談はいずれも生き生きとして楽しい。他のくらしの分野では、途上国を訪れた近代化は世界の機械文明先進国による標準化であることがみられたが、「食生活」の場合は、逆にいわゆるエスニックの食材・料理の世界進出の趨勢がいちじるしいという特徴がある。とくにロサンジェルス、ロンドン、パリなどの国際都市の実情をもとりあげたゆえんである。

また、イスラムのハラル食、ユダヤ教徒のコシェル食などの解説をみれば、「食べることは、人間にとっては生きるために不可欠な個人的営みであると同時に、すぐれて社会的な営為の側面をももっている。属する社会、風土に根ざした食生活のうち、“外食”に焦点を合わせて見たとき、その民族や宗教によって異なる伝統的な規範性もおのずから現れ」(あとがき)るという命題をもかみしめることができるだろう。この小冊子の奥行きは深い。(大岩川嫩, 2025年4月)

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<本書初版はPDF形式でリポジトリにて公開されており、ダウンロード可能です。>

目次
  1. はしがき(岩崎輝行)
  2. Ⅰ 東アジア
    1. 韓国 多様化しつつ伝統維持の外食(谷浦孝雄)
    2. 中国 (その一)未発達な外食産業(木崎翠)
    3. 中国 (その二)中国東北の外食産業(早瀬保子)
    4. 台湾 質・量ともに膨らむ外食産業(佐藤幸人)
    5. 香港 香港の外食産業――庶民の「食」の変遷(沢田ゆかり)
  3. Ⅱ 東南アジア
    1. タイ ビニール袋のタイ料理(重冨真一)
    2. フィリピン バラエティーに富む外食産業(山本一巳)
    3. シンガポール 「熟食小販」の変遷(木村陸男)
    4. マレーシア クアラルンプルの屋台産業の発展とブミプトラの進出(堀井健三)
    5. インドネシア 「五本足」と「高級レストラン」の間(佐藤百合)
    6. ミャンマー 繁盛する朝飯屋(桐生稔)
    7. ベトナム 「刷新」と外食産業の刷新(竹内郁雄)
  4. Ⅲ 南アジア
    1. ネパール タカリ族の旅籠(井上恭子)
    2. パキスタン 楽しい一膳飯屋(深町宏樹)
    3. インド 内食文化社会のなかの外食産業(押川文子)
    4. バングラデシュ 多様化の兆し見せる外食産業(望月真弓)
    5. スリランカ 社会変容と外食産業(中村尚司)
  5. Ⅳ 中東
    1. イラン 庶民の外食・アーブグーシト(鈴木均)
    2. エジプト エジプトの外食産業(清水学)
    3. トルコ そとめしにみるたてとよこ(間寧)
    4. イエメン 外食産業の流行らぬわけ(佐藤寛)
    5. イラク ガス屋とハンバーガーショップ(酒井啓子)
    6. イスラエル 戒律と国際緊張の国での外食事情(池田明史)
    7. アルジェリア モノ不足経済と飲食業(宮治一雄)
  6. Ⅴ アフリカ
    1. タンザニア 外食にみる庶民の味(池野旬)
    2. ザンビア 外食産業の発達を阻む貧困と都市構造(児玉谷史朗)
    3. コートジボワール アビジャンのマキ(原口武彦)
    4. ザイール キンシャサの胃袋を支えるシクワング(武内進一)
    5. ナイジェリア 掘っ立て小屋のメニュー(望月克哉)
    6. ケニア 二重構造の食文化(丹埜靖子)
  7. Ⅵ ラテンアメリカ
    1. ブラジル 外食はまだ贅沢(小池洋一)
    2. アルゼンチン 外食文化に経済危機の影(宇佐見耕一)
    3. チリ 高級レストラン主流の外食産業(吉田秀穂)
    4. メキシコ アメリカ的食文化の浸透(星野妙子)
    5. コロンビア 食文化と外食産業(幡谷則子)
    6. ペルー 豊かさと貧しさと(遅野井茂雄)
  8. Ⅶ 補章
    1. ロサンゼルスのエスニック料理店(奥田聡)
    2. 圧倒的に強いエスニック料理(ロンドン)(浜渦哲雄)
    3. パリの国際性とエスニック料理(岩崎輝行)
    4. 日本人と「外食」――日本現代史の一断面(大岩川嫩)
  9. 付 外食事情の各国比較(アンケート集計結果)
  10. あとがき(岩崎輝行/大岩川嫩)
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