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アジア経済研究所 書籍復刻プロジェクト

(アジアを見る眼)「くらし」シリーズ

「はかり」と「くらし」――第三世界の度量衡――

  • 著者/編者 小島麗逸・大岩川嫩
  • ISBNコード 978-4-258-11000-1
  • 底本出版年月 1986年3月
  • 復刻出版年月 2025年9月
  • 判型・ページ数 B6変形・250ページ
編者によるご紹介

編者・小島麗逸が担当していた「日中経済統計比較研究」プロジェクトを進める過程で、中国における多様な度量衡の解明が必要不可欠であることを痛感して他の地域研究者にも呼びかけたことを契機として、22カ国・地域を対象とし、35人の執筆者による多彩な度量衡の実態と問題点が展開されている。世界的な工業化、貿易の発展によって国家レベルではメートル法を基準とする近代的な国際標準化が進行した現在でも、古来からの民族・文明のありように根差した単位や尺度は死滅することなく、村や市場の人々の“くらし”のなかに生き長らえている多くの例をここにみることができる。

具体的には、東アジア(中国、韓国)、東南アジア(マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ビルマ)、南アジア(インド、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン)、中東(イラン、イラク、エジプト)、アフリカ(ナイジェリア、コートジボワール、ケニア、タンザニア)、ラテンアメリカ(メキシコ、ブラジル)の各国について1人ないし複数の研究者がみずからの体験談を交えながら度量衡の歴史と現実を興味深く語っている。さらに、ラテンアメリカ全般についてメートル法導入を中心に述べる論、アジア諸国を中心として「発展途上国における工業標準化制度」を解説する補章もある。また先進国のアメリカ合衆国がいまなおメートル法への移行を明確にせずヤード・ポンド法を脱却していないことについての随想も掲載されている。

こうして、「度量衡をめぐる諸問題が、長い歴史的経過のなかで辿ってきた道筋と、現在人類史上かつてない全地球的な経済社会の国際化という歴史的時点に直面していることの問題点が集約されて示されている」(あとがき)のが、この小冊子のもつ独自の意義であるといえよう。(大岩川嫩, 2025年4月)

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目次
  1. はじめに――多様性と統一と(小島麗逸)
  2. Ⅰ 東アジア
    1. 中国――急ぎすぎるほどの統一化(小島麗逸)
    2. 中国――山東農村の度量衡(中生勝美)
    3. 韓国――斗落と日耕(新納豊)
  3. Ⅱ 東南アジア
    1. マレーシア――土着の度量衡単位(堀井健三)
    2. フィリピン――穀物容量単位(梅原弘光)
    3. フィリピン――マニラの市場で(藤森英男)
    4. インドネシア――ジャワの今昔(加納啓良)
    5. インドネシア――ミナンカバウの米の軽量(岩崎輝行/米倉等)
    6. タイ式尺貫(野中耕一/末廣昭)
    7. 東北タイ農村にみる度量衡(林行夫)
    8. ビルマ――ダドーンドゥン(斎藤照子)
    9. ビルマ――容積単位と籾取引(高橋昭雄)
  4. Ⅲ 南アジア
    1. インドの規格統一(伊藤正二)
    2. 東北インド部族の度量衡(S・N・ミシュラ)
    3. 東インドの小さな村から(押川文子)
    4. 西インドのある村で(篠田隆)
    5. バングラデシュ――固有の単位とヤード・ポンド法(佐藤宏)
    6. スリランカ――共同体の尺度と行政の単位(中村尚司)
    7. 錯綜の目立つパキスタン(深町宏樹)
  5. Ⅳ 中東
    1. イランの度量衡(岡﨑正孝)
    2. イラク――ドゥヌムとマシャーラ(糸賀昌昭)
    3. エジプト――伝統と近代を結ぶ叡智(鈴木弘明)
    4. エジプト――フェッダーンとキーラート(長沢栄治)
  6. Ⅴ アフリカ
    1. ナイジェリア――度量衡のない農村の定期市(島田周平)
    2. コート・ジボワール――五フランが一ダルシ(原口武彦)
    3. ケニアの家畜単位(池野旬)
    4. タンザニア――市場で使われる穀物の軽量容器(吉田昌夫)
  7. Ⅵ ラテンアメリカ
    1. ラテンアメリカの度量衡――メートル法導入を中心に(今井圭子)
    2. メキシコ――旧植民地時代の遺制から(星野妙子)
    3. ブラジルの度量衡(小池洋一)
  8. 補章
    1. 地域理解のいとぐち――農村調査のなかの度量衡(高橋彰)
    2. 発展途上国における工業標準化制度――アジア諸国を中心に(大来俊子)
  9. 随想
    • タイ――小さな美術品 オピアム・ウエイト(石田忠)
    • ヤード・ポンド法とアメリカ(山崎茂)
  10. あとがき(大岩川嫩)
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