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ミャンマーPart 2:文民体制へのソフトランディング

トピックリポート

No.13**

桐生 稔 編
1995年12月発行
CONTENTS

表紙・目次等

まえがき

エグゼクティブ・サマリー / 桐生 稔

1. 1995年7月10日、6年間の自宅軟禁から解放されたスーチー女史は、「長期的視野に立った民主化運動」を進めるとして、軍政との直接対決を避ける旨明らかにした。そして毎週末自宅で、簡単な演説を行う集会を開き、国民に対するメッセージを送り続けている。

2. スーチー女史は、90年以降の軍政による干渉で衰退した国民民主連盟(NLD)の組織の建て直しを行い、10月にはNLD書記長に復帰した。しかし、軍政は、この決定を承認していない。10月に入って自宅前集会の規模が次第に大きくなり、交通規制を行う警官隊とNLD党員が軽い衝突をするようなことも起こるようになった。

3. スーチー女史は、軍政首脳との直接対話を要求しているが、軍政はこれを無視し続けている。このため、11月28日から開催された憲法制定のための国民会議(制憲会議)を、NLDは翌29日からボイコットすることに決定した。これに対し、軍政はNLD代議員86人の代議員資格を剥奪して、NLD抜きの制憲会議を続けている。

4. このため、軍政とNLDとの緊張関係が高まっており、スーチー女史と軍政首脳との直接対話が実現しない限り、当面不安定な情勢が続くことになるだろう。しかしいまのところスーチー女史もNLDとしても、街頭行動などを通じての反軍政直接行動を始める考えはないようだ。スーチー女史としては、これ以上、軍政を刺激することを避けながら、なんとか直接対話を実現できることを望んでいるようだ。しかし、一部の学生、青年僧侶が集会やデモを計画したとの動きもあり、暫く情勢は流動的である。

5. 軍政にとっては、ようやく国内外から得られた一定の評価を後退させるような態度、とりわけスーチー女史を含む民主化勢力への弾圧という形はとり難い状況にある。軍政としては、11月28日からの制憲会議は連邦制、行政制度などについて審議する重要な会期と位置づけており、NLD抜きの審議はその正当性を問われかねない訳で、手痛い打撃と受けとめている。

6. とくに連邦制についての審議は、全民族の合意が前提として、各少数民族武装組織との和平がほぼ完了し、ようやく全民族代表がテーブルにつける可能性がでてきた時だけに、NLDのボイコットは、きわめて厄介な問題となっている。

7. 少数民族武装組織との和平交渉は、95年6月末までに15のグループと成立し、残る国内最大の組織カレン民族連合(KNU)との交渉は12月中にも予定されている。KNUとの和平交渉が成功すれば、国内の政治指向の全武装グループとの間で和平が成立したことになり、独立後半世紀間続いてきた民族間紛争が終息することになる。またシヤン高原で麻薬取引を主として武装集団となっているクンサーのロイマウ軍も、11月にクンサーが引退を表明するなど、その活動が鈍化しており、ミャンマー国内の治安は急速に改善される見通しである。

8. 経済は、94/95年度のGDPが6.8%の成長を示し、さらに95/96年度も8%台の成長が見込まれ、好調を持続している。とくに稲作が順調で94 /95年度の1800万トン(籾)から、95/96年度は、1900万トン台に増加することが確実になった。これにより、米の輸出は、94/95年度の 100万トンから、95/96年度には150万トンを超えると見込まれている。また民間外資の流入増により、建設、運輸、金融部門が順調に伸び、また製造業では国営部門がいぜんとして停滞しているなかで、民間部門がさらに活性化している。

9. こうしたなかで、物価は94/95年度に引き続き、95/96年度も23~24%の上昇率を示している。しかし、稲作が順調なことから食料価格が高値ではあるが安定している。国内の好景気を反映して輸入が急増しており、さらに貿易収支の赤字幅が拡大している。

10. 民間外資の動きは、スーチー女史解放を好感して、さらに活発化している。95年10月末現在の外資の進出は認可ベースで160件、30億ドルに達し、国家計画・経済発展省による見通しでは、96年3月末までに200件、40億ドルの規模になるとしている。外資進出に際し、ネックとなっている二重為替(公定と実勢レートの乖離)について軍政は、平価切下げのための特別融資引出しについてIMFとの協議が10月に開始され、IMFは調査を開始するとの意向を固めたと云われている。なお、軍政は切下げまでの暫定措置としてFEC(外資券)に限り、実勢レートによるチャットとの交換を許可し、そのための交換所を設置する方針を固めたもようである。

11. スーチー女史解放後の諸外国の対応は、日本政府が、新規無償、円借款及び貿易保険などの一部再開を決定したことが目立つ。アメリカは、9月にオルブライト国連大使を派遣したが、いぜんとして「民主化の推進と人権の改善」を要請して、とくに新しい動きはない。他方ASEANは、軍政に対する評価を固め、 ASEAN-10体制に向けてミャンマーの加盟に積極的な発言が増えてきた。

12. NLDによる制憲会議ボイコットが及ぼす政治展開は、なお流動的であり、今後の推移を注視しなければならない。しかし、軍政及びスーチー女史ともに対決状況に発展することを避けようとしているため、大きな騒動を引き起こす可能性は低いが、不測の事態が発生すれば、軍政の考える文民体制へのソフトランディングの時期が大幅に遅れることも考えられる。

第1章

最近の政治展開 / 桐生 稔

第2章

活性化してきた経済 / 西澤 信善

第3章

ミャンマー農政の現在 / 高橋 昭雄

第4章

中国・雲南省とミャンマーおよび周辺諸国との経済関係 / 横田 高明

第5章

ミャンマーの国際関係と民政移管への展望 / 峯 陽一

第6章

経済協力再開に向けて / 桐生 稔