共産党一党独裁体制と大衆組織――ベトナムとキューバの事例から

調査研究報告書

山岡 加奈子石塚 二葉 編

2018年3月発行

表紙(167KB)

第1章

本稿では、キューバとベトナムという、共産党一党体制が長期にわたり継続している二か国をとりあげ、大衆組織の役割や機能を分析する。大衆組織は、共産党一党体制の国々では、国民の動員機能が強調されてきた。しかし、共産党体制が長期化し、国際環境も大きく変化する中で、両国の大衆組織の果たす役割も活動も多様化している。

キューバの女性連盟も、ベトナムの女性連合も、組織としては中央集権的である。しかし末端の支部では、ある程度の裁量が認められている。両国とも農村部と都市部、あるいは地域によって、活動の活発さや内容にはかなりの差が認められる。キューバとベトナムの間にも、歴史的背景や経済改革の進度の違いが、女性大衆組織の活動内容にも影響を与えている。

第2章

本稿は、ベトナム女性連合の機能・役割の変遷について、特にドイモイ期に焦点を当てて、文献サーベイを行う。女性連合は八月革命期から抗仏、抗米戦争期にかけて、女性を戦闘に動員するとともに、土地改革などの社会主義政策の実施にも貢献してきた。ドイモイ期に入ると、女性の利益を代表し、立法や政策に反映すること、女性に対する小規模融資や相互扶助の組織化等を通じて家族経済を発展させることなどが女性連合に期待されるようになった。女性連合は、その組織力と特殊な地位を生かしてこれらの分野でも成果をあげてきたが、社会の多様化や非政府組織の活動の活発化が進む中で女性連合の位置づけも相対化され、その有効性に対する疑問も呈されるようになってきている。