2005年BRICs国際産業連関表の作成と利用 Compilation and Use of the 2005 BRICs International Input-Output Table
2009年3月発行
はじめに / 研究会の構成 / 目次 (196KB)
序章
解剖BRICs -産業連関分析の可能性- (1.03MB) / 猪俣哲史
第一章
天然資源とブラジル -構造パス解析- / 猪俣哲史
第二章
ロシアの新分類産業連関表体系 (1.08MB) / 久保庭眞彰
ここでは,まず新産業分類(国際標準分類)に基づいて作成されたロシア産業連関表体系(供給表と利用表)の概要を紹介する。新産業分類と旧産業分類を比較対照して示し,最新の産業連関表である2005 年産業連関表体系を紹介する。次に,ロシアのGDP 統計と産業連関表統計に固有の問題である鉱業(原油・天然ガスがその中心)部門の市場価格表示の付加価値の捉え方の問題を示し,第一次的代替推計を提示する。最後に,生産性分析や動学分析に産業連関表体系を拡張する際の基本的論点である資本ストック統計について議論を進める。
第三章
インドの産業構造 -インド産業連関表による分析- (1.12MB) / 佐藤創・桑森啓
本章では,産業連関分析の基本的な分析手法を用いて,インドの産業構造の特徴を明らかにした。分析の結果,1990 年代以降のインド経済の成長は,中間層の増加による民間消費の拡大によってもたらされたことが明らかとなった。また,少しずつではあるが,輸出の役割も大きくなりつつある。また,インドの生産技術構造は,中国や東南アジア諸国と高い類似度を示しており,韓国,台湾,日本などの東アジアの国々に比べ,技術水準が低いことも示唆された。
第四章
インド産業の生産ネットワーク -質的産業連関モデルによる分析- (1.03MB) / 桑森啓
本章では,質的産業連関分析をインドの産業連関表に適用し,インド産業の生産ネットワークの特徴を明らかにすることを試みた。分析の結果,1990年代以降のインドの産業は,化学,窯業・土石製品,金属製品など重化学製造業において生産ネットワークを大きく変化させたことが明らかとなった。
第五章
空間的付加価値連鎖と地域間相互依存関係 -中国の地域間産業連関表を用いて- (1.36MB) / 孟渤
本章では,要因分解法を地域間産業連関表に適用し,空間的付加価値連鎖の仕組みを自地域乗数効果,フィードバック効果及びスピルオーバー効果に分けて考察する。本章は実質化された中国1987 年地域間産業連関表と1997 年多地域産業連関表を用いて,空間的付加価値連鎖の視点から中国地域経済の相互依存関係を明らかにすることを目的としている。
従来の相対水準による評価のほか,地域の実質経済成長率と経済規模を
考慮した絶対水準による計測を行った点が本章の大きな特徴である。
従来の相対水準による評価のほか,地域の実質経済成長率と経済規模を
考慮した絶対水準による計測を行った点が本章の大きな特徴である。
第六章
中国の水問題は解決可能か? -産業連関モデルからのアプローチ- (1.06MB) / 岡本信広
本稿では,中国の水問題を整理し,水供給が少ない中で汚染と需要が拡大していることを示し,第11 次五カ年計画における水問題への取り組みを整理する。そして中国の取り組みにより水問題の解決が可能かどうか,水の産業連関モデルを提示して検証する。結論として,COD の排出削減は可能かもしれないが,水需要の削減は難しいことを主張する。
第七章
国際産業連関表における産業部門の統合 -SPlus 及びR による部門統合プログラムの利用- (1.04MB) / 内田陽子・野田容助
国際産業連関表は,国間の相互依存分析や国際貿易の分析において,非常に有効なツールであり,データセットである。しかし国際産業連関表はデータ量が膨大であり,部門分類の自由な設定などが難しく,そのことが国際産業連関表の使用そのものを妨げる要因の一つとなっているように思われる。本稿では,国際産業連関表における取引額表の産業部門を統合するためのR を用いたプログラムとその実行例を,これまでプログラム言語を扱ったことのない読者にもわかるように紹介している。