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強化されるフン・セン体制――2023年カンボジア総選挙と世襲内閣の誕生――

一般書

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強化されるフン・セン体制――2023年カンボジア総選挙と世襲内閣の誕生――

著者/編者

山田 裕史 編

出版年月

2024年3月

ISBNコード

978-4-258-04663-8

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内容紹介

内容紹介

2023年8月、カンボジアで38年7カ月にわたって政権を担ったフン・セン首相が辞任し、長男のフン・マナエト前陸軍司令官が後を継いだ。なぜフン・センは大方の予想に反して早期の世襲に動いたのか。フン・マナエトら次世代の指導者らによる「世襲内閣」の誕生は、カンボジア政治においてどのような意味をもつのか。本書は、2023年総選挙とその後の新内閣を中心とする国家機関の人事の分析を通じてこれらの問いに答えていく。そこから明らかになるのは、フン・セン「政権」は終わっても、フン・セン「体制」はこれまでよりも強化された形で続いている点である。2023年総選挙と新内閣発足を経て何が変わり、何が変わっていないのか、急展開をみせるカンボジア政治のいまを読み解く。

目次

まえがき

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第1章 独裁強化後の内政の展開――2023年総選挙の政治的文脈――

筆者:山田 裕史・新谷 春乃

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第2章 安定的な世襲の実現をめざして――2023年総選挙がもつ意味――

筆者:山田 裕史

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第3章 未完の権力継承――世襲後も続くフン・セン体制――

筆者:山田 裕史

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まえがき

まえがき

2023年はカンボジアにとって歴史的な1年となった。7月23日の第7期国民議会議員選挙(総選挙)は、前回の2018年総選挙に続き最大野党が排除される形で行われ、与党・カンボジア人民党が圧勝した。国連による暫定統治を経て1993年に成立した現体制は「複数政党制に立脚した自由民主主義」を憲法で規定したが、民主化の流れは大きく逆行し、ちょうど30年後の2023年には、実質的な政党間競争がない選挙が完全に定着したといえる。そして2023年総選挙の直後、38年7カ月にわたって首相を務めてきたフン・センが突如、辞任を表明し、8月22日には長男のフン・マナエトを首相とする世襲内閣が誕生した。フン・センを中心とする少数の支配者集団から、その子どもたちへの集団的な権力継承が進んだのである。

本書は、上述のような急展開をみせたカンボジア政治の現状を理解すべく、2023年総選挙とその後の新内閣を中心とする国家機関の人事を、同年12月上旬までに入手できた情報をもとに分析したものである。とりわけ人民党指導部内で進行中の子世代への権力継承に関する人事分析からは、カンボジア政治の現状を理解するのみならず、今後を展望する上でも有用な視点が得られるだろう。

本書は、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所において、2023年5~ 10月に実施された機動研究プロジェクト「2023年カンボジア総選挙――ポスト・フン・セン時代に向けた集団的権力継承」(主査:山田裕史)の最終成果である。本プロジェクトは、同研究所に2022年9月から1年間、国内客員研究員として受け入れていただいた編者と、同研究所の新谷春乃氏の2人体制で行われた。2023年10月までに6回の研究会を開催し、その中間報告として、『IDEスクエア』に3本の記事(「安定的な世襲の実現に向けて――2023年カンボジア総選挙」「世襲環境が整う――2023年カンボジア総選挙」「権力は移譲されたのか?――カンボジアにおける「世襲政権」の誕生」)を発表した。本書はこれらに大幅な加筆・修正を加えたものである。

アジア経済研究所におけるカンボジアの総選挙に関するプロジェクトは、「カンボジアの静かな選挙――2018年総選挙とそれに至る道のり」(初鹿野直美編 2020)に続き2冊目となる。本書は選挙結果と新内閣などの人事の分析に焦点を絞り、機動研究プロジェクトという性質上、2023年度中の刊行をめざした。その結果、分量はコンパクトなものになったが、独裁強化と世襲に動いたカンボジア政治の現状と、世襲内閣発足後も当面はフン・セン体制が継続するという方向性を、時機を逸することなく示せたと思う。

本書の刊行に当たっては、カンボジアでの調査中も含め、多くの方々にお世話になった。とくに本プロジェクトの立案から運営、最終成果のとりまとめまで数多くの助言をくださった山田紀彦氏、大変有益なコメントをくださった2名の査読者、厳しいスケジュールのなかで編集制作を担当していただいた平原友輔氏に深く感謝申し上げたい。

編 者