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開催報告

国際シンポジウム「インド太平洋の最後のフロンティア、メラネシア—その地政学的な意義と持続可能な開発への課題」(7月17日開催)

IDE-JETRO 国際シンポジウム「インド太平洋の最後のフロンティア、メラネシア—その地政学的な意義と持続可能な開発への課題」(7月17日開催)

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

ジェトロ・アジア経済研究所は、7月17日に「インド太平洋の最後のフロンティア、メラネシア―その地政学的な意義と持続可能な開発への課題」と題する国際シンポジウムを開催しました。

太平洋島嶼地域においては、環境変化に対して脆弱な他、国内行政に多くの課題を残しています。また、資源輸出可能な一部の国を除くと、コロナ禍で観光業が深刻な影響を受けるなど、経済の回復はまだ途上にあります。他方、新たなドナーとして中国の影響力の拡大が顕著になるなど国際的な関心が高まりつつあります。

本シンポジウムではメラネシアに焦点をあて、太平洋島嶼国を専門とする研究者や実務家をパネリストに迎え、持続可能な開発のための課題と地政学的な変化を議論しました。天然ガスなどの資源輸出国という顔を持つパプアニューギア、南太平洋の地域協力をリードしてきたフィジー、中国との安全保障協定の締結が注目されたソロモン諸島、独立をめぐる政治対立が暴動にまで発展した仏領ニューカレドニアが含まれるメラネシアについて、地理的・文化的特徴や、歴史と変遷、周辺大国との関係性などを踏まえ、地政学的な重要性や持続可能は開発についての展望等を議論しました。

パネルディスカッションと質疑応答では、インフラが未整備で日系企業が少ない同地域に進出する際の留意点や、地域の文化的特徴を踏まえた現地の人々との接し方などの質問があり、シンポジウム終了後には会場来訪者から登壇者にメラネシア諸国への訪問に関する相談が複数あり、同地域への関心の高さが窺えました。

シンポジウム概要

日時:2024年7月17日(水曜)14時00分~17時00分
会場:ジェトロ本部 5階 A,B会議室(東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル5階)
主催:ジェトロ・アジア経済研究所
後援:国際機関 太平洋諸島センター、一般社団法人太平洋協会、太平洋諸島研究所

プログラム

時間 プログラム
14:00-14:05 開会挨拶
  • 村山 真弓(ジェトロ・アジア経済研究所 理事)
14:05-14:10

趣旨説明

  • 今泉 慎也(ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター 研究センター長)
14:10-14:50

基調講演 「メラネシア・太平洋地域における地政学の意義と持続可能な開発のための課題を探る:パプアニューギニアの視点」

  • バハウ サイモン ピーター(Simon Peter BAHAU)氏(城西国際大学 特命教授)
14:50-15:15

報告(1)「メラネシア地域の政治的混乱と周辺大国による外交的関与」

  • 黒崎 岳大 氏(東海大学 観光学部 准教授)
15:15-15:30

休憩

15:30-15:55

報告(2)「フィジーからみるメラネシアの地政学的重要性」

  • 片岡 真輝 氏(東京外国語大学 講師)
15:55-16:20

報告(3)「パプアニューギニアの開発ポテンシャル・課題と開発協力動向」

  • 大野 政義 氏(Transport Specialist, Transport Sector Office, Sector Group, Papua New Guinea Resident Mission, Asia Development Bank
16:20-17:00 パネルディスカッション   【パネリスト】
  • 鄭 方婷(CHENG Fang-Ting)(ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター 法制度研究グループ)
  • バハウ サイモン ピーター 氏
  • 黒崎 岳大 氏
  • 片岡 真輝 氏
  • 大野 政義 氏

基調講演 「メラネシア・太平洋地域における地政学の意義と持続可能な開発のための課題を探る:パプアニューギニアの視点」

バハウ サイモン ピーター(Simon Peter BAHAU)氏(城西国際大学 特命教授)

基調講演では、城西国際大学のバハウ サイモン ピーター氏より、パプアニューギニアの地政学的な意義、伝統的なパートナーや新たなパートナーとの関わり、当該地域の持続可能な発展のための諸課題について報告がありました。今後のメラネシアの展望として、行政面での制度の強化や、多国間協定と二国間協定のすみ分け、地域における共同リーダーを目指す必要性などについて、メラネシアの地政学や国際政治の観点から解説しました。

報告(1)「メラネシア地域の政治的混乱と周辺大国による外交的関与」

黒崎 岳大 氏(東海大学 観光学部 准教授)

東海大学の黒崎岳大氏は、メラネシアの文化的な特徴と植民地時代からの歴史的な変遷について解説し、政治面ではメラネシアの各国とも独立後国内に民族紛争などを抱えており、議会でも少数政党を束ねた連立政権を樹立している状況を説明しました。また、メラネシア諸国の近年の動向、地域社会の中での動き、米国、中国、豪州等の周辺大国との関係性などについても報告しました。国際社会の中でメラネシア地域の存在感が高まる中、豪州は十分にこの地域との関係を構築しきれていない一方、中国は積極的な関与を続けており、これを受けて米国もこの地域に直接関与を深めてきているとの説明がありました。

報告(2)「フィジーからみるメラネシアの地政学的重要性」

片岡 真輝 氏(東京外国語大学 講師)

東京外国語大学の片岡真輝氏は、コロナ禍における持続可能性に関する論点を整理し、米中対立の最前線としてのフィジーを国際関係の文脈で捉え、その地政学的重要性について報告しました。フィジーにとって、民族対立、クーデター、紛争は、観光客や援助に影響するリスクであり、フィジー国内の安定と民族対立を再燃させないことの重要性、また、地政学的にも重要なメラネシアを、国際関係のプレイヤーとして認識することの重要性について説明しました。

報告(3)「パプアニューギニアの開発ポテンシャル・課題と開発協力動向」

大野 政義 氏(Transport Specialist, Transport Sector Office, Sector Group, Papua New Guinea Resident Mission, Asian Development Bank

アジア開発銀行パプアニューギニア事務所の大野政義氏は、パプアニューギニアの地理的特徴、人口構成、産業の状況や、援助の動向について解説した上で、継続した援助・開発協力が必要とされる分野として、人的資源投資支援や教育・保健セクター支援を取り上げました。また、投資効果の高い経済案件形成支援が必要であるとし、パプアニューギニア独特の開発課題について報告しました。