田中 修

中国経済レポート

歴史決議の「説明」

新領域研究センター 田中 修

2021年12月7日


はじめに

新華社北京電2021年11月16日は、党6中全会で習近平総書記が行った歴史決議の「説明」全文を公開した。本稿では、その概要を紹介する1

1.党19期6中全会に関する考慮

わが党は、これまで歴史経験の総括を高度に重視してきた。

早くは延安の時期、毛沢東同志は「もし、党の歴史を明確にしなければ、歴史上党が歩んできた道を明確にしなければ、事をうまく運ぶことはできない」と指摘した。

抗日戦争に最後に勝利しようとする重要な時期に、1945年、党6期7中全会は「若干の歴史問題に関する決議」を承認し、建党以後とりわけ党6期4中全会から遵義会議までの党の歴史及びその経験・教訓について総括を進め、若干の歴史問題について結論を出し、全党とりわけ党の高級幹部の中国革命の基本問題についての認識を一致させ、全党の団結を増強し、第7回党大会を勝利のうちに開催するために十分な条件を創造し、中国革命事業の発展を有力に促進した。

改革開放の新時期に入り、鄧小平同志は「歴史上の成功経験は貴重な財産であり、錯誤の経験・失敗の経験も貴重な財産である。このように方針・政策を決定すれば、全党思想を統一し、新たな団結に達することができる。このような基礎は最も信頼できるものである」と述べた。

1981年、党11期6中全会は「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」を承認し、新中国成立以前の党の歴史を回顧し、社会主義革命・建設の歴史経験を総括し、いくらかの重大事件と重要人物について評価を行い、とりわけ毛沢東同志と毛沢東思想を正確に評価し、是非をはっきり分け、「左」右両方面の誤った観点を是正し、全党思想を統一し、党が一致団結して前を向き、改革開放と社会主義現代化建設を更にしっかり推進するうえで重大な影響を与えた。

現在、第1の歴史決議を制定してから既に76年が経過し、第2の歴史決議を制定してから40年が過ぎてもいる。40年間、党と国家の事業は大々的に前に発展し、党の理論・実践も大々的に前に発展した。

新たな歴史起点に立ち、過去を回顧し、未来を展望し、党の百年の奮闘の重大な成果と歴史経験とりわけ改革開放40年余りの重大成果と歴史経験を全面総括することは、客観的需要があり、主観的条件も備えている。

党中央は、党創立百周年の重要な歴史的時期に、党と人民が第1の百年奮闘目標を勝利のうちに実現し、小康社会を全面実現し、正に社会主義現代化強国実現という第2の百年奮闘目標に向けて邁進する重大な歴史の時点に、結党から百年の奮闘の重大成果と歴史経験を全面総括することは、全党が一層思想の統一・意志の統一・行動の統一を推進し、全国各民族人民を団結させ牽引して新時代の中国の特色ある社会主義の新しい偉大な勝利を奪取することにとって、重大な現実的意義と深淵な歴史的意義を有している、と考える。

党中央は、党の百年奮闘の歴史過程は波乱に満ち壮大で、時間は度を超えて長く、範囲は広範に及び、検討を必要とする問題が多いと考える。

総じて言えば、「歴史を総括し、法則を把握し、自信を確固とし、未来に向かって歩む」という要求に基づき、党が歩んできた光輝な歴史過程をしっかり総括し、党が人民を団結させ牽引した光輝く成果をしっかり総括し、革命・建設・改革の貴重な経験をしっかり総括し、第18回党大会以降の党と国家の事業を鍛え磨き上げ奮闘推進した理論・実践をしっかり総括しなければならない。

具体的に言えば、

①党が人民を指導し革命・建設・改革を進めた百年の歴史過程を深く検討し、党の勝利から勝利へと歩む偉大な歴史過程、国家と民族のために確立した偉大な歴史功績を全面総括する。

②党がマルクス主義の基本原理を中国の具体的実際と結びつけ、中華の優秀な伝統文化と結びつけることを堅持し、マルクス主義の中国化を不断に推進した百年の歴史過程を深く検討し、新時代の党の理論刷新への理解と把握を深める。

③党が不断に党の団結を擁護し、党中央の権威と集中・統一的な指導を擁護した百年の歴史過程を深く検討し、党の政治建設を強化するというマルクス主義政党の鮮明な特徴と政治的優位性を深刻に理解する。

④党が人民のために幸福を謀り、中華民族のために復興を謀った百年の歴史過程を深く検討し、党と人民が生死を共にし、苦楽を共にした血肉の関係を深刻に認識し、更にしっかり人民のために幸福を謀り、人民に依拠して歴史的偉業を創造する。

⑤党が自身の建設を強化し、自己革命を推進した百年の歴史過程を深く検討し、党内を全面的に厳しく統治する道に終わりはないという決意と確固たる信念を固め、新時代の中国の特色ある社会主義を堅持・発展させるプロセスにおいて、党が常に堅固な指導の核心となることを確保する。

⑥歴史の発展の法則と大勢を深く検討し、常に新時代・新たな征途プロセスにおいて党・国家事業の発展の歴史的主動性を掌握し、既定の奮闘目標を見据えて意気盛んに未来に向けて歩む勇気・パワーを増強する。

党中央は、党の百年奮闘の重大な成果と歴史経験を総括するには、弁証法的唯物論と史的唯物論の方法論を堅持し、「具体的・歴史的、客観的・全面的、相関的・発展的」な観点を用いて党の歴史を取り扱わなければならない、と考える。

正確な党史観を堅持し、大きな歴史観を樹立し、党の歴史・発展のテーマ・主線、主流・本質を正確に把握し、前進の道において党が経験した誤り・曲折を正確に認識し、成功の中から経験を汲み取り、誤りの中から教訓を汲み取り、勝利への道を不断に切り開かなければならない。

歴史ニヒリズムに旗幟鮮明に反対し、思想の誘導と理論の弁別を強化し、党史上のいくらかの重大歴史問題についての曖昧な認識と片面的理解を一掃し、よりしっかりと根本から見直さなければならない。

今回の全会決議起草に対して、党中央は以下の数点を重視するよう明確に要求した。

(1)党の百年奮闘の重大成果・歴史経験の総括に焦点を絞る

わが党は、既に前後して2つの歴史決議を制定している。

建党から改革開放の初めに至るまで、党の歴史上の重大な是非の問題を、この2つの歴史決議は基本的にすべて解決し、その基本論述と結論は今も依然として適用される。

改革開放以降、党の活動でいくらかの問題が出現しているものの、総体として言えば、党・国家の事業の発展は順調であり、前進方向は正確であり、収めた成果は世界の注目を集めるものである。

これに基づき、今回の全会決議は、注力点を党の百年奮闘の重大成果と歴史経験に置くことにより、全党が知恵の蓄積、団結の増進、自信の強化、闘志の増強を推進しなければならない。

(2)中国の特色ある社会主義の新時代という重点を際立たせる

今回の全会決議は、新時代の党・国家の事業が収めた歴史的成果、発生した歴史的変革と累積した新鮮な経験を重点的に総括する。主として考慮したことは、

①新民主主義革命の時期、社会主義革命と建設の時期、党11期3中全会から党11期6中全会までの期間の党の歴史については、前2つの歴史決議が既に系統的総括を行っている。

②改革開放と社会主義現代化建設の新時期の成果・経験については、党11期3中全会開催から20周年・30周年の際に党中央が真剣に総括を行っており、私も改革開放40周年慶祝大会において講話を発表し、系統的総括を行った。

ということである。

このため、第18回党大会前の歴史時期について、今回の全会決議は、既にある総括・結論の基礎の上に略述を進めた。

中国の特色ある社会主義の新時代という重点を際立たせることは、全党が一層自信を確固とし、我々がまさに行っている事柄に焦点を絞ることにより、更に高揚した姿勢で新たな征途に邁進し、新時代において功績をあげることに資するものである。

(3)重大事件・重要会議・重要人物の評価について、党中央が既に出した結論とつなげることを重視する

第18回党大会前の党の歴史上の重大事件・重要会議・重要人物に関して、前の2つの歴史決議、党の一連の重要文献にはいずれも大量の論述があり、いずれも厳粛に結論を出している。今回の全会決議は、これらの基本論述・結論を堅持した。

第18回党大会以降、私は中国共産党創立95周年慶祝大会、中国人民解放軍建軍90周年慶祝大会、中華人民共和国建国70周年慶祝大会、とりわけ中国共産党創立百周年慶祝大会等の重要会議において、党の歴史についていずれも総括・論述を行い、党の百年奮闘目標に対する党中央の新たな認識を体現した。今回の全会決議は、これらの新たな認識を体現しなければならない。

2.決議稿の基本的枠組みと主要内容

決議稿は序論・結論を除き、7つの部分から成る。

(1)新民主主義革命の偉大な勝利を奪取した

この時期、党が直面した主要任務は、帝国主義・封建主義・官僚資本主義に反対し、民族の独立・人民の解放を勝ち取り、中華民族の偉大な復興の実現のために根本社会条件を創造することであったことを述べている。

党が生まれた歴史的背景を分析し、建党の初期と大革命の時期、土地革命戦争の時期、抗日戦争の時期、解放戦争の時期において、党が人民を指導し、革命闘争を進めた歴史過程と創造した偉大な成果、及び毛沢東思想を創立し、党の偉大なプロジェクトの実施・推進の重大成果を総括している。

①中華人民共和国を創立し、民族の独立・人民の解放を実現し、中国が数千年の封建専制政治から人民民主への偉大な飛躍を実現したこと。

②中国共産党と中国人民は、英雄的・頑強な奮闘により、世界に厳かに「中国人民は、ここから立ち上がった。中華民族は、他人が分割するに任せ、ひどく侮辱されいじめられた時代に再び戻ることはなく、中国の発展はここから新紀元を開く」と宣言したこと。

を強調している。

(2)社会主義革命を完成し社会主義建設を推進した

この時期、党が直面した主要任務は、新民主主義から社会主義への転換を実現し、社会主義革命を進め、社会主義建設を推進し、中華民族の偉大な復興の実現のために、根本的な政治前提と制度基礎を打ち固めることであったことを述べている。

新中国の成立後、党が人民を指導して一連の峻厳な試練に戦勝し、新に生まれた政権を強固にし、社会主義改造を成功・完成させ、社会主義制度を確立し、全面的・大規模な社会主義建設を展開し、対外政策の新局面を打開した歴史過程と創造した偉大な成果を総括している。

党が執政党の建設強化で払った努力と累積した初歩的経験を総括し、この時期党が得た独創的な理論成果を述べる基礎の上に、毛沢東思想に対して科学的評価を進めている

①この時期、党が人民を指導して創造した偉大な成果、貧窮し経済・文化が立ち遅れ、人口が多い東方の大国が大きな歩みで社会主義社会へ邁進する偉大な飛躍を実現したこと。

②中国共産党と中国人民は、英雄的・頑強な奮闘により、世界に厳かに「中国人民は旧世界を破壊できるのみならず、新世界も建設できる。社会主義のみが中国を救うことができ、社会主義のみが中国を発展させることができる」と宣言したこと。

を強調している

(3)改革開放と社会主義現代化建設を進めた

この時期、党が直面した主要任務は、中国が社会主義を建設する正確な道を引き続き模索し、社会の生産力を解放し発展させ、人民を貧困から脱却させ、できるだけ速く豊かにし、中華民族の偉大な復興の実現のために、新しい活力を充満させるための体制保証と急速な発展のための物質条件を提供したことを述べている。

党11期3中全会の歴史的意義を強調し、鄧小平同志を主要代表とする中国共産党員、江沢民同志を主要代表とする中国共産党員、胡錦濤同志を主要代表とする中国共産党員が行った歴史貢献を総括し、党が指導して混乱の沈静化・正常への復帰を全面展開し、中国の特色ある社会主義理論体系を形成し、改革開放と社会主義現代化建設を推進し、わが国の改革・発展・安定の全局に関わる一連のリスク・試練に余裕をもって対応し、祖国統一の大業を推進し、世界の平和を擁護し共同発展を促進して、党建設の新しい偉大なプロジェクトを創始・推進する等の方面から、新時期の波瀾・壮大な歴史絵巻と世界の注目を集める偉大な成果を示した。

①この時期、党が人民を指導して創造した偉大な成果、中華民族が立ち上がることから豊かになる偉大な飛躍を推進したこと。

②中国共産党と中国人民は、英雄的・頑強な奮闘により、世界に厳かに「改革開放は当代の中国の前途・命運を決定づけるカギとなる一手であり、中国の特色ある社会主義の道は、中国の発展・繁栄を導く正確な道であり、中国は大きな歩みを踏み出して時代に追いついた」と宣言したこと。

を強調している。

(4)中国の特色ある社会主義の新時代を切り開いた

この時期、党が直面した主要任務は、小康社会の全面実現という第1の百年奮闘目標を実現し、社会主義現代化強国の全面実現という第2の百年奮闘目標の新たな征途を開き、中華民族の偉大な復興を実現するというマクロ目標に向けて引き続き前進することであったことを述べている。

中国の特色ある社会主義の新時代というわが国の新たな歴史方位を述べ、第18回党大会以降の党の理論刷新の成果を概括し、新時代に党が直面する情勢、直面するリスク・試練を深く分析し、党の全面指導の堅持、党内の全面的に厳しい統治、経済建設、改革開放の全面深化、政治建設、全面的な法に基づく治国、文化建設、社会建設、生態文明建設、国防・軍隊建設、国家の安全擁護、「一国二制度」の堅持と祖国統一の推進、外交政策等の13の方面から、分野を分けて新時代の党・国家事業が収めた歴史的成果、発生した歴史的変革を総括し、9年間のオリジナルな思想、変革的実践、ブレークスルー的な進展、道標となる成果を重点的に総括している。

①この時期、党が人民を指導して創造した偉大な成果、中華民族の偉大な復興の実現のために更に整備された制度保証、更に堅実な物質の基礎、更に主動的な精神パワーを提供したこと。

②中国共産党と中国人民は、英雄的・頑強な奮闘により、世界に厳かに「中華民族は立ち上がり豊かになることから、強くなることへの偉大な飛躍を迎えた」と宣言したこと。

を強調している。

(5)中国共産党の百年奮闘の歴史的意義

党の百年奮闘の歴史過程と重大な成果を全面回顧・総括する基礎の上に、よりマクロの視点で党の百年奮闘の歴史的意義を総括する。即ち、

①党の百年奮闘が中国人民の前途・命運を根本から改変したこと、

②中華民族の偉大な復興という正確な道を切り開いたこと、

③マルクス主義の強大な生命力を示したこと、

④世界の歴史過程に深刻な影響を及ぼしたこと、

⑤時代の前列を歩む中国共産党を鍛え上げたこと、

であり、中国人民、中華民族、マルクス主義、人類進歩の事業、マルクス主義政党の建設に対する党の歴史的貢献を述べている。

この5項目の概括は、中華の大地に立脚するのみならず、人類の未来に目を向け、中国共産党と中国人民・中華民族の関係を体現し、中国共産党とマルクス主義・世界社会主義・人類社会の発展との関係を体現し、中国共産党の百年奮闘の歴史ロジック・理論ロジック・実践ロジックを貫いている。

(6)中国共産党の百年奮闘の歴史経験

根本的・長期的な指導意義を有した10項目の歴史経験を概括する。即ち、①党の指導を堅持し、②人民至上を堅持し、③理論の刷新を堅持し、④独立自主を堅持し、⑤中国の道を堅持し、⑥天下を胸に抱くことを堅持し、⑦開拓・イノベーションを堅持し、⑧大胆に闘争することを堅持し、⑨統一戦線を堅持し、⑩自己革命を堅持したことである。

この10項目の歴史経験は、系統的に完全で、相互に貫いている有機的全体であり、党・人民の事業が不断に成功するための根本保証を示し、党が常に不敗の地に立つパワーの源泉を示し、党が常に歴史の主動性を掌握する根本原因を示し、党が永遠の先進性・純潔性を維持し、常に時代の前列を歩むための根本方途を示している。

この10項目の歴史経験は、長期の実践を経て累積した貴重な経験であり、党と人民が共同で創造した精神的財産であり、格別に大切にして長期に堅持し、新時代の実践において不断に豊富にして発展させなければならない。

(7)新時代の中国共産党

第2の百年奮闘目標の実現を軸に、

①全党は立てた志をしっかり貫き緩めることなく2、既定目標に執着し奮闘して、「百里を行く者は九十を半ばとす」の覚悟で、中華民族の偉大な復興を弛まずに推進しなければならないと強調している。

②党の基本理論・基本路線・基本方略を堅持し、新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築し、質の高い発展を推進し、人民の富裕を協同推進し、国家の強盛を図り、中国を美しくしなければならないと強調している。

③人民大衆との血肉の連係を永遠に維持し、不断に広範な人民の根本利益をしっかり実現し、しっかり擁護し、しっかり発展させなければならないと強調している。

④「憂患は人を生かし、安楽は人を死なす」3ことを銘記し、常に遠慮を胸に抱き、治に居て乱を忘れず、新時代の党建設の新しい偉大なプロジェクトを引き続き推進しなければならないと強調している。

⑤れっきとした後継ぎがいるこの根本大計に、しっかり取り組まなければならないと強調している。

全党・全軍・各民族人民は過去の苦難・栄光を忘れることなく、今の使命・責任に恥じることなく、将来の偉大な夢に背かず、歴史を鏡とし、未来を切り開き、懸命に取り組み、勇猛前進し、第2の百年奮闘目標の実現、中華民族の偉大な復興という中国の夢実現のために、弛まず奮闘しなければならないと呼びかけている。

同志の皆さん!この決議を審議承認することは、今回の全会の主要任務である。

皆さんは、党中央の要求を貫徹実施し、過去・現在・未来を一貫して把握し、深く考え、深く検討して、精神を集中させ、衆知を集めて有益な意見を広く吸収し、建設的な意見・建議を提起し、共同で今回の全会をしっかり開催し、決議稿をしっかり修正しなければならない。

  1. 「説明」では、決議稿の起草プロセスも語られているが、これは別途歴史決議「誕生記」が公表されているので、別稿でそれを合わせて紹介する
  2. 原文は「咬定青山不放松」。漢詩の一部で、岩石に竹がしっかりと生えている様を指す。
  3. 原文は「生於憂患、死於安楽」。孟子の言葉。