田中 修

中国経済レポート

人民銀行第2四半期貨幣政策執行報告

新領域研究センター 田中 修

2021年8月13日


はじめに

本稿では、8月9日に人民銀行が公表した「中国2021年第2四半期(4-6月期)貨幣政策執行報告」の概要を紹介する。なお、前報告から変化したポイントは太字で示している。

1.マクロ経済の展望
1.1 概況

2021年に入り、わが国は疫病防御と経済社会発展政策を統一し、経済は引き続き安定・回復し、安定の中で好転している。4-6月期GDP成長率は7.9%、2年平均で5.5%であり、1-3月期と比べ0.5ポイント加速している。

中長期で見ると、わが国の発展は依然として重要な戦略的チャンスの時期にあり、経済が長期に好い方に向かい、質の高い発展をとげるというファンダメンタルズに変わりはない1

1.2 経済の現状

わが国経済は成長が回復し、発展動力が一層増強されている2

4-6月期の工業生産は質・効率が上昇し、輸出はかなり速い伸びを維持しており、投資・消費は着実に回復し、雇用情勢は総体として安定し、市場の予想は平穏を維持しており、下半期(7-12月)の経済運営のために比較的良好な基礎を打ち立てている。

穏健な金融政策は、連続性・安定性・持続可能性を維持し、市場の予想を科学的に管理し、実体経済へのサービスに力を入れ、金融リスクを有効に防止・コントロールし、マクロレバレッジ率の基本的安定の維持は顕著な成果を収めている。

人民元レートの予想は平穏であり、双方向への変動の弾力性が増強され、マクロ経済の安定器としての役割を発揮している。

1.3 リスク・試練

世界の疫病はなお引き続き変化しており、外部環境は更に峻厳・複雑となり、国内経済の回復は依然として堅固でなく、アンバランスであることをも見て取らねばならない3

(1)国際環境

ワクチンの秩序立った接種は、総体として世界経済の見通し改善を推進しており、IMF・世界銀行は第2四半期(4-6月)に、2021年の世界経済成長予測を上方改定したが、最近新型コロナ変異株が多くの国で危害を与えており、多くの経済体で疫病のリバウンドが出現しており、将来の疫病の変化にはなお不確定性がある。

主要先進経済体の超緩和金融政策のスピルオーバー効果が更に際立ち、インフレ率が顕著に上昇しており、もしその金融政策の転換の歩みが加速すれば、グローバルなクロスボーダー資本流動と為替レートの変動の増大、金融市場の相場見通しの大幅調整等の問題を引き起こす可能性がある4

(2)国内経済

国内経済の回復の基礎はなお牢固でなく、輸出は高い前年ベースの影響を受けて、伸びが鈍化する可能性があり、一部の分野の投資の伸びがかなり弱く、レストラン・観光等の接触型消費がなお完全に回復しておらず、経済成長の動力エネルギーの持続的可能性は、一定の試練に直面している5

大口取引商品価格の大幅な上昇は企業のコストを押し上げ、いくらかの中小・零細企業の困難はかなり大きい。

不良債権・シャドーバンキングのリバウンド圧力になお注意を払う必要があり6、経済の潜在成長率の下振れ7、人口高齢化の加速、グリーン転換等の中長期の試練も軽視できない。

これについて、自信を確固とするとともに、困難を正視し、改革とコントロール、短期と長期、内部均衡と外部均衡とを結びつけ、精力を集中して自身の事柄にしっかり取り組み、質の高い発展の実現に努力しなければならない。

(3)物価

CPI上昇率は温和であり、PPIは段階的に高まっており、総じてみれば、インフレ圧力はコントロール可能であり、長期にインフレあるいはデフレの基礎は存在しない8

2021年4-6月期、庶民の観光旅行の回復、ディーゼル油価格の上昇と豚肉価格の下落等の要因が共同で作用して、CPI上昇率は1%前後の低レベルにあり、下半期はなお合理的区間内で平穏に推移すると予想される。

これと同時に、大口取引商品価格の上昇と低い前年ベース等の要因の影響を受けて、PPIの上昇率がある程度拡大している。これについては、客観的、歴史的に見るべきである。

一面では、これは昨年の低いベースの上での高い数値であり、これについては、昨年・今年・来年の連続3年の全体的視点からPPIの変化を観察するのがよい。

他方で、PPI自身の変動が相対的にかなり大きく、数カ月内に段階的に下振れる、あるいは上昇に歯止めがかかる現象が現れないとも限らない。

総体として見ると、わが国のPPIの上昇は概ね段階的であり、短期的には相対的に高いレベルを維持する可能性があるが、ベースの効果が解消し、グローバルな生産・供給が回復するに伴い、将来のPPIは反落傾向が見込まれる9

中長期的に見れば、労働生産性の伸びの低下、人口高齢化がインフレを抑制し、炭素排出コストの顕在化が一定程度物価を押し上げ、相互が相殺し合い、全体としては物価安定に有利となる。

わが国経済の発展が安定の中で好転し、昨年の疫病以降正常な金融政策を堅持し、国内総供給・総需給が基本的に安定していることは、物価動向が将来安定を維持することに有益であり、長期にインフレあるいはデフレの基礎は存在しない。

2.今後の主要な政策の考え方

今後、人民銀行は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党19期5中全会・中央経済工作会議精神を貫徹し、「政府活動報告」の要求を実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、完全・正確・全面的に新発展理念を貫徹し、サプライサイド構造改革を深化させ、新たな発展の枠組を早急に構築し、質の高い発展を推進する10

今年と来年2年のマクロ政策を統一的にリンクさせ、金融政策の安定性を維持し、展望性・有効性を増強し、断固として「バラマキ」を行わず、引き続き実体経済の支援に焦点を絞り、中小企業と困難業種の持続的な回復を助力し11、経済運営を合理的区間に維持し、第14次5カ年計画の良好なスタート・歩み出しを確保し、経済の長期にわたる安定を推進する。

穏健な金融政策は柔軟・適度、合理的で適度でなければならず、「穏」(穏健・安定)の字を頭におき、正常な金融政策の実施を堅持12し、サイクルを跨いだ政策設計をしっかり行い、マクロ政策の自主性を増強13し、国内情勢と物価動向に基づき政策の程度・テンポをしっかり把握14し、経済発展とリスク防止の関係をうまく処理し、経済の大局の総体としての平穏を擁護し、経済発展の強靭性を強めなければならない。

現代中央銀行制度を建設し、健全で現代的な金融政策の枠組を整備し、マネーサプライのコントロールメカニズムを整備し、流動性の合理的充足を維持し、マネーサプライと社会資金調達規模の伸びを名目成長率と基本的に釣り合わせ、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持する。

物価動向を密接にフォロー・検討・判断し、社会の予想を安定させ、物価水準の総体としての安定を維持する15

構造的金融政策手段の牽引・帯同作用を発揮させ、2つの実体経済に直接到達する金融政策手段16の期限延長をしっかり実施し、貸出の伸びが緩慢な省への再貸出政策をしっかり実施し17、炭素排出削減支援手段を秩序立てて推進し実効を上げ、インクルーシブファイナンス支援を強化し、科学技術イノベーション、小型・零細企業、グリーン発展、製造業等への支援を増やすよう金融機関を誘導する18

健全で市場化した金利形成と伝達メカニズムを整備し、貸出プライムレート改革の潜在力を引き続き発揮させ、中央銀行の政策金利体系を整備し、預金金利の監督管理を引き続き最適化し、実質貸出金利の一層の引下げを推進する。

為替レートの市場化改革を深化させ、人民元レートの弾力性を増強し、市場の予想を安定させ、クロスボーダー融資へのマクロプルーデンス管理を強化し、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を堅持するよう誘導し、人民元レートの合理的均衡水準での基本的安定を維持する。

金融リスクの健全な予防・事前警告・処理・問責の制度体系を整備し、金融リスクを防止・解消する長期有効なメカニズムを構築し、施策を分けて中小銀行の資本を補充し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

(1)マネー・貸出と社会資金調達規模の合理的な伸びを維持する。

マネーサプライのコントロールメカニズムを整備し、中央銀行が銀行の貨幣創造を調節するための流動性・資本・金利を制約する健全で長期有効なメカニズムを整備19し、マネーの総バルブをしっかり管理し、マネーサプライと社会資金調達規模が名目成長率と基本的に釣り合うことを維持し、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持する。

中期貸借ファシリティー、公開市場操作、再貸出・再割引等の多様な金融政策手段を総合的に運用して、流動性の合理的充足を維持し、市場金利が、政策金利を軸として上下に変動するよう誘導する。

財政収支、政府債券発行、主要経済体の金融政策の調整などの不確定要因へのモニタリング・分析を強化し、オペレーションの展望性・柔軟性・有効性を一層高める20

経済金融情勢の発展・変化の実際情況に応じ、政策の程度・テンポをしっかり把握し、実体経済を有力に支援する21

健全で持続可能な銀行の資本補充のメカニズムを整備し、中小銀行の資本補充を重点的に支援し、銀行の実体経済へのサービス、金融リスク防止・解消能力を高める。

(2)構造的金融政策手段の牽引・帯同作用を、引き続きしっかり実施・発揮させ、炭素排出削減支援手段を運用してグリーン・低炭素発展を推進する。

再貸出・再割引政策の安定性を維持し、2つの実態経済に直接到達する金融政策手段の期間延長をしっかり実施し、引き続き「三農」関連、小型・零細企業、民営企業に包摂的・持続的な資金支援を提供する。

小型・零細企業のへの金融支援の程度を減じないことを維持し、企業を安定させて雇用を保障するうえでの小型・零細企業の役割を更に好く発揮させる。

貸出の伸びが鈍化している省への再貸出政策をしっかり実施し、地域の協調発展を支援する22

炭素排出削減支援手段を秩序立てて推進し、実効を上げることを支援し、条件の合致した金融機関に低コスト資金を提供し、顕著な炭素排出削減効果のある重点分野のために、金融機関が優遇金利融資を提供することを支援し、金融機関が市場化原則に基づきグリーン・低炭素発展を支援するよう誘導し、大衆にグリーン・低炭素生活、循環経済等の理念を唱導23し、社会(民間)の投融資がグリーン・低炭素分野に傾斜することを奨励24し、炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラル目標の実現を推進する。

(3)実体経済を金融が有効に支援する体制メカニズムを構築する。

インクルーシブファイナンス、グリーン融資、科学技術イノベーション融資、サプライチェーン融資等の融合発展を統一的に推進25し、科学技術イノベーションを金融支援する体系を整備し、金融と科学技術・産業の良性循環の実現を促進する。

地域の貸出構造の調整・最適化を推進し、多層レベルの資本市場を利用して融資支援を強化し、地域の金融環境を最適化する。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大することと農村振興との有効なリンクを堅持し、農村振興への金融サービスと貧困への金融支援を引き続きしっかり行い、新しいタイプの農業経営主体への金融サービスをしっかり行い、食糧安全・種業の発展等の分野への金融支援を強化し、農業・農村の現代化を促進する。

金融機関が内部資源の配分と政策手配を最適化し、フィンテック手段の運用を強化し、中小・零細企業へのサービス能力を不断に高め、「大胆に貸し、貸したいと思い、貸すことができ、貸す」長期有効なメカニズムの形成を加速するよう督促する26

カーボンニュートラル金融債の管理制度を整備し、カーボンニュートラル金融債の厳格で規範的な発展を推進する27

エネルギー多消費・汚染物質高排出のプロジェクトへの貸出規模を厳格に抑制し、エネルギー多消費・汚染物質高排出のプロジェクトのグリーン転換・グレードアップを推進する28

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけをしっかり堅持し、「不動産を短期的経済刺激の手段としない」ことを堅持し、地価・住宅価格・予想の安定を堅持し、不動産金融政策の連続性・一致性・安定性を維持し、不動産金融のプルーデンス管理制度をしっかり実施し、住宅賃貸への金融支援を強化する。

(4)金利・為替レートの市場化改革を深化させ、金融政策の伝達ルートを円滑にする。

健全な市場化された金利の形成・伝達のメカニズムを整備し、引き続きLPR(貸出プライムレート)改革を深化させ、中央銀行の政策金利体系を整備し、金利の伝達ルートを円滑にし、実質貸出金利の一層の引下げを推進する。

預金金利の監督管理を最適化し、預金市場の競争秩序を擁護し、銀行の負債コストの基本的安定を維持し、銀行が政策ボーナスを実体経済にまで伝達するよう督促し、小型・零細企業向け貸出市場の競争性を増強し、小型・零細企業の資金調達を更に確実に円滑にし、総合資金調達コストを安定の中で引き下げる29

為替レートの市場化改革を着実に深化させ、市場需給を基礎とし、通貨バスケットを参考として調節を進め、管理された変動為替レート制度を整備し、人民元レートの弾力性を増強し、マクロ経済と国際収支の調節における為替レートの自動安定器としての作用を発揮させる。市場の予想を誘導し、人民元レートの合理的な均衡水準での基本的安定を維持する。

外為市場を発展させ、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を樹立するよう誘導し、実需原則とリスク中立性原則30に基づき、企業に為替レートリスク管理サービスを提供するよう金融機関を指導し、外為市場の平穏で健全な発展を擁護する。

人民元の国際化を引き続き穏当・慎重に推進31し、クロスボーダー貿易・投資のハイレベルの開放テストを展開32し、クロスボーダーの貿易・投資における人民元使用の利便化の程度を高め、人民元の資本項目の兌換化を着実に推進する。

(5)金融市場の基礎制度建設を強化し、実体経済にサービスし、市場リスクを防止する。

リスク防止と発展促進を共に重視することを堅持し、債券市場の質の高い発展を引き続き推進する33

債券市場の法制建設を強化し、仲介機関の職責を徹底させ、公司信用類債券(社債)の情報開示要求を実施し、信用格付制度を整備する。

市場化・法治化の原則を堅持し、債券のデフォルトリスクの処理メカニズム整備の各成果を引き続き実施し、各種の債務逃れ・債務踏倒しを断固取り締まる。

引き続き資本市場の基礎制度建設を強化し、投資家の利益を更に好く保護し、資本市場 の平穏で健全な発展を促進する。

(6)金融機関改革を一層推進し、コーポレートガバナンスを不断に整備し、金融供給を最適化する。

コーポレートガバナンスの強化を核心とすることを堅持し、大型商業銀行改革を深化させ、中国の特色ある現代金融企業制度を確立する。

大型銀行がサービスの重心を下に移すよう誘導し、中小銀行の主たる責任・本業への集中を推進し、金融市場の活力と強靭性を増強し、高度な適応性・競争力・包摂性を備えた健全な現代金融システムを整備する34

開発性・政策性金融機関改革を引き続き推進する。法に基づきルールに合致することを堅持し、ルール・制度を整備し、一行につき一政策を実施し、フローの改革から着手し、漸進的・段階的に既存の業務の改革を推進35し、業務の分類・勘定の分類計算を実現し、透明度を順序立てて高め、資本制約を強化し、リスク管理を強化し、健全なインセンティブメカニズムを整備し、機関の主体責任を徹底させ、実体経済へのサポート・国家戦略へのサポート方面における、開発性・政策性金融機関の重要な役割を更に好く発揮させる。

(7)金融リスクの予防・事前警告・処理・問責の健全な制度体系を整備し、金融リスクを防止・解消する長期有効なメカニズムを構築する。

密接にモニタリングし、重点分野のリスクポイントを重点的に洗い出し36、監督管理制度の不足部分の補強に早急に取り組み、現代金融監督管理システムの整備を加速し、監督管理の協調を強化する。

預金保険制度の役割を有効に発揮させ、早期是正に焦点を絞り、預金保険の専門化・市場化されたリスク処理メカニズムを一層整備する。預金リスクの解消に全力でしっかり取り組み、各種リスクのリバウンド・復活に断固歯止めをかける。

銀行システムの不良債権の償却を強化し、施策を分けて中小銀行の資本を補充する。

地方の党・政府の主要リーダーが責任を負う財政金融リスク処理メカニズムを実施し、地方の党・政府のリスク処理の現地責任を強化し、重点省のハイリスク機関の数の圧縮を推進する37

重大金融リスクの問責、金融リスクの通報等の制度を実施し、モラルハザードを有効に防止する。金融リスク防止・コントロールの展望性・全局性・主動性を高め、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

3.不動産融資の状況

6月末、主要金融機関(外資を含む)の不動産融資残高は50.8兆元、前年同期比9.5%増であり、伸びは3月末より1.4ポイント鈍化した。

うち、個人住宅ローン残高は36.6兆元、同13%増であり、伸びは3月末より1.5ポイント鈍化した。住宅開発融資残高は9.4兆元、同3.4%増であり、伸びは3月末より2.4ポイント鈍化した。

4.金融機関預金準備率の調整

(1)金融機関外貨預金準備率を引き上げ、金融機関の外貨流動性管理を強化した

人民銀行は、2021年6月15日から、金融機関外貨預金準備率を2ポイント引き上げ、5%から7%とし、外貨流動性200億ドル超を回収した。

(2)金融機関人民元預金準備率を0.5ポイント引き下げ、実体経済の発展を支援し、総合資金調達コストの安定の中での引下げを促進した

2021年7月15日から、金融機関人民元預金準備率を0.5ポイント引き下げ(既に5%の預金準備率を執行している機関を除く)、長期資金約1兆元を解放し、この引下げ後の金融機関の加重平均預金準備率は8.9%となった。

今回の預金準備率引下げは、金融政策の程度が常態に回帰した後の通常オペレーションであり、目的は金融機関の資金構造の最適化、金融機関の資金配分能力の増強である。

①流動性の合理的充足を維持し、質の高い発展とサプライサイド構造改革のために、適切なマネー・金融環境を作り上げる。

②金融機関の融資構造を最適化し、実体経済を金融機関が支援する長期に安定した資金源を有効に増やし、金融機関が預金準備率引下げで得た資金を積極的に運用して、小型・零細企業への支援を強化するよう誘導する。

③今回の預金準備率引下げは、金融機関の資金コストを毎年約130億元減らし、金融機関の伝達を通じて、社会の総合資金調達コストの引下げを促進することができる。

5.構造的金融政策手段の役割を積極的に発揮させる

(1)「三農」支援、小型・零細企業支援の再貸出・再割引等の手段を積極的に運用し、金融機関が小型・零細企業、民営企業、「三農」、貧困支援等の分野に対して、一層政策支援を強化するよう誘導する

再貸出の精確な点滴灌漑・プラスのインセンティブ作用を引き続き発揮させ、「三農」支援、小型・零細企業支援貸出を運用して、地方法人金融機関が農村振興向け貸出を拡大するよう誘導し、現行規定に基づき貧困支援再貸出の期間延長を進め、脱貧困堅塁攻略の成果の定着化を支援した。

地域経済・金融の協調発展を促進し、貸出の伸びが緩慢な10の省に対し、再貸出を2000億元増やし、10省の地方法人金融機関が、地域内の「三農」関連、小型・零細企業、民営企業等の分野に対し、政策支援を一層強化するよう誘導した。

6月末、全国「三農」支援再貸出残高は4653億元、小型・零細企業支援再貸出残高は8882億元、貧困支援再貸出残高は2014億元、再割引残高は5922億元である。1-6月、人民銀行は開発性銀行と政策性銀行から担保補充貸出(PSL)1424億元を純回収し、うち4-6月は1014億元を純回収して、6月末の残高は3兆926億元であった。

(2)4-6月に期限が到来する方向を定めた中期貸借ファシリティーを、中期貸借ファシリティーの形式で継続した

方向を定めた中期貸借ファシリティーは、金融機関が小型・零細企業、民営企業への貸出を拡大するために、優遇金利の長期に安定した資金源を提供した。

4月15日、人民銀行は1500億元の中期貸借ファシリティーのオペレーションを展開した。期限は1年、金利は2.95%である。これには、4月に期限が到来する方向を定めた中期貸借ファシリティーの継続が含まれる。

6月末までに、期限到来の方向を定めた中期貸借ファシリティーは、中期貸借ファシリティーの形式で継続し、方向を定めた中期貸借ファシリティーは既に残高は無くなっている。

(3)直接到達・精確という特徴を際立たせ、引き続き2つの実態経済に直接到達する金融政策手段を推進して、中小・零細企業の発展を支援した

2020年6月に政策を打ち出して以降、2021年6月末までに、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの期限延長支援手段は月ごとに操作され、累計で地方法人銀行に奨励資金145億元を提供し、地方法人銀行の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス元本支援は1兆4478億元に及び、小型・零細企業の段階的な元本償還・利払い圧力を軽減した。

小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス支援計画は季節ごとに操作され、累計で地方法人銀行に優遇資金2215億元を提供し、地方法人銀行の小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス支援は6204億元に及び、小型・零細企業の資金調達難問題を有効に緩和した。

2020年から2021年6月まで、全国銀行業金融機関は、11.8兆元の貸出元本・利息について猶予を実施し、累計で小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンスを6.9兆元実施した。

(4)党中央・国務院の政策決定・手配を実施し、炭素排出削減政策支援手段の設立を順序立てて推進した

「政府活動報告」と国務院常務会議の決定事項の要求に基づき、人民銀行は炭素排出削減支援手段を設立し、条件の合致した金融機関を通じて低コスト資金を提供し、顕著な炭素排出削減効果のある重点プロジェクトに対し、金融機関が優遇金利融資を提供することを支援した。

これは、実体経済に直接到達する構造的金融政策手段であり、精確な直接到達方式により、クリーンエネルギー、省エネ・環境保護、炭素排出削減技術の発展を支援し、更に多くの社会(民間)資金をテコ入れして動かし炭素排出削減を促進した。

炭素排出削減支援手段の設計は、市場化・法治化・国際化の原則に基づき、公開・透明を十分体現し、「操作可能、計算可能、検証可能」を実施し、手段の精確性・直接到達性を確保した。

「操作可能性」とは、クリーンエネルギー、省エネ・環境保護、炭素排出削減技術を含む、炭素排出削減効果が顕著な重点分野を支援することを明確にすることである。

「計算可能」とは、金融機関が貸出により牽引する炭素排出削減量を計算でき、炭素排出削減情報を対外公表し、社会の監督を受けることである。

「検証可能」とは、第三者専門機関が金融機関の公表した情報の真実性を検証し、政策効果を確保することである。

  1. これは、報告自身が太字にしている。以下、ことわりのない太字は筆者。
  2. これは、報告自身が太字にしている。
  3. これは、報告自身が太字にしている。
  4. 前回よりも表現が強くなっている。
  5. 新たに盛り込まれた。
  6. 新たに盛り込まれた。
  7. 新たに盛り込まれた。
  8. これは、報告自身が太字にしている
  9. 今回は、PPIの将来動向の分析に、多くの筆を割いている。
  10. 7月30日の党中央政治局会議と同様、「新たな発展段階に立脚する」という表現が削除された。
  11. 新たに盛り込まれた。今年と来年のマクロ政策の統一・リンクと、金融政策の対象の絞込みが強調されている。
  12. 前回よりも表現が強まった。今回は「正常な金融政策の堅持」が強調されている。
  13. 新たに盛り込まれた。
  14. 新たに盛り込まれた。物価動向が政策判断の重要な要素となっている。
  15. 物価安定の位置が大幅に前に移動した。物価動向の分析記述が大幅に増えたことと併せると、人民銀行が将来の物価動向に強い懸念をもっていることが分かる。
  16. 小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの元本償還・利払い猶予と、小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス支援計画。
  17. 再貸出の対象が具体的になった。
  18. 支援対象が具体的に列挙された。
  19. 新たに盛り込まれた。
  20. モニタリングの対象が、「流動性の需給情勢と金融市場」から不確定要因に変化した。
  21. 新たに盛り込まれた。
  22. 新たに盛り込まれた。
  23. 新たに盛り込まれた。
  24. 新たに盛り込まれた。
  25. 新たに盛り込まれた。
  26. 新たに盛り込まれた。
  27. 新たに盛り込まれた。
  28. 新たに盛り込まれた。
  29. 新たに盛り込まれた。
  30. リスク中立性原則が追加された。
  31. 「人民元の国際化」という表現が復活した。
  32. 新たに盛り込まれた。
  33. 新たに盛り込まれた。
  34. 新たに盛り込まれた。
  35. 新たに盛り込まれた。
  36. 新たに盛り込まれた。
  37. 新たに盛り込まれた。