石黒 大岳
研究歴
これまでの研究では、君主や王族に権力が集中している中東の湾岸アラブ諸国での民主化をテーマに、主にクウェートとバーレーンで現調査を行い、選挙と議会における議員活動の観察から、議員が組織化を進めて政党または議会内会派を結成して互いに競争・協力しつつ議会政治が展開していく過程を、政党システムの制度化という分析枠組みを用いて論じてきました。
また、比較分析の観点から、戦前の日本や北欧など君主制のもとでの歴史的経験を参照しつつ、君主制のもとでの国民の政治参加の拡大と政党内閣制の成立へと至る漸進的な権力移行の過程における穏健的なイスラーム主義の役割を取り上げてきました。
「アラブの春」以降は、アラブ君主制諸国における権力基盤や、憲法裁判所の判断が政治過程を左右する「政治の司法化」、権威主義体制におけるアカウンタビリティなどについて、共同研究による成果を発表しています。
現在取り組んでいるテーマ
引き続き湾岸アラブ諸国の選挙と議会における議員活動を観察しつつ、現在は主に以下の2つのテーマを中心に取り組んでいます。
ひとつ目は、湾岸アラブ諸国が掲げる国家ビジョンへの取り組みとともに進展する社会変容を総合的に捉えようとするもので、労働力の自国民化を主眼とした教育改革とイノベーションへの取り組みや若年層の社会参画の強化と起業支援、開発政策への取り組みについて、社会変容の進展にともなう意思決定過程の変化などに注目して分析を進めています。
ふたつ目は、民主化または権威主義体制の頑健性に対し、アカウンタビリティのあり方がいかに作用しているのか、という観点から、汚職対策政策の取り組みと汚職対策機関の設置をめぐる政治過程について、権威主義体制と新興民主主義国との多国間比較に取り組んでいます。
以上のテーマに関連した共同研究を進めつつ、成果の発表につとめているところです。
◎キーワード 選挙 議会 民主化 権威主義体制 アカウンタビリティ