モディ政権とこれからのインド
調査研究報告書
堀本武功、三輪博樹 編
2019年3月発行
表紙 / はじめに / 目次 / 執筆者一覧 (178KB)
第1章
モーディー政権下における政党政治―「一党優位」の復活か連合政治の新段階か― (858KB) / 佐藤宏
本章では、モーディー政権下の約5年をインドの政党政治の文脈からふり返り、かつ評価する。主たる論点は、(1)2014年連邦下院選挙でのインド人民党(BJP)による単独過半数の獲得は、会議派時代の「一党優位体制」の復活とみられるのかどうか、(2)また連邦下院選挙後の州レベルでのBJPの勢力拡張にいかなる特徴がみられるのか、そして、(3)1989年に始まり、1999年以降本格化した連合政治(coalition politics)の作動様式は、モーディー政権下にどう変化したのかという三点である。結論として、モーディー政権下でのBJPは、連合政治という大枠のなかにとどまりつつ、ヘゲモニー政党としてインド政治に長期的に君臨する意図をもった政党であることが示される。その意図が実現されるか否かは、2019年連邦下院選挙の結果にかかっている。
第2章
インドにおける政党政治・選挙政治とモディ政権の登場 (470KB) / 三輪博樹
第3章
モディ政権の経済政策:その展開と評価 (957KB) / 小島眞
第4章
全国農村雇用保証法(NREGA)の政治経済学 (493KB) / 湊一樹
本稿は、「世界最大の公的雇用プログラム」とも称される「全国農村雇用保証法」(NREGA)に関する基本的な文献や資料を踏まえながら、NREGAのもとでの雇用保証事業の実施状況とこれまでの成果、さらには、近年のNREGAを取り巻く状況の変化といった点を検討することを目的としている。具体的には、(1)NREGAの基本的枠組み、(2)NREGAが賃金および消費に与える影響、(3)現在のインド人民党(BJP)政権のもとでの雇用保証事業の現状と問題点、という3つの論点を中心にNREGAに関する議論を整理する。
第5章
モディ外交の評価と今後の展望 (445KB) / 堀本武功
第6章
インドの国際関係研究・外交政策研究の理論化 -意識的ディシプリン化 (372KB) / 伊豆山真理
インドにおける外交・国際関係研究は、政策志向が強く、理論化、普遍化の試みが希薄である。また、リアリズムの偏重、国内要因の分析の弱さなどの欠点を指摘できる。本稿では、モディ外交を分析するための準備として、インド外交政策研究における最近の論点を整理し、実証研究が外交政策研究や国際関係論に貢献するために、意識的に超えるべきインド研究の呪縛を洗い出す。インド外交の変化を、道義の外交から実利の外交へ、途上国との連帯から先進国クラブの一員へとして捉え、ネルー外交とその後の外交とを、二分する見方は、近年修正されつつある。特に、多国間レジ―ムにおけるインドの交渉を扱った研究は、いくつかの説明変数を明示している。事例研究として最も充実している気候変動交渉に関する研究を引照しながら、インドが公共財の管理への貢献を規範として内部化していく過程をどのようにとらえるべきかを検討し、海洋レジームに対するインドの態度を研究するための参考とする。
第7章
India’s Foray into the Indo-Pacific: Embracing Ambiguity through Strategic Autonomy (258KB) / Nidhi Prasad