中東の民衆と社会意識
湾岸戦争以後、注目を集める中東地域であるが、本書は、1989年度に実施された「80年代末期中東イスラム世界の社会意識」の研究成果をとりまとめたもの。特にイラン、モロッコの宗教意識、パレスチナ人意識等、興味深い研究がある。
■ 中東の民衆と社会意識
■ 加納 弘勝 編
■ A5判
■ 262pp
■ 1991年3月
■ 品切れ
CONTENTS
まえがき / 加納 弘勝
第1章 中東地域における社会意識 / 加納 弘勝
第1節 1990年代3つの潮流と「文化的なもの」の浮上
第2節 1990年代における中東諸国の開発計画と「文化的なもの」
第3節 社会意識の諸相とその研究について
第4節 民衆文化と民衆意識、いくつかの研究による指摘
第5節 第三世界における英雄の条件:指導者の条件1
第6節 (実態の)認知レベルにおける指導者像、期待される指導者の基準と機能
第7節 もうひとつの英雄、英雄としての犯罪者
第8節 もうひとつの社会的指導者、聖者の機能
第2章 イランの民衆のイスラムと社会意識 / 上岡 弘二
はじめに
第1節 民衆のイスラムと社会意識
第2節 民衆のイスラムとカルバラー・パラダイム
第3節 カルバラー・パラダイムにおける救済のパターン
第4節 革命、戦争とカルバラーパラダイム
第5節 民衆のイスラムとイラン的運命論
おわりに
第3章 モロッコにおける聖者をめぐる社会意識 / 堀内 正樹
はじめに
第1節 宗教場面の構成
1.宗教意識と「宗教人格」
2.宗教人格の特性と地上的媒体
3.宗教場面の実際の現れ方
第2節 宗教場面と今日的状況
1.知識人としてのスーフィー、ワリーへ
2.「実践者」の社旗基盤の崩壊
第3節 ザーウィヤ・シディ・ハムザ
1.村と聖者
2.系図認識と聖者
3.子孫集団と外部社会との関係
おわりに
第4章 トルコにおける山賊(義賊)と英雄と聖者 / 加納 弘勝
はじめに
第1節 トルコにおける山賊と義賊
第2節 土地簒奪過程と聖者メフメット
第5章 現代イラクの社会意識 / 酒井 啓子
第1節 アラブ・ナショナリズムとメソポタミア・アイデンティティー
第2節 伝統的社会意識に対する国家政策
第3節 「国家全体権力者の存在」と「絶対者の不在」
第6章 パレスチナ人意識と離散パレスチナ人社会 / 臼杵 陽
はじめに
第1節 何故アッバースィーヤ村なのか
1.パレスチナ人の社会意識を分析するための方法と資料
2.あるパレスチナ人の個人史
3.アッバースィーヤ村の現在
第2節 アッバースィーヤ村の崩壊
1.1948年以前のアッバースィーヤ村
2.パレスチナ人の抵抗と1948年戦争
第3節 アッバースィーヤ村の「復活」
1.パレスチナ人社会崩壊がもたらした諸影響
2.パレスチナ人難民キャンプの特質
3.「アッバースィーヤ村民協会」の設立
おわりに
第1節 序論-問題関心の設定
1.都市化と社会的連帯をめぐる問題状況
2.分析の素材とその空間的設定
第2節 上エジプト農村とサァル(fend)慣行
第3節 アレキサンドリア市港湾労働者の社会
むすびにかえて