ラテンアメリカの中小企業
アジ研選書
No.41
製造拠点や消費市場として注目を集めるラテンアメリカ。中小企業の特徴、産業クラスターの形成、特有の企業文化、中小企業振興政策など、中小企業に関する情報を提供する。
■ ラテンアメリカの中小企業
■ 清水 達也、二宮 康史、星野 妙子 著
■ 2,310円(本体価格 2,100円)
■ A5判
■ 166pp
■ 2015年11月30日
■ ISBN978-4-258-29041-3
日本人に馴染みのあるラテンアメリカ企業は、どのような会社であろうか。日頃新聞や雑誌を読めば、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスや航空機メーカーのエンブラエル、世界一の富豪カルロス・スリムが所有するメキシコの通信大手アメリカ・モビレなどの名前を見る。しかしラテンアメリカ企業社会全体に目を向けると、これらの企業はごく一部分でしかない。売り上げ規模は大きくとも、企業数でみればごくわずかである。さらにいうと、現在の大企業も、そのほとんどは創業当初の規模の小さい段階から徐々に成長し、今の姿にいたる。つまりラテンアメリカ企業を理解するためには、中小企業を抜きには語れない。
ジェトロ・アジア経済研究所では、3人のラテンアメリカ研究者がそれぞれの専門性を生かし、「ラテンアメリカの中小企業」という本を出版した。同書は、ラテンアメリカにおける中小企業の特徴や位置づけ、産業クラスター、企業文化、政策の各テーマで同地域の中小企業を分析し、中小企業の成長要因を個別企業のケーススタディをもとに考察している。ラテンアメリカ地域に関心の学術関係者に加え、ビジネス関係者にも是非ご一読いただきたい。
CONTENTS
第1章 ラテンアメリカの中小企業をみる視点 / 清水 達也、二宮 康史
はじめに
1. 中小企業への注目
2. 中小企業が直面する課題
本書の構成
第2章 ラテンアメリカ経済における中小企業の位置 / 二宮 康史、星野 妙子
はじめに
1. 中小企業の定義
2. 1980年代から1990年代の中小企業
3. 2000年代の中小企業
4. 2000年代の製造業の中小企業
おわりに
補論1. 日本の中小企業の定義
補論2. ラテンアメリカの統計事情
第3章 ラテンアメリカの中小企業と産業クラスター / 清水 達也
はじめに
1. 産業クラスターを理解するキーワード
2. 産業クラスターの事例
(1)アップグレードに挑む――ブラジル・シノスバレイの製靴産業――
(2)異なる経路で成長――コロンビアのアパレル産業――
(3)輸出産業の新規創出――チリ南部のサケ養殖業――
(4)輸入代替から輸出指向への転換――メキシコの自動車産業――
(5)産業分野ごとのアップグレード
おわりに
第4章 ラテンアメリカの企業文化 / 星野 妙子
はじめに
1. 企業文化とは何か
2. 移民社会の歴史と企業文化
3. 家族と企業文化
4. イベリア的秩序と企業成長の壁
おわりに
第5章 ラテンアメリカの中小企業政策の発展経緯と特徴 / 二宮 康史
はじめに
1. 政策の意義と中小企業の役割
2. 政策の発展経緯
3. 現在の中小企業政策にみる特徴
おわりに
補論――中小企業政策実施組織――
第6章 ラテンアメリカの成長する企業像 / 清水 達也、二宮 康史、星野 妙子
はじめに
1. 事例紹介
〈製造業〉
(1)風力発電機材・ブラジル――輸出先市場の拡大に着目――
(2)都市交通システム・ブラジル――空気圧を動力とする車両システム――
(3)自動車産業・メキシコ――サプライチェーン参入の壁を越えた地場企業――
(4)金属機械産業・ペルー――認証取得により大型受注が可能に――
〈サービス業〉
(1)IT産業・ブラジル――世界の主要タクシーアプリとして成長――
(2)レジャー産業・メキシコ――子ども向け職業体験テーマパークの世界展開――
(3)レストラン産業・ペルー――カリスマシェフ,ガストン・アクリオ――
2. 事例にみた企業の成長要素に関する考察
おわりに