中東・中央アジア諸国における権力構造   -したたかな国家・翻弄される社会-

アジア経済研究所叢書

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中東・中央アジア地域の国々では近年,政治・社会改革をめざす国内からの挑戦に直面し,また特に9.11以後はアメリカからの「民主化」圧力や体制変換要求に曝されている.にもかかわらず,アフガニスタンやイラクを除く多くの国々では,いまなお権威主義体制が存続している理由は何か.綿密な実証研究から明らかにする.

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■ 中東・中央アジア諸国における権力構造 -したたかな国家・翻弄される社会-
■ 酒井 啓子,青山 弘之 編
■ 4,840円(本体価格 4,400円)
■ A5判
■ 294pp
■ 2005年3月
■ ISBN4-00-009970-1 C3031

CONTENTS

序論 中東・中央アジアにおける「したたかな国家」/酒井啓子・青山弘之

    第1節 9.11事件以降の中東・中央アジア
    第2節 権威主義体制のしぶとさ
    第3節 本書の構成
第Ⅰ部 動員 —権力基盤確立のために

第1章 権威主義・独裁維持のための「多元主義」 —バッシャール・アサド政権下のシリア/青山弘之

    はじめに
    第1節 「名目的」権力装置の多元化
    第2節 「ダマスカスの春」との闘い
    おわりに

第2章 エジプトにおける議会家族の系譜/鈴木恵美

    はじめに
    第1節 全国の議会家族
    第2節 ナセル期の議会家族(1952~1970年)
    第3節 サーダート期の復活 —中部・上エジプトにおける議会家族
    第4節 低下する議会家族の政治的機能 —ムバーラク政権(1981年~)
    おわりに

第3章 カザフスタンにおける地方政治エリート(1992~2001年)/岡奈津子

    はじめに
    第1節 調査対象
    第2節 知事のバックグラウンド(1) —出生年,出生地,民族および学歴
    第3節 知事のバックグラウンド(2) —職歴
    おわりに
第Ⅱ部 政治参加 ——開かない門,壊れた扉

第4章 体制内改革の「失敗」とイラン・イスラーム共和国体制基盤/松永泰行

    はじめに —問題の所在
    第1節 「イラン体制崩壊必至論」の検証
    第2節 「イラク戦争」後に顕在化したイラン社会からの「イスラーム共和国体制」への強い疑義
    おわりに —批判的議論に代えて

第5章 トルコにおける社会的亀裂と政党制の定着/間 寧

    はじめに
    第1節 投票流動性
    第2節 社会的亀裂と亀裂的流動性
    第3節 社会的亀裂分析から懲罰的投票分析へ
    おわりに

第6章 オスロ合意,ロード・マップ,ジュネーブ提案 —イスラエル・パレスチナ和平プロセスの10年/池田明史

    はじめに —2つの原理と和平問題
    第1節 オスロ合意
    第2節 ロード・マップ
    第3節 ジュネーブ提案
    おわりに

第7章 イラクにおけるシーア派イスラーム運動の展開/酒井啓子

    はじめに
    第1節 イラクのシーア派社会に関する先行研究
    第2節 シーア派社会におけるイスラーム運動の諸相 —1950年代からフセイン政権崩壊まで
    第3節 イラク戦争後のシーア派イスラーム運動の台頭状況
    おわりに

あとがき

索引