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海外研究員レポート

タイ国家学術調査委員会(NRCT)の活動

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050041

植竹 立人

2006年8月

タイに国家学術調査委員会(The National Research Council of Thailand:NRCT)という組織がある。NRCTは、1959年に政府の科学技術に関する助言を行なう機関として設置され、現在は首相直轄の独立組織として国の政策や戦略に対して提言を行なう重要な役割を担っている。委員長には首相、副委員長には副首相が就任する。

NRCTは、ビジネスマンには馴染みが薄いであろうが、タイ国内において調査研究を目的とした活動を行なう外国人は、NRCTに調査プロポーザルを提出し認可を受ける必要があり、非常に係わりの深い組織である。認可後、NRCTから研究許可証が交付されるが、これは我々が査証1を取得・延長する際に必須な提出書類である。1963年以来、NRCTは海外の大学や研究機関とのネットワークを活用し、多くの研究者を受け入れてきた。2005年度(タイの事業年度は10月から9月)、海外の研究者からNRCTに提出された研究プロジェクトは自然科学、社会科学合わせて100件であり、認可されたプロジェクト数は64件である【表1】。タイに滞在する研究者数は20カ国88人、うち日本人は29人と最も多い【表2】。近年の研究者受入数及びプロジェクト実施件数の推移は【グラフ1】のとおりである。もともと科学技術関連から始まった機関であるが、社会科学系の研究者も安定的に受け入れている。なお蛇足的に述べると、外国人研究者が、調査研究のために重要な行政文書の閲覧を希望する場合には国立公文書館を利用することになるが、この際もNRCTへ提出する調査研究計画にあらかじめ利用する旨を記しておかないと閲覧が許可されないので留意すべきである。

NRCTは日本学術振興会(JSPS)をはじめドイツ、オーストラリア、韓国などの研究機関や団体との共同研究、学術交流なども積極的に行なっている。JSPSとは医学、水産学など5つのテーマで日タイ両国の大学を通じた共同研究を実施中である【表3】。うちひとつは、「東アジア地域システムの社会科学的研究」で、東アジア統合、経済連携についての議論が活発になり始めた 1999年から開始されている。日本側は京都大学東南アジア研究所、タイ側はタマサート大学とチュラロンコーン大学をそれぞれ「東アジア研究の拠点」と位置付け、社会科学系研究者が、東アジア市場に最大の効果をもたらす経済連携のあり方や東アジア統合が域内各国に及ぼす影響などの議論・研究を行なっている。

この他にも、宇宙開発、環境対策、生物生態調査など様々な分野において事業主体となって諸外国との共同研究を行なっている。NRCTは、国内の経済発展、社会開発とグローバルな知的貢献を担う頭脳組織といえよう。

【表1】分野別研究計画件数(2004年10月~2005年9月に受付されたもの)

研究分野 受付件数 2005年度認可件数 2006年度認可件数 審査中
合議中 追加書類待ち 取消
《自然科学》 45 31 5 3 5 1
物理・数学 1 1
医学 2 1 1
農学・生物学 39 27 5 2 4 1
情報技術・通信科学 3 3
《社会科学》 55 33 14 1 4 3
哲学 15 9 6
法学 1 1
政治・行政学 4 1 2 1
経済学 5 5
社会学 29 17 5 1 4 2
教育学 1 1
合 計 100 64 19 4 9 4

【表2】国別研究者認可数(2005年度〈2004年10月~2005年9月〉)

国名 自然科学 社会科学 合計 国名 自然科学 社会科学 合計
日本 17 12 29 ベルギー 2

2
米国

8

7

15

カナダ 1 1 2
ニュージーランド 8 8 オランダ 2 2
フランス 4 4 オーストラリア 1 1
カンボジア 4 4 バングラデシュ 1 1
英国 3 3 中国 1 1
ドイツ 3 3 韓国 1 1
イスラエル 3 3 ノルウェー 1 1
フィリピン 1 2 3 スリランカ 1 1
マレーシア 1 2 3 スイス 1 1
合計 41 47 88

【グラフ1】 年度別研究者受入数・プロジェクト件数推移

【グラフ1】年度別研究者受入数・プロジェクト件数推移

(出所)【表1】、【表2】、【グラフ1】はNRCT発行の"Directory of Foreign Researchers' Research Project in Thailand in Fiscal Year of 2006"より抜粋。

【表3】NRCTとJSPSの共同研究プロジェクト

分野 研究テーマ 拠点大学 開始年度
日本 タイ
微生物の生物化学的研究 耐熱性微生物資源の開発と利用 山口大学 カセサート大学 平10

医学

感染症とその周辺領域

東京大学

マヒドン大学

平11

社会科学 東アジア地域システムの社会科学的研究

京都大学 (東南アジア研究所)

タマサート大学
チュラロンコーン大学

平11

水産学 新世紀における水産食資源動物の生産技術及び有効利用に関する研究 東京海洋大学 カセサート大学 平12
薬学 天然薬物 富山大学 チュラロンコーン大学チュラボン研究所 平13

(出所)日本学術振興会(JSPS)ホーム・ページより。

【追記】

たまに利用する日本食レストランで、タイ人ウエイトレスが宝くじ2,900万バーツ(約 8,900万円)を当てたそうです。他の従業員に尋ねたら、本人は即刻店を辞めて田舎に帰ったとのこと。「少しくらい分け前あった?」との質問には皆さん「No」。せっせと仕事をこなしていました。


脚注
  1. 調査研究目的の場合発給される査証ステータスは RS(Research)。