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海外研究員レポート

メコン流域を巡って(タイ東北部)

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050054

植竹 立人

2006年5月

4月下旬、タイ陰暦正月期間中にタイ東北部(イサーン)をメコン沿いに旅をした。チベット高原を源流としタイの最東端を流れる大河メコンは、すなわちラオスとの国境でもある。

まず初めに訪れた町は、ラオスの首都ヴィエンチャンまで20キロメートル強に位置するノーンカーイ県。立派な入国管理事務所【写真①】やタイ=ラオス友好橋が整備されており両国民や外国人 観光客の往来が活発である。1994年に開通した友好橋の袂には雑貨・服飾の露店や食品屋台が林立し、東南アジアならではの活気を帯びていた。現在は車両、徒歩で渡るこの橋が両国間の重要な交通路線であるが、タイ政府は無償、有償合わせて1億9,700万バーツを供与し鉄道建設を進めている。タイ側の線路は完成済であり、近々に人々や物資の大量輸送が可能となろう。 ノーンカーイで1泊した翌日、メコン沿いにナコーンパノムへ移動する。「山の都」を意味するナコーンパノムの町は、その名のとおり山々に囲まれているため、熱帯のタイにあって幾分心地よい気候に感じられる。メコンを挟んでラオス側にも延々と山が連なっている【写真②】。当地は農業以外に主だった産業はなく、道路脇では果物などの即売店が数多く並んでいる。タイの地方を車で走っていると、どこへ行くにも道路の整備状況が非常に優れているということを 常に感じる。東南アジアの国々の中でもいち早く物流や観光産業が発展したのはこういったインフラ整備に早くから着手した結果であろう。

午後には次の目的地ムックダハーンに到着、ラオスのサバナケットと結ばれる「第2メコン国際橋」の建設現場を視察した。この現場では昨年7月22日、大型クレーンが横転して橋の一部が崩落、日本人、タイ人、ラオス人、フィリピン人の作業員合わせて十数名の死傷者を出す事故が発生した。崩落した部分が今もなお川面に顔をのぞかせており惨事の状況が窺えるものの、工事は順調に進んでいるようである。タイ側では入出国管理事務所を始めとする諸施設の建設が進んでおり、対岸約2キロメートル先に見えるラオス側の通関施設もほぼ完成している様子である。2006年末の竣工を迎えればベトナムのダナン港へ直結するインドシナ東西回廊が機能することになり、タイのみならず近隣諸国の経済・産業を支える要衝となる。将来的にはミャンマーのモーラミャイン港へと延伸されるため、インドをも包含した東アジア経済全体に大きな影響を与えることとなろう。

翌日はタイ東北部の中では比較的規模の大きなウボンラーッチャターニー県を訪れた。到着前は目立った建物はほとんどない町かと想像していたが、中心地は思いのほかの大きな町であ った。当地も国内外から観光客が多く訪れるようで、立派なホテルが数軒見受けられた。しか し、車で10分も走るとすぐに緑豊かな自然の大地が広がる。洞窟や滝などの観光名所も多く、観光客で活況を呈していた。同県のチョンメックからはラオスとの往来が可能であり、入出国 ゲートも完成している【写真④】。

以上のように、メコン流域は雄大な自然や新鮮な農作物を売り物にした素朴でのどかな町が多く、バンコクの喧騒から離れるにはもってこいである。他方、タイ政府は周辺国境において 道路、橋梁の整備を着々と進行させている。タイを中心としたインドシナ諸国のボーダレス経済もまた発展の一途を辿っている。

地図:タイ周辺国境


【追記】

4月13日はバラモン陰暦の新年「灌仏節(ソンクラーン)」です。敬虔な仏教徒であるタイの人たちは寺院に参拝し寄進するなど、西暦の新年よりも盛大にお祝いします。ソンクラーンは「水かけ祭り」でもあり、お互いに水をかけ合い楽しんでいます。しかし、近年はかなりエスカレート。機関銃の形をした大型水鉄砲を打ちまくったり、大きなバケツで頭からブッ掛けたり、挙句には放水車まで用意する始末。ドラム缶に目いっぱい氷を入れた水をかけられると、 暑いタイでもさすがに震えます。お祭り気分が高揚し、飲酒運転や無謀な運転も横行します。 今年は死者476名、負傷者5,985名だそうです。

写真:ウボンラーッチャターニーにて

ウボンラーッチャターニーにて