東アジアの地域統合とAPEC

2010年10月18日(月曜)
グランドプリンスホテル赤坂  五色2階 五色の間
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所
後援:経済産業省

開会挨拶 / 基調講演  |  セッション(1)  |  セッション(2)  |  総括  

総括

白石 隆 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長)

第1セッションでは、5点、重要な点があったと思います。1点目は、今後の東アジア、アジア太平洋地域における貿易自由化の制度・枠組はどこにいくのかという点です。これに関しては、FTAAP、CEPEA(ASEAN+6)、EAFTA(ASEAN+3)の3つの枠組が言及されました。EASは来年からASEAN+8になり、EASのミッションの再定義が必要になります。日中韓のFTA/EPAがまとまると、東アジア統合のダイナミクスそのものの話が変わっていくかもしれません。一方で、最終的には環太平洋FTAというのが重要であるという議論もありました。2点目は、FTAAPに至る道筋は何かという点です。FTAAPに日本がどういう立場を取るかでモダリティが変わっていくでしょう。3点目は、APECを今後どう考えていくのかという点です。法的拘束力のあるものにしていくのか、それとも非拘束なものであるべきか。FTAAPは拘束的であるべきだが、APECは貿易以外にも様々な争点に取り組むものなので非拘束的であるべきとの議論がありました。4点目はTPPをどう考えるかという議論です。そもそものAPECのビジョンは、地域全体の貿易・投資の自由化でした。それを実現するためのダイナミックな道筋というのがTPPであります。21世紀の課題に立ち向かう時に、19世紀のテーマ(農業)で足をとられるということは望ましくありません。日本にとっても、TPPに参加することで国内経済の再編が可能となるのではないでしょうか。5点目は、日米政府もASEANも中国を封じ込めようとは思っていないということです。中国が今後更に責任あるステークホルダーとしての役割を果たしていくためには、中国との協議が必要となりますでしょうし、その反面、中国が力を用いて一方的に何かしようとする時はそれに対処するという力を作っていかなくてはならないでしょう。

第2セッションでは、「新しい技術・システム・市場の可能性」が出て来ていることを痛感しました。エネルギーとそれを支える社会経済のシステムについて、考え方そのものが変わってきています。それに応じて、国や企業も対応しつつあります。スタンダードの問題、知的財産、エネルギー技術者の移動、現地調達の基準の問題、技術のオーナーシップなどの問題は、重要な問題として今後APECやそれ以外の場でも議論が必要となるでしょう。

現在のパラダイムシフト、特にスマートグリッドなどの中で、これまで人がリンクしていたインターネットのネットワークに電気で動くすべての人工物がリンクし、スマートコミュニティが出来ていくということが現実問題として起こっています。こういう新しいスタンダードのモデルは、国で作るものではないと思います。日米韓の企業が、例えばシンガポール政府と一緒に動く、というようなことが起こってくるのではないかと思います。我々はそのようなことも十分あり得るのだと認識して、日本のシステムそのものの転換とAPECそのもののエンゲージメントを考えていく必要があるのではないでしょうか。

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