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東アジアの地域統合とAPEC

2010年10月18日(月曜)
グランドプリンスホテル赤坂  五色2階 五色の間
>>開催案内・プログラム

主催:ジェトロ・アジア経済研究所
後援:経済産業省

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セッション1  「東アジア地域統合の進展とAPECの役割」

セッション1:東アジア地域統合の進展とAPECの役割

セッション1:
東アジア地域統合の進展とAPECの役割

モデレーター:
平塚 大祐(ジェトロ・アジア経済研究所 研究企画部長)
パネリスト:
ピーター・ペトリ(ブランダイス大学 教授)
ロバート・スコレー(オークランド大学 ニュージーランドAPEC研究センター長)
蔡 鵬鴻(上海社会科学院 APEC研究センター長)
ハンク・リム(シンガポール国際問題研究所 主席研究員)
浦田 秀次郎(早稲田大学 教授)

2009年のAPEC首脳会議の議長声明は、「われわれはFTAAPの現実的な道筋について探求を続けたい」と表明しており、FTAAPに向けての道筋を明示することが2010年日本APEC首脳会議の課題のひとつと考えられます。このため、セッション1「東アジア地域統合の進展とAPECの役割では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現の道筋について、研究者がどのように考えているのか率直な意見を交換しました。
 
このセッションでは、3つの点について議論しました。第1は、東アジアで議論が進んでいるASEAN+3とASEAN+6の経済統合イニシアティブに対する評価です。第2は、APECが検討しているFTAAPのあり方について、最後は、日本が協議開始を検討している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)のあり方について議論しました。

東アジアの経済統合イニシアティブ(ASEAN+3とASEAN+6)の評価

ASEAN+3(日本・中国・韓国)を対象とした東アジア自由貿易協定(EAFTA)の民間研究が2006年に発足、ASEAN+3にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたASEAN+6を対象とした東アジア包括的経済連携(CEPEA)の民間研究が1年遅れの2007年に発足、それぞれ2009年夏に第2フェーズの報告が行われ、ワーキンググループを立ち上げて検討していくということが提言されています。この提言により設立されたワーキンググループがそれぞれ別個に作業を進めているというのが現在の状況です。ASEAN+3かASEAN +6のどちらかを選ぶというよりは、二つのイニシアティブを競争させながら、東アジアの経済統合を推進する必要があります。

ASEAN+3に関心を持っているのは中国と韓国です。他方、CEPEA(ASEAN+6)に強い関心を持っているのは日本、それにASEAN+3のメンバーではない、インド、オーストラリア、ニュージーランドがASEAN+6に非常に強い関心を持っています。

EAFTAもCEPEAも、「APECの三本柱」の貿易投資の自由化、円滑化、経済協力を三本柱にしている点で共通しているものの、CEPEAは経済協力に一番の優先順位を置き、その次に円滑化、最後に自由化の優先順位となっているのに対して、EAFTAの方は三つを一括して進めていく立場をとっています。

2010年のASEAN+6の東アジアサミットには、米国とロシアがオブザーバーとなり、来年2011年から両国が正式参加となる予定ですが、そのときにCEPEAの参加国がASEAN+8まで拡大するのかどうかは現在のところ不明です。

米国の学術界は、EAFTAやCEPEAの東アジアの経済統合は米国経済にプラスであると好意的に見ていますが、米国議会のなかには、EAFTAまたはCEPEAから除外され不利益を被ると懸念する人達もいます。

FTAAP実現に向けた道筋とAPECの役割

アジア経済研究所が今年9月の第3回APEC高級実務者会合に提出したポリシーブリーフは、FTAAPについて、1)拘束力のある FTA協定でなければならない、2)高い質のFTA協定を目指す、3)参加する国から参加していくパスファインダー・アプローチをとる、4)環太平洋のエコノミーが参加するものでなければいけないということを示しました。この点に関して、国によって見解が異なっています。

ASEANの考え方は、APECは非拘束的な立場を維持すべきと考え、FTAAPをAPECと平行した形として支持していくと考えています。

中国は、ボゴール目標についてもサポートしているのと同様、FTAAPをサポートしていくというスタンスです。中国は2001年APEC上海宣言においてパスファインダー・アプローチを提案しており、将来的にはAPECが拘束力のある組織になる可能性があると考えています。中国は、FTAAPはAPECの中で議論し実行されるべきであるとして、暗にAPEC外のTPPを牽制しています。
 
米国の学界は、ダイナミックな経済圏がアジア太平洋地域で構築されることによって、米国は恩恵を受けることができると考えています。したがって、FTAAPが2004年にAPECビジネス諮問委員会の中で提案されたとき、ブッシュ政権はFTAAPを支持しました。

FTAAP実現の道筋としての環太平洋パートナーシップ協定(TPP)

TPPというのは、実は何もないところから出来上がったもので、1990年代後半、いくつかのAPECエコノミーがより早い自由化を行っていくべきだと主張、2006年にチリ、シンガポール、ニュージーランドがブルネイを足してP4の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を締結しました。2008年にブッシュ大統領が、2009年にはオバマ大統領がTPPメンバーの交渉に加わることに興味を示しました。これが現在の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)です。

TPPは、環境問題、イノベーションの問題等、21世紀の貿易の新しい問題に対応するものでなくてはなりません。また、TPPは、9カ国から13カ国に、そして究極的には21カ国へと拡大していく、ダイナミックなプロセスでなくてはなりません。このように考え、米国の学会の方は現実的でTPPが成長できる内容にしなくてはならないと考えています。他方、米国政府は、包括的でなくてはならないと考えています。ここがTPPに関する学界、米国政府の考え方が違う点です。

自由貿易協定としてのTPPは、100%すべての自由化を前提とするのではなく、90~95%の貿易項目をカバーするのが現実的です。これは、今後の交渉によります。
 
ASEANは、TPPにより東アジアの経済統合の主導権を握ることができなくなるのではないかと懸念しています。既にメンバーであるブルネイとシンガポールに加え、ベトナムとマレーシアが交渉参加を表明していますが、マレーシアは国際的な協定を利用して、ブミプトラ政策に手を入れ、マレーシア経済を劇的に立て直そうとしているのかもしれません。また、ベトナムは首相による独断であり、実際に参加するにはベトナムは多くの困難を伴うことになります。

日本にとっては、TPPに参加することによりアジア太平洋の貿易あるいは投資のルールを設定するプロセスに参加できるというメリットがあり、参加できなければルールを決めるプロセスに参加するというメリットを失います。しかし、TPPに参加すれば、農業面においては高い調整コストを支払わなければなりません。
 
中国政府は今、具体的な形ではTPPに関する政策を出していませんが、中国は決してTPPに関しての門戸を閉めるということではなく、オープンな姿勢を取っています。もしTPPが近い将来に締結をされたときには、中国はアジア太平洋に関する戦略を調整することになります。

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