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開催報告
国際シンポジウム「日印経済関係の強化を目指して―変化するグローバル秩序の中でのチャンスとチャレンジ―」
2024年11月に国際シンポジウム「日印経済関係の強化を目指して―変化するグローバル秩序の中でのチャンスとチャレンジ―」を開催しました。このページでは、シンポジウムでの基調講演やディスカッションの動画を公開しています。ぜひご覧ください。
シンポジウムの概要
開催日時:2024年11月20日(水曜)14:00~17:00
会場:ジェトロ本部5階イースト会議室
主催:ジェトロ・アジア経済研究所、在日インド大使館、Research and Information System for Developing Countries (RIS)
プログラム |
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開会挨拶
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基調講演 「インド@2047:日印協力の強化」
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第一部:「日印経済関係再考」
ディスカッション
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第二部:「コネクティビティ・イニシアチブを通じた日印経済協力」
ディスカッション
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閉会挨拶
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開会挨拶
H.E. Mr. Sibi George (駐日インド共和国特命全権大使)
日印経済協力という重要なテーマである本日のイベントに参加できて嬉しい。経済面、地政学面、安全保障面でのインド太平洋地域における日印の重要な関係は「特別戦略的グローバルパートナーシップ」として推進されている。インドから昨年多くの閣僚が日本を訪問しており、日本との関係の重要性を高く認識している。日本からインドに1,500以上の会社が進出している。成功事例もあるが、まだ充分ではないと感じている。年8%の経済成長に魅力を感じて欲しい。全都道府県を訪問してインドへの関心が高まっていることを感じている。
基調講演
「インド@2047:日印協力の強化」
Dr. Rajiv Kumar (Chairman, Pahle India Foundation)
現在のインドの状況としては、国内外と好条件が揃っている。現政権のこの9年間で改革が加速した。再生エネルギーへの取り組みが進んでいるほか、インターネットユーザー、銀行口座の開設も増加している。インフラが急速に整備されており、債務も減少している。労働人口は67%に達し、今後も労働力の拡大の余地は大きい。今後も安定したGDPの伸びが見込まれており、世界3位の規模になることが確実視されている。総輸出額においても2015年度から2024年度にかけて、年平均成長率5.9%を記録した。政策面においても、貧困層の福祉制度の充実、女性の社会進出、若者の活力化にも焦点を当てている。
ディスカッション
- モデレーター:木村 福成 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長)
木村所長
Q:日印経済関係強化に向けた民間交流の可能性はさらにあるとのことだが、民間セクターへのメッセージを聞かせてほしい。
Dr. Rajiv Kumar
A:インドの多様性について理解を深めてもらうこと、成長を一緒にしていくことが大切。
第一部:「日印経済関係再考」
1.「日印の経済的関与:現状と課題」
Mr. R Madhu Sudan (駐日インド大使館首席公使)
今どういう変革がインドで起きているかというと、インフラ開発、イノベーションの進化が挙げられる。ビジネス環境も改善しているほか、スタートアップ企業も多く台頭し、デジタルの決済も進んでいる。日印関係は2014年に確立したパートナーシップにより強い関係があり、この10年で多くの成長があった。日本企業は中期的にインドを有望な進出先としてとらえている。一方でインドへのFDIで日本は第5位。二国間貿易においても着実に伸びているものの、14位の貿易相手国となっている。課題としては、包括的なパートナーシップ合意があるがその後変化が無いこと、マーケットに対するアクセスが限定的であること等が挙げられる。今後の取り組みとして、都道府県とインドの州の関り、中小企業の進出、熟練の労働者の日本への派遣、人と人との交流を進めていくことが必要と考える。
2.「インドにおける日本企業のビジネス動向~現状と課題~」
河野 将史 (ジェトロ調査部 アジア大洋州課主幹(南西アジア担当))
日系企業の投資動向を中心に話をすると、2022年時点でインドに1,400社程度が進出し、4,900ほどの拠点がある。業種としては、半分が製造業、残り半分が小売り、情報通信、宿泊・飲食となっている。製造業のうち10%が自動車関係、中小企業が全体の15%程度。自動車は大都市周辺の北部に集中しているが、バンガロールも自動車はじめ製造業が進出している。この他チェンナイも自動車等製造業が進出しており、将来のアフリカ向け輸出拠点としても視野に入れられている。アンケート調査においてもインド進出日系企業は70%が黒字となっており、今後の事業拡大を予定している企業が75%を超えている。小売り・外食分野のほか金融機関でも日本企業の進出が進んでいるところで、インドを拠点に輸出への取り組みやR&D設置の動きもみられる。日系企業の懸念事項においては給与水準の向上から従業員の離職率の高さに変わりつつある。EVの4輪において76%が地場企業のシェア、EVの2輪ではスタートアップ企業がシェアをもっている。日本在住のインド人高度人材も3倍程度伸びており、学生も理工系が多い。製造だけでなく、R&Dセンターとしての魅力もある。
ディスカッション
- モデレーター:木村 福成 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長)
木村所長
Q:インドの中の地域の多様性の話があったが、直接投資の場合どこに行くかが重要ということになる。多様性をどのようにとらえればよいのか?
河野主幹
A:インドは地域ごとに見ることが大切である。これまでは国内で製造し、国内で販売するという考えがあり、首都近郊に進出する傾向があったが、一方で今後製造したものを輸出しようと考える場合は、アーメダバード、チェンナイが魅力的である。ムンバイはインド市場におけるテストマーケティングをするにはふさわしい場所である。
木村所長
Q:47都道府県全部をまわったとのことだが、問題を解決するためのヒントは見つけられたか?
R Madhu Sudan首席公使
A:大きな関心が日本側より出ていることが印象的。日本も多様性があると感じた。それぞれが異なる優先順位をもっているが、インドの戦略としては人材やインドの熟練労働者のエンジニアが日本に来れるような環境を整備することが大切と考える。
第二部: 「コネクティビティ・イニシアチブを通じた日印経済協力」
1.「インド北東部における経済発展、コネクティビティ・イニシアチブへの取り組み と日印協力のチャンス」
Dr. Prabir De (Professor, RIS)
インド北東部の経済的割合は、インド全体の3%程度となっている。環境が素晴らしく、将来性が非常に高く、繁栄と経済的機会に恵まれていると言える。半導体が成長し、将来的に有望な地域である。成長をリードするのはインフラであり、ニューコネクティヴィティが成長を支えていく。これにより、貿易の拡大、競合性優位、雇用創出、収入増大のサイクルが早まる。北東インドで見られる産業バリューチェーンは製薬関係、テキスタイル関係などさまざまなブランドが、北東部にも投資している。バリューチェーンが国境間をまたいでつないでいき、国境を越えたシームレスな貿易円滑化を要求するための新たなコリドーを構築している。すべては紹介できないが、ボーダーの連携がいろいろ行われている。特に連結からの観点で、コリドー開発、水路の連携、鉄道の接続性、ランドポート開発などがある。北東部における連結性の触媒ということで、インド政府、州政府がすべて連携しながら、さまざまな調整をするということが、北東部の特長となる。インドは大きな産業の可能性を秘めている。三つのエリアとして協力できると思うが、まずは同様のキャパシティ、さまざまな公共交通機関の構築、デジタルのキャパシティ、データの共有が更にできるだろう。最後に二つのハイライトがある。まず、基本的に日本とインドの関係を見たときに、ACT-EASTが非常に重要になる。二つ目は、デジタル化により経済的な効率化を図ることである。この分野に関して、非常に大きな機会があると思われ、そのような形で北東部を巻き込んでいくことが重要である。またバリューチェーンについても、プロダクションセンターを作る。日本のFDIをしっかり活用していくことが必要。また再生エネルギーの協力が必要になる。気候変動だけではなく防災の観点からも必要である。テクノロジーを使って、食品加工、包装技術にも活用できる。スキルアップ、職業教育、農業系製品、スマート系の取組、メディア、高等教育にも日本のファンドが必要になる。
2.「ASEAN における連結性事業の教訓―ベンガル湾・インド北東地域開発への示唆」
梅﨑 創 (ジェトロ・アジア経済研究所 開発研究センター 経済統合研究グループ長)
本日は、ASEANにおける連結性事業からの教訓として、特にベンガル湾・インド北東地域へのインプリケーションについて報告する。ASEANの連結性というのは、ASEANの経済統合、ASEAN経済共同体という動きとは別に出て来た。元々経済統合の方は、1990年代から動き出したAFTA自由貿易地域を中心に、範囲を拡げて来た。ASEAN経済共同体が進んできた2007、2008年頃から、「連結性」にフォーカスを当て、各省庁が進めている協力を統合してコネクティビティ・マスタープランを作って進捗管理を進めるという動きが出てきた。物理的な連結性は典型的には道路、港や空港をつくることであるが、制度的な連結性は貿易の自由化・FTA、サービスの自由化、投資の自由化、あるいは交通の円滑化がある。ご存じのように、東アジア・東南アジアは目覚ましい経済発展を遂げており、そのプロセスにおいて、多国籍企業による海外直接投資が非常に大きな役割を果たしている。ASEAN域内の協力もあるが、日本・韓国・米国など域外の国々の協力があったからこそ、うまく行った部分が非常に大きかった。企業は、投資をして、貿易環境を作って、グローバルバリューチェーンという国境を越えた生産のネットワークを構築してきた。災害などでネットワークが遮断されるようなことがあっても、一度作ったネットワークがあれば、すぐに回復することができる。定期的に取引を行うネットワークが張り巡らされることによって、自由貿易やEPAという、制度化のインセンティブが高まり、それらが形成されると、ルールベースの関係ができて、国境を越えた取引・貿易投資関係のリスクを下げることができ、より関係を深めていくことが可能になる。南アジアを見ると、グローバルバリューチェーンを通じた貿易の連結性では、一つ目は、他の地域と比べて、前方参加、資源・材料の投入という役割での参加が強く、アフリカ諸国と同じ傾向である。二つ目は、域内貿易のシェアが非常に低く、南アジア諸国の発展段階と似通っている。今日いろいろな話があったように、インドという国を一つの国としてみるのは不十分なところがある。三つ目は、東南アジア、北東アジア、欧州の国々に対して、一方的な依存関係にあることである。南アジアの産業発展を促していくためには、域外との連結性を強化していくことが重要である。東南アジアは南アジアのすぐ隣にあり、南アジアよりは産業発展が進んでおり、非常にいい関係にあるので、両地域の連結性を高めていく意義がある。域外国との関わりについても、ASEANがいろんな国との重層的な関係を活用してきているように、南アジア地域においても同じようなアプローチが可能と思われる。やはりルールベースの関係を構築していくことが重要ということを指摘したい。
ディスカッション
- モデレーター:若松 勇 (ジェトロ・アジア経済研究所 ERIA 支援室長)
若松室長
Q:北東部について、他の地域と比べた魅力、どういった産業であればビジネスチャンスがあるかをお話いただきたい。
Prabir De教授
A:北東部が国際的ポジションであり、人的リソースやきれいな水にも恵まれている。データを使った半導体プラントの設置も有望である。自然にも恵まれた場所である。
若松室長
Q:ASEANとの連結性が魅力的だが、どういった点がクリアされるとより魅力が増すと思われるか?
梅崎経済統合研究グループ長
A:他国が間にあることから、インド本土との連結が強くないエリアであるとも言える。山に囲まれた地域ではあるが、空路の輸送等工夫できるところもあると思う。
Prabir De教授
A:北東部は地理的に重要なエリアである。周辺国の情勢が改善すれば、より投資が集まるものと思われる。
閉会挨拶
木村 福成 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長)
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ジェトロ・アジア経済研究所 研究推進部 研究イベント課
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