tanzaniaTanzania Portland Cement Company (TPCC)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

HeidelbergCementが大部分の株式を所有するTPCCは、タンザニア有数のセメント製造業者であり、ダルエスサラーム近郊でセメント工場を操業している。

Tanzania Portland Cement Company Ltd.(TPCC)は、スイスのセCementia Holdings AGによって1959年に設立された。1962年にCementia Holdings AGはTanganyika Development Company(現Tanzania Development Corporation)と共同で、ダルエスサラームのWazo Hillでセメント工場の建設に着手した。タンザニア政府が同社株式の20%を所有した。工場は1966年に完成し、タンザニア初の国産セメントがWazo Hill工場から出荷された。

1967年に政府はTPCCの持ち株を20%から50%に増加し、1973年には100%取得して同社を国有化した。1992年、Scancem International ANS(13%)とSwedfund International AB(13%)外資2社と、政府が株式の74%を所有する合弁会社になった。

TPCCは1998年に民営化され、株式所有は以下のとおりである:
タンザニア政府39.4%、TPCC従業員(SACCOS)0.6%、Scancem International 41.0%、Swedfund International 19.0%。
2003年にTPCCの持ち株率が次のように変化した:
タンザニア政府30.0%、TPCC従業員(SACCOS)0.6%、Scancem International 50.4%、Swedfund International 19.0%。
2005年のTPCC株式保有率は:
タンザニア政府30.0%、TPCC従業員(SACCOS)0.7%、Scancem International 69.3%。

Scancem International ANSがドイツのHeidelberg Cement Groupに統合されたことに伴い、前者の社名がHeidelbergCement Africa (HC Africa)に改称された。いまやHeidelbergCementの一部となったScancem International ANSは、アフリカのセメント市場では有数の企業である。事業活動には、セメントの流通販売に加え、セメント工場と粉砕プラントとターミナルの所有、操業、管理が含まれる。同社はサブサハラ・アフリカ7ヶ国で操業しており、本社はノルウェー、オスロのLysakerにある。

国内の所在地

タンザニア・ポートランド・セメントカンパニー(TPCC)は、首都ダルエスサラームの郊外にあるWazo Hillで統合セメントプラントを操業している。

Wazo Hill, Dar Es Salaam, Tanzania; Tel: +255 22 263 0130/5; Fax: +255 22 263 0139

製品・サービス

同社はタンザニアで建設用セメントの製造、販売、流通を行っている。製造されているセメントの2ブランドは、Twiga Ordinary(TZS 727:2002, Cem I/42,5N)とTwiga Extra (TZS 727:2002, Cem II/A-L/32,5R)である。

従業員数

322 名

財務情報

市場シェア

タンザニア国内市場の40%。

事業目的

「弊社の経済的な目標は、コスト指導力と長期的な収益性重視の成長を通じて、持続的に収益を増大させることである。」

ビジネスモデル

TPCCの過半数の株式の所有するHeidelbergCementがビジネスモデルを決定している。
「セメントと骨材がわが社の二大原料であり、成長戦略の基盤になっている。セメント産業においては成長市場に重点があり、成熟市場では垂直統合の拡大と骨材原料の確保に集中する。HeidelbergCementは統合的な管理アプローチをとっている。わが社の成功は、地域的な責任、グループ全体の基準、世界的リーダーシップのバランスの上に成り立っている。

地域事業単位は、ビジネスの成功にとってきわめて重要である。各地域の経営者は、市場とコストに指導力を発揮するため、生産、市場開拓、マネージャーの育成に全責任をもっている。地域をサポートするため、標準化されたITインフラに基づいて共有サービスセンターが、すべての事業ラインの管理機能を取りまとめている。HeidelbergCementはグループ内部の透明性、効率性、迅速な実施を促進するため、すべての主要な管理プロセスを標準化している。グループ全体で主要な成績指標が統一されているので、直接比較が可能である。これは持続的ベンチマークの重要な前提条件になっている。

セメント事業ラインの投資は、インド、インドネシア、タンザニア等の成長市場における製造施設の近代化と拡張に重点を置いている。」

2008年にTPCCは大量処理能力を拡大し、移動サイロ数を増加することにより、大口契約者とその他の専門的なセメント利用者に対するサービスレベルを強化した。また、タンザニア奥地への定期的な供給の増加に成功し、ビクトリア湖周辺とドドマ州での販売高が大幅に伸びた。

株主・所有権益

2006年に、タンザニア政府が所有する株式が一般に売却された。現在のTPCC株式保有率は次のとおりである:Scancem International 69.3%、一般市民30.7%。
一般市民が所有する30.7%は、ダルエスサラーム株式市場で活発に取引されている。

政府との関係・社会貢献

TPCCを含むタンザニアのセメント産業は、国税、雇用、技術改善、国際ビジネス標準、地域開発プログラムをはじめ、国家を構築するためにセメントを利用可能にするという中核活動を実行することにより、タンザニア経済に多大な貢献をなしてきた。

不足を補うための輸入セメントの税率が2008年にゼロになり、パキスタン、インド、中国から少なくとも毎月3万トンのセメントが同国に持ち込まれたと推定されている。関係者の推定によると、国内需要190万トンに対し、年間計360万トンのセメントが自由に輸入されている。TPCCを含む国内製造業者は、安い輸入品に負けて事業が破綻しないよう、政府の介入と保護を求めている。安い輸入品の比率は2009年に2%から20%超に増加した。

2009年8月にTPCCのSteinar Hastad営業部長は「過剰なセメントの輸入とダンピングを制限するため、停止中の35%関税の再開を求める」と述べた。過剰な輸入により、同社が1020億タンザニアシリングをかける新しい生産拡大計画の実現が、危うくなっている。

政府は前言を撤回し、輸入セメントに対する停止中の関税を2008年7月に完全撤廃した。TPCCが生産拡大計画への投資を決定する前に伝えられた政府の方針によると、停止中の関税は2010年中に25%まで(年間5ポイント)漸減され、その後は一定に据え置かれる予定であった。

2006年10月にTPCCは、同社の所有地に立ち入った933人の侵入者に対する訴訟に勝訴したが、2008年の上訴審が例外的に長引いたため、同社は所有地の再所有ができない状態である。採石場のすぐ東側にある同社の所有地に侵入者が逗留しており、採石場の安全な拡張が制限され、操業が危機に陥っている。

製品開発

2008年に新しいセメント粉砕・パッキング工場が操業を開始し、2009年3月に新しいキルンから最初のクリンカーが生産され、輸入クリンカーとは無関係に操業できるようになった。3月には新しいクリンカーラインから、約25,000トンの高品質クリンカー(試験ベース)が製造された。拡張プロジェクトは、原料のスクリーナー・クラッシャー、石灰岩の貯蔵、原料ミルとサイロから成る完全生産ラインと、5段階サイクロン予熱回転窯、セメントミルとサイロから成るライン、パッキングと発送の施設、専門の132 kV電力ラインから構成されている。クリンカー生産ラインは現在試運転中である。