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アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

タンザナイトワンは、子会社を通じて貴重なタンザナイト天然宝石の採掘と販売を行う、バミューダ登録の持ち株会社である。同グループは、子会社であるTanzaniteOne Mining Limitedを通じて、世界唯一のタンザナイト埋蔵地として知られる地所の採掘権と、この採掘権エリアに隣接したタンザナイトの推定埋蔵地における広範な試掘権を所有している。

タンザナイトの発見は謎に包まれている。最も信憑性の高い説によると、1967年7月に地元のマサイ族の男Ali Juuyawatuがキリマンジャロ山の近くで透明なクリスタルのかけらを見付けた。青紫色の色調に魅せられたアリは、この地でルビーを探していた小売業者であり試掘者のManuel D'Souzaに発見物を見せた。鮮やかなサファイアの原石だろうと思い込んだマニュエルは、まったく新しいクリスタルに遭遇したとは夢にも思わなかった。宝石学鑑定の結果、このクリスタルはサファイアよりも複雑な組成をしており、他のどの宝石よりも珍しい色調をしていることが判明した。

新種の宝石が発見されたという噂が広がるにつれ、複数の試掘者と部族がそれぞれ埋蔵地の権利を主張した。1967年から1972年にかけて、露天掘りの採掘作業により、200万カラットの宝石クラスのタンザナイトが産出されたと推定されている。

1971年にタンザナイト埋蔵地は国有化され、採掘作業は国の鉱業企業STAMICOが行うようになった。その後10年間に生産量は減少、インフォーマルな鉱夫による採掘が増加した。1989年までに、推定30,000人の鉱夫がこの地で作業に従事するようになったと推定されている。

1990年にタンザニア政府は鉱夫による採掘を禁止し、この地域をA、B、C、Dブロックに区分けした。AブロックはKilimanjaro Mines Limitedに、BブロックとDブロックは小規模採掘者に、Cブロックはグラファイトの採掘業者であったGraphtan Limitedに割り当てられた。Graphtan社は1996年に採掘作業から撤退し、Afgem社がCブロックの採掘権を獲得した。2000年にAfgemはタンザナイトの商業採掘に対するフィージビリティ調査を完了し、2001年に鉱山開発が開始された。2004年、タンザナイトワン・グループがAfgemのタンザナイト事業および資産を買収した。

現在知られているタンザナイトの唯一の埋蔵地は、タンザニア北部のキリマンジャロ山の近くに位置する5 kmの細長い土地である。

国内の所在地

Block C, Merelani Simanjiro District, Arusha, Tanzania; tel: +255 754 600 991; fax: +255 754 793 097

製品・サービス

タンザナイトワンはタンザナイトの採掘、流通、販売を行っている、同社はその他の天然宝石の探査にも従事している。また、外部購入、有益な施設の運営、タンザナイトの等級付けと証明書発行、原石と研磨されたタンザナイトの販売を行っている。

従業員数

350 名。

財務情報

市場シェア

タンザナイトワンは、タンザナイト原石の最大の採掘・供給業者である。

事業目的

「世界トップの高級宝石の採掘企業になること。」

ビジネスモデル

「タンザナイト戦略は、持続的な探査、既存スキルの拡大と改善、この卓越した産物の資源地と市場の確保である。カラーストーン採掘業の技術的科学的リーダーとして、また株主との関係において、株主価値の実現して成長させるためタンザナイトワンは、ビジネス機会を見逃さずに投資する。

新しい高級宝石に対する戦略的な動きとして、タンザナイトに極めて近い地層で発見された鮮やかなグリーンのツァボライト(tsavorite)の採掘に着手した。この石のカラット当たり現行価格は、タンザナイトのおよそ3倍である。

2009年の販売戦略は、中東と極東地域で新しい市場を開拓しながら、全生産の約70%を占める小粒軽量原石の流通と価格上昇を目指すことであった。この戦略の一環として、ドバイに新しい販売オフィスを開設した。今後もサイトホルダー・システムを通じて高品質の原石を販売していくが、景気低迷時期に得られた教訓から、サイトホルダーに完全に頼らないですむようにシステムの見直しが必要であることが分かった。現行の販売システムは継続されるが、これまでよりも積極的に世界中で代替市場を確保していく。また、鉱山での生産量の73%は淡色であり販売できない原石が含まれているため、淡色の原石を含むタンザナイトの商品価値を増加させ、タンザナイトを国際的に評価されるブランドに位置付けしていく。品質が劣ると判断される淡色原石に対する需要を創出することにより、タンザナイトの需要が増強されると考えている。

現在ダイアモンドと宝石採掘のビジネスセクターは不安定であるが、弊社の長期的な成長戦略は、コスト効率と競争力に富んだ事業の実施、ツァボライト生産の開始とタンザナイト生産の拡大、市場の大幅な多様化と開拓であり、この戦略は堅牢で健全なものである。この点において、経営管理者は国際的なセクターの開発と市場開発に対する生産パラメータを監視し、必要ならば生産レベルを修正していく。

2009年9月に現行のサイトホルダー・システムを補足するため、新しい営業販売戦略を発表した。(当初のサイトホルダー8社は、AG Color Inc.、Colorjewels、Intercolor、Paul Wild、KL Tambi、Rare Multicolor Gems、STS Jewels Inc.、Tanzanite Internationalである。)新しい戦略には、TanzaniteOne CuttingEdge JVの設立、GRAFGEM S.A.との覚書(MoU)の締結、Alankara SKR (Pvt) Ltd.とのMoUの締結が含まれる。

ジョイントベンチャー:オーストラリアを拠点とするCharles Edward Internationalと共同でJVが設立された。JVパートナーのトップはGavin PearceとEdward Eramanisであり、新会社の社名はTanzaniteOne CuttingEdgeである。JV社の51%はタンザナイトワンが、49%はJVパートナーが所有している。JV社は主に淡色タンザナイトの精密カッティングと視覚的最適化に重点を置く。TanzaniteOne CuttingEdgeは測定済みの原石を注文に従ってカットするため、大量の売れ残り在庫を抱えるリスクが軽減される。

GRAFGEM S.A.:TanzaniteOne CuttingEdgeは、スイス・ジュネーブを拠点とするGRAFGEM S.A.と覚書(MoU)を取り交わした。このMoUの条件によると、TanzaniteOne CuttingEdgeとGRAFGEM S.A.は、腕時計産業と宝石産業で使用される最高級品質の精密カットに対する、限定的な営業販売契約の締結を意図している。

Alankara SKR (Pvt.) Ltd (ASKR Jewellery):TanzaniteOne CuttingEdgeは、スリランカ、コロンボのASKR Jewelleryと覚書(MoU)を取り交わした。このMoUの条件によると、TanzaniteOne CuttingEdgeとASKR Jewelleryは、耐容性の高いカッティングと研磨の共同事業を開発する。またTanzaniteOne CuttingEdgeは、両社が販売する予定のジュエリーデザインを開発し、共同で製造する。JV社とASKR Jewelleryの提携は垂直統合式で、採掘から卸売までの予約注文システムである。

株主・所有権益

タンザナイトワンの議決権株式の10%は、持ち株会社の取締役とその近親者がコントロールしている。

政府との関係・社会貢献

2009年にタンザニア政府は、新しい採掘法によって、戦略的と判断された鉱物採掘会社に政府が出資することが可能になると発表した。提案されている法案に関する情報は少なく、既存の採掘に影響を及ぼすのか、あるいは新たな採掘業のみに適用されるのかは判然としない。

2009年10月、政府は将来的な採掘事業に10-15%の出資をするため、新しい採掘法案を国会に提出した。エネルギー・鉱物省のWilliam Ngeleja大臣は、提案されている法案はこのセクターのいくつかの弱点に対処するものであり、タンザニアが天然資源から得られる恩恵が増大するだろうと述べている。この法案は、タンザニアが収益力のある産業部門からより多くの利益を得られるはずだという批判に応えるために作成された。この法案は、他のアフリカ諸国で鉱業に適用されている法的財政的な手法と合致している。

所有権に関する規制とは別に政府には、現行のロイヤルティ率(金とその他鉱物が3%、ダイアモンドを中心とした宝石類が5%)を改めようとする動きがある。この法律は鉱物会社に対し、利用可能ならば国内で製品とサービスを調達するように求める。しかし大臣によると、同法でも投資家利益は保護されるという。

また政府は、2008年1月1日から鉱業部門の最低賃金を268%引き上げた。政労使間協議の結果、コア事業に関わらない労働者については、鉱業部門以外の法定賃金が支払われることになった。

2009年7月、Simanjiro区のChristopher ole Sendeka議員がDodoma州議会に対し、同区域Mereraniにあるタンザナイトワンの労働者が非人間的な扱いを受けていると訴えた。同鉱山のマネージャーは地元労働者に過度のハラスメントを行い過酷な労働条件を押し付け、人種差別行為をしているという。同議員は「Mererani採掘工場で働くタンザニア人労働者は、外国人上司からひどい待遇と差別を受けている」と付け加えた。タンザニア人労働者は、工場から宝石を持ち出さないようにするため半裸での非人間的な身体検査を定期的に受けているという。政府は、人体に深刻なリスクを及ぼす光線が出ているとされるスキャナーを使用して労働者の身体検査をしないようにタンザナイトワンに命じた。

タンザナイトワンは「x線身体スキャナーが不法行為の邪魔になると考えた窃盗団による悪意ある中傷だ」として、この申し立てを否定している。

製品開発

2009年に採掘事業が飛躍的に増加し、1年間に867,381カラットのタンザナイトが採掘され、18,087トンの鉱化素材が加工された。2009年3月には、タンザニアにある75%所有子会社のTsavoriteOne Mining Limitedを通じて、Lemshuku-Shamberaiツァボライトプロジェクトの買収が完了した。このプロジェクトは100平方キロメートル範囲の12ヵ所の試掘ライセンスから構成されている。同社はこのプロジェクトの大量サンプリングとスコーピングのため、その後12ヵ月間に約US$100万を拠出した。

またタンザナイトワンは、多様化戦略の一環として、多種類の宝石プロジェクトの調査と評価を積極的に実施している。対象はツァボライト、エメラルド、サファイア、ルビー、スピネル、トルマリンである。