southafricaDistell Group Ltd. ディステル

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

2000年

年間売上高

108億6,373万ランド(2009年6月末)

年間営業利益

14億1,101万ランド(2009年6月末)

従業員数

4,200人

会社概要と沿革

南アフリカのステレンボッシュに本社を構えるディステルは、蒸留酒、ワインなどの酒類製造販売メーカーだ。2000年にステレンボッシュ農業者ワイナリー(SFW、1925年設立)と、蒸留酒メーカーのディスティラーズ(1945年設立)が合弁して設立された。蒸留酒では19種類、ワインでは32種類、サイダーや瓶カクテルなどのRTD(Ready to Drink)飲料では5種類を扱っており、南ア市場のシェア20%を占める。2009年度(6月末決算)の売上高は前年同期比15.5%増の108億6,373万ランド、営業利益は同4.8%増の14億1,101万ランドと順調だ。売上高は2003年から2009年までの6年間で、52.5%増と大幅に伸びた。

新たな消費者に期待

同社は成長戦略の要として、(1)南ア国内の黒人中間層への販売促進、(2)サブサハラアフリカ(以下、サブサハラ)市場でのプレゼンスの拡大を掲げている。いずれもここ数年間のトレンドの変化を表している。以前は白人をターゲットとして販促活動を行っていた。また、輸出先では欧州、北米が中心だった。

同社財務ディレクターのメルウェ・ボタ氏によると、近年の売れ筋商品の変化が明らかに黒人の嗜好を反映していることから、同社も急いで黒人顧客の開拓に努めている。同氏は、「酒類の消費量、購買力や債務比率を比べると、白人層よりも黒人中間層のほうが将来的に有望な顧客だ」と言い切る。同社の分析によると、黒人中間層は、男性にはビールやブランデーなどの蒸留酒が、女性にはサイダーや瓶カクテルなどのRTD(Ready to Drink)飲料の人気がそれぞれ高い。また、男女とも共通して消費性向が高く、次々と目新しいモノを購買する傾向がある。例えば、ワインではスパークリングワインなどが売り上げを伸ばしている。ディステルは多様な商品レンジを揃えているため、目新しいモノを嗜好する消費者にも豊富なオプションを提供できるという面で有利だ。しかし、同社は黒人の購買パターンを十分に理解しているとは言えず、どの商品を投入すべきかという判断の正確性には欠ける。今後の課題は、黒人消費者層へのマーケティングと新商品の開発や市場投入だ。

一方、ディステルの海外部門の売り上げは全体の27.8%を占める。2009年1-6月期の海外での販売量は前年同期比27%増、収益は同37%増で、このうちサブサハラ地域の収益への寄与率は52%に上った。同社の輸出先はもともと英国や北米が中心で、ロンドン、ニューヨーク、サンパウロ、シンガポールに海外拠点を持ち、78ヵ国の代理店ネットワークをカバーしている。しかし、先進国市場の飽和に伴い売り上げが停滞気味になっている一方で、2000年以降に急速にサブサハラ地域の酒類市場が拡大してきたことから、同社は海外部門の方針を転換した。2002年に、Grow Africa Business(GAB)プログラムを打ち出し、、社内で大々的にサブサハラビジネスの強化を図ったのだ。サブサハラ事業への投資を拡大させ、市場調査や販売スタッフを増強した。サブサハラでの販売拠点は、ケニアとタンザニアに置いている。そのほか、アンゴラ、モザンビーク、ガーナ、ナイジェリア、ウガンダでは代理店または販売スタッフを雇って展開している。タンザニア、ケニア、ジンバブエ、モーリシャスでは合弁会社と共同で製造販売を行う。

従来、サブサハラ市場では駐在員や観光客など外国人が主な顧客だったが、経済成長で現地消費者の所得が向上したことから、現在は地元の人々を対象としたビジネスも十分に成り立つようになった。売り上げが好調なのは、アフリカ原産のマルラという木の実を使ったクリームリキュールのアマルラ、ケニアで製造しているブランデーViceroyだ。両方ともアフリカ色を強く打ち出している。次いでワイン、サイダー類などが続く。ディステルには南ア国内市場で揃えてきた多様な商品ポートフォリオがあるが、すべての国で同じ商品が売れるとは限らない。2002年から多額の投資をして市場把握を試みているが、サブサハラで市場調査を行うのは非常に困難であるという。調査市場が成熟されておらず、調査の拠点もない。そのため、先進国市場での調査に比べて何倍もの費用と時間がかかるのが実態だ。そのほか、市場調査と並行して、現地パートナーからの情報収集、宣伝活動の強化、現地販売チャネルの拡大など、日々の地道な活動を通じてサブサハラ市場でのプレゼンス向上を図っている。サブサハラ市場は道路未整備、港の混雑、ガバナンスの不在など問題をあげればきりがなく、リスクも高い。それでも、アンゴラ、モザンビーク、ナイジェリアを中心に有望な成長市場を抱えており、リターンは大きいと同社は踏んでいる。

(情報ソース)

  • 2009年11月19日Financial Director, Merwe Botha氏インタビュー
  • ディステル・ホームページ  http://www.distell.co.za