nigeriaMaster Meats & Agro Production Company of Nigeria

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

<ナイジェリア国内で肉製品を生産>
Master Meats & Agro Production Comapany of Nigeria(以下、MMAP)は、ザンビア系Zambeef Products[※1]が株式100%を保持するナイジェリア法人である。設立年は05年で、主に農場経営(牛、豚、鶏)と肉製品製造・卸を手がける。現在、従業員は150人で、臨時スタッフとして別に50人を雇用している。年間売上・営業利益などの財務指標は非公開である。

MMAP社長のピーター・プスワネポエル氏によると、同社は09年6月に商業都市ラゴスの北に位置するオグン州シャガムにて取得した300ヘクタールの土地において、農場経営を行っているという。現地には、ザンビア人技術者が駐在している。

このうち120ヘクタールの農場に、国内で買い付けた牛1,000頭と、豚(数不明)、鶏(同)を飼育している。毎月の生産量は、鶏肉60トン、豚肉30トン、牛肉20~22トンに上り、同じ敷地内に設置した加工工場にてパッケージ化している。この肉製品は、ラゴス州にある南アフリカ系小売店ショップライトを中心に販売しており、同社売上は、50%が鶏肉、30%が牛肉、15%が豚肉となっている。MMAPは、肉製品の生産量を2010年には倍増させ、さらに5年以内で10倍にまで拡大させる計画だという。

なお、農場の残りの180ヘクタールでは、飼料用の大豆、サトウキビ、メイズなどを栽培している。近年、穀物価格が高くなっているため、飼料を輸入に頼らず自社生産することで、コストを抑える意図がある。

※1 Zambeef Productsは、ガーナにもMaster Meats (Ghana)というZambeef Productsの現地法人を持っている。ここでは農場経営は行われておらず、肉製品の卸販売のみ。

より美味しい肉製品を食卓に

プスワネポエル氏によると、ナイジェリア国産牛肉は、外国産のものに比べると味が落ちるという。このため、肉牛の育て方を改善して、美味しい牛肉を市場に提供できるようにしたいという。また、2010年にはオグン州よりも市場に近いラゴス州レッキ地区に加工工場を設置して、鮮度の高い肉製品をラゴス市内の消費者に届けることができる体制を整えたい考えだ[※2]。

※2 これに先駆け、09年中にラゴスのメインランド地区に直営小売店の開店も検討された。

密輸およびインフラ・経験不足が問題点

プスワネポエル氏が、ナイジェリアでビジネスを展開する上での最大の問題点として指摘するのが、肉製品の密輸だ。現在ナイジェリア連邦政府は牛肉、鶏肉、豚肉の輸入を全面禁止している。しかし実際には、多くの肉製品が密輸されているという。密輸される肉製品は、低価格かつ味が良い。このため、MMAPがせっかくコストをかけて国内生産した製品は、密輸製品に太刀打ちできなくなる恐れがあるという。

また、電気や道路といった基本的な社会インフラの未整備も大きな問題点だ。MMAPは、北部ソコト州、ボルノ州、クワラ州などから調達した牛を、まず南部オグン州の自社農場までトラックで輸送している。肉製品が完成すると、今度は自社農場からラゴス州などへトラックで輸送している。この輸送に当たっては、ナイジェリアの道路状況が思わしくないために、時間とコストが非常にかかっているという。また、電力不足のために、自社発電する必要があることから、加工工場運営も困難であるという。

なお、MMAPはナイジェリアでの商業用農場経営の知識・経験に乏しいという内的問題も抱えている。09年には、農業セクター活性を目的とした政府資金2,000億ナイラが投入されたものの、知識・経験不足が原因となり、この資金がMMAP社内で効果的に利用されているとは言い難いという。

ファーストフードの伸びに伴い市場も拡大へ

プスワネポエル氏の推測によると、ナイジェリアの肉製品需要は、鶏肉が最も高く1日あたり21,000kg、牛肉が同14,000kg、豚肉は同4,200kgと見られるという[※3]。

食の欧米化やライフスタイルの変化により、ナイジェリアの肉製品の市場は大きく、今後も拡大が見込まれる。英国ユーロモニターの「Consumer Lifestyles-Nigeria (Feb 07)」によれば、2000年から2005年までの間に、ナイジェリア国内における缶詰製品、冷凍加工食品の1人あたり消費量が10%以上増えているデータが掲載されており、ナイジェリア人がソーセージやバーガーを食するようになっていることが指摘されている。

近年、ナイジェリアではファーストフード店が著しく増加している。現在ナイジェリアで19店舗を展開するファーストフード店「チキン・リパブリック」は、2012年までに店舗数を300店にまで増設する方針だ[※4]。また、同じくファーストフード店「ミスター・ビッグ」の店舗数も、直近の10年間で、10店から185点と急増している。さらに、09年12月中旬には、ラゴス州オニカン地区で「ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)」がフランチャイズ店をオープンしている。このようにファーストフード店の急成長に伴い、肉製品市場も拡大していくことが予想される。

※3 豚肉の需要が低いのは、ナイジェリア北部にイスラム教徒が多数存在することが一因だと考えられる。
※4 チキン・リパブリックの発表によると、同社のチキン売上は、06年に360万本、07年に600万本と伸びている。