はじめに

全人代閉会後、コロナのリバウンド、ウクライナ紛争が長期化するなか、政府は政策対応を強化している。本稿では、3月14日・21・29日の国務院常務会議、23日の李克強総理が農業農村部で開催した座談会、30日公表の人民銀行2022年第1四半期貨幣政策委員会例会の概要を紹介する。なお、重要なワードは太字で示している。

3月14日　国務院常務会議

（「政府活動報告」の重点任務の分業）

閉幕したばかりの全人代審議で通過した「政府活動報告」は、年間の経済社会発展の主要目標・任務と改革措置を確定した。質・量を保障して完全実施し、政府の人民に対する約束を実現しなければならない。

「政府活動報告」の提起した44方面、52項目の重点政策を国務院部門・関係地方に逐一分解し、責任と達成期限を明確にする。

現在、経済運営は新たな下振れ圧力に直面しており、困難・試練が増大している。

党中央・国務院の政策決定・手配を貫徹し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、シクリカルな調節を強化し、成長の安定を更に際立てて位置づけ、改革開放を深化させ、年間経済社会目標・任務の達成に努力しなければならない。

①国際情勢の変化、主要経済体のマクロ政策の調整、大口取引商品市場の動向等とわが国に対する影響を密接にフォローし、対応措置を不断に整備し、経済成長・雇用・物価等の合理的区間での安定を確保する。

②市場主体の安定・雇用の保障を軸とするマクロ政策を、しっかりきめ細かく実施する。

税還付・減税は、22年のマクロ経済の大基盤を安定させるためのカギとなる措置であり、増値税控除留保分の税還付実施案をできるだけ速やかに細分化して打ち出し、還付すべき税で速やかに還付できるものは速やかに還付し、既定の期限通りの企業への還付を確保しなければならない。

中小・零細企業、個人工商事業者支援へのその他減税・費用引下げ政策については、期間延長・範囲拡大・強化の具体的手配を早急に検討する。

特定国有金融機関と専売機関が法に基づき上納する利潤の速やかな国庫納入、地方が実施する減税・費用引下げを支援する移転支出の市・県末端への適時直接交付を推進し、末端の企業支援・国民優遇のための財政力サポートを保障する。

各地方は、実際から出発し、市場主体とりわけ特殊困難業種に対して家賃の減免、エネルギー使用料金の引下げ等の支援措置を採用しなければならない。

金融機関が具体的措置を打ち出すよう誘導し、中小・零細企業の資金調達可能性の向上、総合資金調達コスト引下げの要求を完全実施する。

同時に、積極的に内需を拡大し、消費の潜在力を発揮させ、有効な投資を増やす。

電力・石炭の安定供給を保障する。

③重点分野とカギとなる部分の改革を推進し、「行政の簡素化・権限の委譲、規制緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、大衆による起業・万人によるイノベーションを推進し、起業・イノベーション、起業経営と庶民の事務処理に便宜を図るいくらかの実効ある政策を打ち出し、更に多くの事項の他の土地での処理・オンライン一括処理を推進する。

身分証の電子化を推進し、身分証が必要なサービス事項のQRコード読取りを通じての処理を実現し、同時に大衆の情報安全とプライバシーをしっかり保障する。

市場の監督管理を強化し、公平な競争を擁護する。

カギ・コアとなる技術の難関攻略を加速する。企業のR&D費用の割増控除・基礎研究への税制優遇等のインセンティブ政策をしっかり実施し、企業の科学技術イノベーションを促進する。

対外貿易・外資の安定が直面する新たな情況を高度に重視し、既に確定した政策の実施にしっかり取り組み、対外貿易・外資企業の実際の困難の解決を推進する。

④力を尽くし、力量を慮って、民生の保障・改善の実務に心をこめてしっかり取り組む。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大する。

義務教育・基本医療・基本住宅の強化等の基本民生の保障措置しっかり実施し、困窮大衆の民生の最低ラインをしっかり保障する。

⑤各地方・各部門は緊迫感を増強し、実務をしっかり担い、すべての積極要因を動員して、政策を創造的に展開しなければならない。

引き続き監査・督促にしっかり取り組み、いい加減な対応・責任逃れ、「一律処理」とりわけ大衆の合法権益を軽視し侵害する等の不作為・職権濫用を防止・是正し、各政策が実効を上げることを確保する。

3月21日　国務院常務会議

（資本市場の平穏で健全な発展）

国務院金融安定発展委員会の報告を聴取し、国際情勢の変化がわが国資本市場に及ぼす影響を高度に重視しなければならないと指摘した。

発展を第一の重要任務とすることを堅持し、自身の事柄に力を入れてしっかり取り組み、「穏」（安定・穏健）の字を第一とし、安定の中で前進を求めることを堅持し、改革開放を深化させ、経済運営を合理的区間に維持し、科学的・有効に施策を行い、資本市場の安定を擁護し、平穏で健全な発展を維持する。

①穏健な金融政策の実体経済へのサポートを強化する

バラマキを行わないことを堅持し、同時に多様な金融政策手段を適時運用し、流動性の合理的充足を維持し、貸出・社会資金調達の適度な伸びを維持する。

②政策の安定性を維持する

近年、経済運営を安定させ、市場の活力を奮い立たせてきた政策を可能な限り引き続き実施し、同時に政策方向の一致性の評価を展開して、市場の予想に不利となる政策の打出しを防止・是正しなければならない。

③市場化・法治化・国際化の原則に基づき、資本市場の運営における問題を着実にしっかり処理する

各種市場主体のために、安定し・透明で・予想可能な発展環境を作り上げる。

④部門の協同を強化する

内外経済情勢を密接にフォローし、転ばぬ先の杖で新たな試練に対応し、的確な措置を採用して市場の予想を安定させ、市場の自信を奮い立たせる。

⑤対外貿易・外資を安定させる政策を引き続きしっかり実施する

人民元レートの合理的均衡水準での基本的安定を維持し、国際収支の基本的均衡を維持する。

3月23日　農業農村部座談会

李克強総理は農業農村部を視察し、座談会を主催した。以下は、李克強総理の発言の概要である。

農業は国民経済の基礎である。近年、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各方面が共同努力して、農業・農村の発展は顕著な成果を収め、食糧は連年豊作である。

現在、国際情勢は複雑・峻厳であり、物価が大幅に上昇し、農産品市場の変動が激化するなど不安定要因が増大しており、国内発展と農業生産も新たな試練に直面している。

わが国の食糧と重要農産品の在庫は充足し、供給は保障されているが、自身に立脚して食糧安全保障という手綱を常にしっかり引き締め、国内の生産安定・供給保障の確定性をもって外部環境の不確定に対応しなければならない。これは、物価の安定・経済運営の安定・社会の大局の安定にとって、極めて重要である。

党中央・国務院の政策決定・手配を実施し、新発展理念を貫徹し、質の高い発展を推進し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、農業生産にしっかり取り組み、改革を推進し、14億余りの人々の主食・副食品の供給を保障し、経済社会が引き続き健全に発展するための基礎を打ち固めなければならない。

一年の計は春にある、農時は待ってくれない。現在、春の肥培管理と種まきが南から北へと広大な地域で展開されている。

北方の小麦主産地はちょうど小麦が緑を取り戻す大事な時期にあり、苗の情況はさらに改善の余地がある。科学的追肥などによって弱い苗を丈夫にし、後続の肥培管理を強化し、夏季食糧の豊作を確保しなければならない。

春の田起こし・耕作準備に着実・入念に力を入れ、春の播種面積をしっかり確保し、条件のある地方で稲の二期作を増やすことを奨励し、今年の食糧生産量が確実に6億5000万トン以上になることを確保しなければならない。

各方面は大局に着眼し、責任を履行し、農業生産を有力に支援しなければならない。

農業資材は食糧の「糧」であり、化学肥料・農薬・ディーゼル油等の価格上昇問題に対して、減税・費用引下げ、原材料供給、エネルギー使用等の多くの面から企業の増産・供給増加を支援すると同時に、農業資材の輸送と末端への配送を保障しなければならない。

そのうち特殊な物品については、関係支援措置を専門に研究し、企業の潜在力の発掘・増産と多元的な輸入拡大を促進し、市場化の方法を用いて備蓄調節をしっかり行わなければならない。

国家は既に実際に食糧作付けを行っている農民に対し、さらに200億元の農業資材補助を与える措置を打ち出しており、深くきめ細かな政策をしっかり実施し、できるだけ速やかに全額給付し、食糧作付けを行う農民の積極性を保護しなければならない。

モニタリング・事前警告を強化し、気象・病虫等の災害に科学的に適時対応しなければならない。

わが国が現代化を実現するには、なお長い道のりを歩まなければならず、農村戸籍人口はなお7.6億おり、農業の現代化を引き続き推進し、工業化・都市化のためにサポートを提供し、工業化・都市化が農業の現代化を牽引できるようにしなければならない。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大し、農村振興を着実に推進しなければならない。農民の意欲を尊重し、土地の事情に応じて多様な形式の適度な規模の経営を発展させる。

18億ムー（1.2億ha）の耕地レッドラインをしっかり守り、農地水利施設と高規格の農地の整備を引き続き推進し、優良品種・先進農機装置の難関攻略と普及・応用を加速し、農業の総合生産能力を不断に高めなければならない。

3月29日　国務院常務会議

（有効な投資の拡大）

現在、国際情勢は更に複雑・峻厳化傾向にあり、国内の発展は新たな試練に直面しており、経済の下振れ圧力が一層増大している。今年のマクロ政策を制定した際、既に内外環境の多くの変化を展望・考慮していた。1－3月期、1－6月期に経済の平穏な運営を維持することは、年間の目標実現にとって極めて重要である。

中央経済工作会議精神と「政府活動報告」の措置の実施に急いで取り組み、自信を確固とし、目標をしっかり掴んで放さず、成長の安定を更に際立てて位置づけ、成長の安定・構造の調整・改革の推進を統一し、経済を安定させる政策を早く速やかに打ち出し、市場の予想安定に不利な措置を打ち出さず、遭遇する可能性のある更に大きな不確定性への事前対応案を制定しなければならない。

政府債券をうまく用いて有効な投資を拡大することは、消費を牽引し、内需を拡大し、雇用を促進し、成長を安定させる重要措置である。

マクロレバレッジ率の基本的安定を維持するという原則に基づき、今年の新規地方政府特別債は3.65兆元である。シクリカルな調節を強化するため、昨年末に既に法に基づき1.46兆元を前倒しで下達している。

今後は、

①残余の特別債額の下達に速やかに取り組み、債務償還能力が強く、プロジェクトが多く、ストックが十分な地域に傾斜させる。

昨年前倒しで下達した金額は5月末前に発行を完了し、今年下達する額は9月末前に発行を完了する。

②特別債の効果を更にしっかり発揮させなければならない。

当面を利するだけでなく、長期に恩恵を与えることを堅持し、民生優遇・脆弱部分の補強等の分野への投資を増やし、新たなタイプのインフラ等の持続力を強めレベルを上げるプロジェクトの建設を支援する。

特別債の使用範囲を合理的に拡大し、交通・エネルギー・生態環境保護・社会保障的性格をもつ安住プロジェクト等の分野に重点的に用いる基礎の上に、一定の収益性がある公共サービス等のプロジェクトを支援する。

「資金はプロジェクト次第」を堅持し、プロジェクトの着工・建設を加速し、できるだけ速やかに実物成果量を形成する。

③改革の措置・市場の方法を用いて、特別債の呼び水効果を発揮させ、更に多くの社会（民間）資本を吸引・投入させ、民営企業の投資を支援しなければならない。

④資金管理を強化し、滞留・放置を防止し、規定に違反した庁舎ビル・公会堂・記念館・招待所、イメージ作りのプロジェクトの建設を厳禁する。

⑤国債・地方債の発行を統一し、合理的な国庫の資金規模を維持し、末端の税還付・減税・費用引下げ政策と民生優遇実施に必要な財政力を保障し、債務リスクを防止しなければならない。

国外中長期資金が国債を購入することを奨励し、関連税制優遇政策をしっかり実施する。

金融系統組織は協調を強化し、国債の秩序立った発行を保障し、プロジェクト建設の資金調達を支援しなければならない。

3月30日公表　人民銀行貨幣政策委員会第1四半期例会

今年に入り、わが国は疫病防御と経済社会発展政策を統一し、マクロ政策を有効に実施し、経済発展と疫病防御で世界のリード役の地位を維持している。

穏健な金融政策は柔軟・適度で、連続性・安定性・持続可能性を維持し、市場の予想を科学的に管理し、実体経済のサポートに努力し、金融リスクを防止・コントロールしている。

貸出プライムレート改革のボーナス効果が引き続き発揮され、金融政策の伝達効率が増強され、貸出金利は安定の中で低下し、人民元レートの予想は平穏で、双方向の変動の弾力性が増強され、マクロ経済の安定器としての機能を発揮している。

現在、国外で疫病が持続し、地政学的衝突がエスカレートし、外部環境は更に複雑・峻厳・不確定化傾向にあり、国内の疫病発生の頻度がある程度増大し、経済発展は需要の収縮・供給へのダメージ・予想の弱気化の三重の圧力に直面している。

「穏」（安定・穏健）の字を第一として、安定の中で前進し、クロスシクリカル・カウンターシクリカルな調節を強化し、穏健な金融政策の実施を強化し、展望性・精確性・自主性を増強し、金融政策手段の総量・構造の二重の機能をしっかり発揮させ、主動的に対応し、自信を奮い立たせ、実体経済のために更に有力な支援を提供し、マクロ経済の大基盤を安定させなければならない。

金融政策の伝達メカニズムを一層円滑化し、流動性の合理的充足を維持し、貸出総量の伸びの安定性を増強し、マネーサプライと社会資金調達規模が名目成長率と基本的に釣り合うことを維持し、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持する。

構造的金融政策手段は積極的に「足し算」をしっかり行い、精確に力を発揮し、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス手段をうまく用いて、「三農」支援、小型・零細企業支援再貸出を増やし、炭素排出削減支援手段と石炭クリーン・高効率利用支援特別再貸出をしっかり実施し、施策を総合して地域の協調発展を支援し、金融機関が小型・零細企業、フィンテック、グリーン発展への支援を増やすよう誘導しなければならない。

金融サプライサイド構造改革を深化させ、大銀行がサービスの重心を下方に移動するよう誘導し、中小銀行の主たる責任・本業への専念を推進し、銀行の資本補充を支援し、金融市場の安定・発展を共同で擁護し、高度な適応性・競争力・包摂性を備えた健全な現代金融システムを整備する。

市場化した金利形成・伝達メカニズムを整備し、中央銀行の政策金利体系を最適化し、預金金利の監督管理を強化し、銀行の負債コストの安定に力を入れ、貸出プライムレート改革の効果を発揮させ、企業の総合資金調達コストの低下を推進する。

為替レートの市場化改革を深化させ、人民元レートの弾力性を増強し、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を堅持するよう誘導し、予想の管理を強化し、内部の均衡と外部の均衡のバランスをしっかり把握し、人民元レートの合理的均衡水準での基本的安定を維持する。

実体経済を金融が有効に支援する体制メカニズムを構築し、イノベーションへの金融支援の体系を整備し、金融機関が製造業向け中長期貸出を増やすよう誘導し、民営企業への金融支援を経済社会発展への民営企業の貢献と適応させるよう努力し、炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルの目標の実現促進によりグリーン金融システムを整備する。

住宅消費者の合法権益を擁護し、住宅購入者の合理的な住宅ニーズを更にしっかり満足させ、不動産市場の健全な発展と良性循環を促進する。

金融のハイレベルで双方向の開放を推進し、開放の条件下で経済・金融管理能力とリスク防止・コントロール能力を高める。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、第19回党大会・党19期各全会・中央経済工作会議精神と「政府活動報告」の要求を全面的に貫徹実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、経済建設を中心とすることを堅持し、「2つのいささかも揺るぐことなく」¹、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組を早急に構築し、サプラサイド構造改革を主線とすることを堅持し、内需拡大戦略をしっかり実施し、「6つの安定」（雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる）、「6つの保障」庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障）政策を引き続きしっかり実施し、部門間の政策協調を一層強化し、実体経済への金融支援とリスク防止を統一し、経済運営を合理的区間に維持し、経済の質の高い発展を推進し、第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。