田中 修

中国経済レポート

2022年政府活動報告のポイント(5)

新領域研究センター 田中 修

2022年3月31日


4.2022年の政府活動任務

4.10 その他1

(1)政府の任務

「新しい情勢・任務に対し、各レベル政府は第19回党大会精神と19期各全会精神を全面的に貫徹実施し、『二つの確立』2の決定的意義を深刻に認識し、『四つの意識』3を増強し、『四つの自信』4を確固とし、『二つの擁護』5を成し遂げ、思想・行動面で習近平同志を核心とする党中央との高度の一致を維持しなければならない。

法に基づく行政を堅持し、行政の公開を深化させ、法治政府の建設を強化する。法に基づき、同レベルの人民代表大会及びその常務委員会の監督を受け、人民政協の民主監督を自覚的に受け、社会・輿論の監督を主動的に受ける。会計検査監督、統計監督を強化する。

労働組合・共産主義青年団・婦女聯等の団体組織が役割を更にしっかり発揮することを支援する。党内の全面的に厳しい統治を弛まず推進することを堅持し、党の気風の廉潔政治建設と反腐敗闘争を深く展開する。廉潔な政府の建設を強化する。党史学習教育の成果を強固にする。政府職員は自覚的に法律の監督、監察の監督、人民の監督を受け、常に心の中で人民を最高と位置づけ、人民の公僕としての称号に恥じないようにしなければならない」。

「困難・試練に対応し、各レベル政府及びその職員は忠実に職務に励み、人民のために行政に勤しみ、精神・パワーを集中して発展に取り組み、民生を保障しなければならない。

発展を第一の重要任務とすることを堅持し、新発展理念を全面実施し、質の高い発展を推進しなければならない。

中央『八項目規定』精神を弛まず貫徹し、「四つの気風」6とりわけ形式主義・官僚主義を根気よく正し、いい加減な対応、責任逃れに断固反対し、職権濫用、粗暴で乱暴な職務態度を断固是正しなければならない。

常に人民大衆の安全・安心を心に留め、実情を調査し、実務に励み、実効を求め、民生の関心事に即応し、大衆の合法権益を軽視したゆゆしき職務怠慢問題を断固として厳しく処分しなければならない。

中央と地方の2つの積極性を十分発揮させ、人民大衆のパイオニア精神を尊重し、政策執行の一律処理・ノルマの上乗せを防止し、引き続き末端のために負担を軽減しなければならない。

健全なインセンティブ・失敗許容メカニズムを整備し、広範な幹部が責任を担い、仕事をうまくこなすよう支援する。全国上下が一丸となって、刻苦奮闘すれば、必ず新たな発展の業績を創造できる」。

習近平総書記は3月5日、内モンゴル代表団の審議に参加して、次のように述べた

「新時代の党と人民の奮進の歴史過程を回顧すると、我々は以下の重要認識を確固とした

党の全面指導を堅持することは、中国の特色ある社会主義を堅持・発展するために、必ず通るべき道である

断固党の全面指導を堅持し、党中央の権威と集中・統一的指導を擁護しさえすれば、我々は必ず、1)全党・全国が擁する団結・奮闘の強大な政治凝集力、発展への自信、2)正しいイノベーションを守り、困難な時局を共に克服する強大なパワーの凝集を確保し、風雨が来襲した際の人民全体が最も頼るべき大黒柱を形成できる

中国の特色ある社会主義は、中華民族の偉大な復興を実現するために、必ず通るべき道である

常に弛まず中国の特色ある社会主義の道を歩みさえすれば、我々は必ず、人民の素晴らしい生活への願望を不断に実現し、人民全体の共同富裕を不断に推進することができる

団結奮闘は、中国人民が歴史的偉業を創造するために、必ず通るべき道である

党の指導の下、全国各民族・人民が団結し心を一つにして、志を一つに固く結集し、勇敢に闘争し、うまく闘いさえすれば、我々は必ず、道を前進する上でのすべての困難・試練に戦勝し、人々が刮目して見つめる新たな奇跡を引き続き創造することができる

新発展理念の貫徹は、新時代にわが国が壮大に発展するために、必ず通るべき道である

新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組を早急に構築し、質の高い発展を推進し、科学技術の自立・自強を早急に実現しさえすれば、我々は必ず、わが国発展の競争力・持続力を不断に高め、日増しに激烈になる国際競争において主導権を把握し、未来を勝ち取ることができる

党内を全面的に厳しく統治することは、党が生気・活力を永遠に保ち、新たな試練に立ち向かう道をしっかり歩むために、必ず通るべき道である

向かう道をしっかり歩むために、必ず通るべき道である

中国の事柄にしっかり取り組むカギは、党にあり、党内を全面的に厳しく統治することにある。偉大な建党精神を大いに発揚し、初心・使命を忘れず、勇気をもって自己革命に取り組み、党の先進性・純潔性を損なうすべての有害要素を不断に排除し、党の健康な肉体を蝕むすべての病原体を不断に排除しさえすれば、我々は必ず、党の質・色・味を変えないことを確保できる」

これが「5つの必ず通るべき道」として、党内で学習運動が始まっている

(2)民族・宗教・華僑

民族については、「中華民族共同体意識の強化を主線」とし、宗教については、「中国化」し、「社会主義社会と適応するよう積極的に誘導」するとしている。

(3)国防・軍隊建設

習近平強軍思想を深く貫徹し、新時代の軍事戦略方針を貫徹し、建軍百年(2027年)奮闘目標をしっかりと見据えて、党の指導と党の建設を全面強化する。

現代軍事物流システム・軍隊現代資産管理システムの建設を加速し、武装・装備現代化管理システムを構築する。

国防・軍隊改革を引き続き深化させ、国防科学技術イノベーションを強化し、新時代の人材強軍戦略を深く実施し、法に基づき軍を統治し、厳しく軍を統治することを推進し、軍隊の質の高い発展を推進する。国防科学技術工業の配置を最適化する。

「人民軍隊への党の絶対指導を堅持」という常套文句が無くなった。代わりに厳しい軍の統治が盛り込まれている。物流、資産管理、武装・装備管理システムの構築に言及しているのが今回の特徴である

なお、中央レベルの国防予算は、1兆4504.5億元で、前年比7.1%増である

(4)香港・マカオ・台湾

香港・マカオについては「我々は『一国二制度』・『香港住民による香港統治』・『マカオ住民によるマカオ統治』、高度な自治方針を引き続き全面的・正確に断固貫徹しなければならない」としつつ、他方で「特別行政区への中央の全面的な管轄統治権を実施し、『愛国者による香港統治』・『愛国者によるマカオ統治』を断固実施する」と建前とその実質を併記している。

大陸による香港支配が確立したせいか、21年報告のように「外部勢力の香港・マカオ事務への関与を防止する」という表現はなくなった

また、「特別行政区政府の法に基づく施政を全力で支援する。香港・マカオの疫病防御、経済の発展、民生改善を支援し、国家の発展の大局に更にしっかり融け込ませ、香港・マカオの長期の繁栄・安定を維持する」としている。

台湾については、「我々は台湾関連業務の重要政策・方針を堅持し、新時代における党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、一つの中国の原則と『九二共通認識』を堅持し、両岸関係の平和発展・祖国統一を推進しなければならない」としつつ、こちらは「『台湾独立』分裂活動に断固反対し、外部勢力の干渉に断固反対する」としている。

政策面では、「両岸同胞は一致協力して、民族の復興という輝かしい偉業を共に成し遂げなければならない」とするのみで、21年報告のような「台湾同胞の福祉と大陸と同等の待遇を保障する制度・政策を整備する」といった具体的な政策は掲げられていない

(5)外交

「我々は独立自主の平和外交政策を堅持し、平和発展の道を断固歩み、新型国際関係の建設を推進し、人類運命共同体の構築を推進しなければならない。グローバル発展のイニシアティブを推進・実施し、全人類共同価値を発揚する。中国は常に世界平和の建設者、グローバル発展の貢献者、国際秩序の擁護者であり、国際社会と共に世界の平和・安定と発展・繁栄の促進のために、新たな更に大きい貢献を行う」。

21年報告で削除された「平和発展の道を歩む」が復活した。また、新たに「全人類共同価値を発揚する」が盛り込まれている。全人類共同価値は、昨年から習近平国家主席が国際会議の場で度々強調しており、例えば2021年1月25日のダボス会議では、「我々は、和平・発展・公平・正義・民主・自由の全人類共同価値を堅守しなければならない」としている

ウクライナ情勢については、「中国はこれまでずっと独立自主の平和外交政策をとってきた。ウクライナ情勢に関して、中国は各国の主権と領土保全は尊重されるべきで、国連憲章の目的と原則は順守されるべきで、各国の安全保障上の合理的懸念も重視されるべきだと主張している。中国はこれを基に我々自身の判断をするとともに、再び平和に戻るため国際社会と共に積極的役割を果たすことを願っている

目下のウクライナ情勢は確かに憂慮され、ロシア・ウクライナ双方が困難を克服して停戦交渉を行い、平和という結果を得るのを最大の努力で支援すべきであり、危機の平和解決に資するあらゆる努力を我々はすべて支持し、激励する。当面の急務が緊張のエスカレートさらには制御不能の回避であることについて、国際社会と各国にはコンセンサスがある

中国は、最大限の自制を維持して、大規模な人道危機が生じるのを防止しようと呼びかける。中国はウクライナ情勢特に人道情況への対応を提唱しており、引き続きウクライナに人道支援をする

目下、世界経済は感染症などの打撃を受けて厳しくなっており、制裁は世界経済の回復に打撃をもたらし、各国にとってマイナスだ。中国としては、世界の平和。安定を守り、発展・繁栄を促すために自らの建設的な努力をしたい」としている

なお、李克強総理は会見で米中関係について、「中米は国連安全保障理事会の常任理事国であり、世界で最大の発展途上国と最大の先進国である。両者の関係をうまく処理することは、両国人民の福祉に関わる。現在の少なからぬグローバルな試練は、いずれも中米両国が協力を展開し、共同で対応する必要がある。言うならば、中米協力は、両国にとっても、世界にとっても有益である

当然、中米両国は社会制度、歴史・文化、発展段階いずれも大きな差異が存在し、意見の相違があることも避けがたい。しかし、我々は協力が主流であるべきだと考える。なぜなら、世界の平和・発展は協力に依拠しているからである。我々が経済・貿易分野で市場競争をしていても、それは良性・公平な競争であるべきだ。21年、両国の貿易額は7500億ドルを超え、前年比3割近く増加した。これは何を語っているだろうか? 中米協力分野は広範であり、巨大な潜在力がある。もし米国が中国に対する輸出規制を緩和するならば、両国間の貿易額は更に大きくなり、両国と両国人民はいずれもそこから受益する。中国は米国と一緒に緩和の方向に進み、長期的利益を図ることを願っている」と述べている

(6)むすび

「中国の発展は従来全て試練への対応の中で前進してきたものであり、中国人民にはいかなる困難・試練にも戦勝する勇気・知恵・パワーがある

我々は習近平同志を核心とする党中央の周囲に更に緊密に団結し、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、習近平『新時代の中国の特色ある社会主義』思想を導きとし、堅塁を攻略し、難関を克服し、練磨・奮進し、年間の目標・任務の達成に努力し、実際の行動をもって第20回党大会の勝利の開催を迎え、わが国を富強・民主・文明的で調和のとれた美しい社会主義現代化強固へと築き上げ、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために、弛まず奮闘しようではないか!」。(おわり)

  1. 以下は政治部分が大半であるため、要点のみとする。
  2. 習近平同志の党中央の核心・全党の核心としての地位を確立し、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想の指導的地位を確立すること。
  3. 政治意識・大局意識・核心意識・一致意識。
  4. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  5. 習近平総書記の党中央の核心・全党の核心としての地位を擁護し、習近平同志を核心とする党中央の権威と集中・統一的指導を擁護すること。
  6. 形式主義・官僚主義・享楽主義・贅沢浪費の気風