田中 修

中国経済レポート

国務院金融安定発展委員会

 

新領域研究センター 田中 修

2022年3月17日


はじめに

3月16日、劉鶴副総理は国務院金融安定発展委員会個別テーマ会議を開催し、当面の経済情勢・資本市場問題を検討した。これに呼応し、同日、人民銀行・銀行保険監督管理委員会・証券監督管理委員会も同テーマで会議を開催している。本稿では、それぞれの会議の概要を紹介する。

1.国務院金融安定発展委員会

当面の複雑な情勢の下、最もカギとなるのは、発展を党の執政・興国の第一の重要任務とすることを堅持し、経済建設を中心とすることを堅持し、改革深化・開放拡大を堅持し、市場化・法治化の原則を堅持し、「2つのいささかも揺るぐことなく」1を堅持し、財産権を確実に保護し、中央経済工作会議精神と「全国政協・全人代」の手配を全力で実施し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、経済運営を合理的区間に維持し、資本市場の平穏な運営を維持することである。

マクロ経済の運営に関しては、党中央の政策決定・手配を必ず実施し、1-3月期の経済を確実に振興させなければならず、金融政策は主動的に対応し、新規貸出は適度な伸びを維持しなければならない。

ディベロッパーに関しては、リスクを有力・有効に防止・解消する対応プランを適時検討・提起し、新たな発展モデルへの転換のための関連措置を提起しなければならない。

中国概念株2に関しては、現在米中双方の監督管理機関が良好な意思疎通を維持し、既に積極的進展をみており、具体的協力プランの形成に努力しているところである。中国政府は、各種企業の海外上場を引き続き支援する。

プラットフォーム経済のガバナンスに関しては、関係部門は市場化・法治化・国際化の方針に基づいて既定プランを整備し、安定の中で前進することを堅持し、規範的・透明・予測可能な監督管理を通じて、大型プラットフォーム会社の整理・改革を穏当に推進し、できるだけ速やかに完成させ、赤信号・青信号機をしっかり設置し、プラットフォーム経済の平穏で健全な発展を促進し、国際競争力を高めなければならない。

香港金融市場の安定問題に関しては、内地・香港の監督管理機関が意思疎通・協力を強化しなければならない。

関係部門は自身の職責を確実に担い、市場に有利な政策を積極的に打ち出し、収縮的な(景気後退をもたらす可能性のある)政策の打出しは慎重にしなければならない。

市場が強い関心をもつホットスポットの問題に対しては、即応しなければならない。

およそ資本市場に重大な影響を生み出す政策は、まず金融管理部門と協調し、政策予想の安定・一致性を維持しなければならない。

国務院金融安定発展委員会は党中央・国務院の要求に基づき、協調と意思疎通を強化し、必要な際は問責を進める。

金融機関は大局から出発し、実体経済の発展を断固支援しなければならない。

長期機関投資家が持株比率を増やすことを歓迎する。

各方面は、「2つの確立」3の重大意義を深刻に認識し、「2つの擁護」4を断固成し遂げ、中国経済の健全な発展の長期態勢を維持し、資本市場の安定・発展を共同で擁護しなければならない。

2.人民銀行幹部会議

人民銀行は党中央・国務院の政策決定・手配を断固貫徹し、政治的立ち位置を断固高め、国務院金融安定発展委員会の政策要求を断固実施し、積極的に任務を担当し、中央経済工作会議精神と「全国政協・全人代」の手配を実施に移す。

済建設を中心とすることを堅持し、質の高い発展を堅持し、改革深化・開放拡大を堅持し、市場化・法治化・国際化の原則を堅持し、財産権と「2つのいささかも揺るぐことなく」を堅持する。

金融政策は主動的に対応しなければならず、新規貸出は適度な伸びを維持し、中小・零細企業の支援に力を入れ、実体経済の発展を断固支援し、経済運営を合理的区間に維持しなければならない。

安定の中で前進を求め、不動産市場のリスクを防止・解消し、大型プラットフォーム会社の整理・改革を穏当に推進し、できるだけ速やかに完成させ、プラットフォーム経済の健全で平穏な発展を促進し、国際競争力を高める。

部門間の政策協調を一層強化し、市場が強い関心をもつホットスポットの問題に即応し、予想を安定させ、自信を奮い立たせ、中国経済の平穏で県是発展を維持し、資本市場の安定・発展を共同で擁護する。

3.銀行保険監督管理委員会個別テーマ会議

銀行保険監督管理委員会系統組織は、「2つの確立」の重大意義を認識し、「2つの擁護」を断固成し遂げ、情勢に対する党中央の分析・判断と政策決定・手配に思想・行動を迅速に統一させなければならない。

中央経済工作会議精神と「全国政協・全人代」の手配を断固実施し、マクロ経済を安定させる責任を担い、発展を党の執政・興国の第一の重要任務とすることを堅持し、経済建設を中心とすることを堅持し、改革深化・開放拡大を堅持し、市場化・法治化の原則を堅持し、「2つのいささかも揺るぐことなく」を堅持し、財産権を確実に保護し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、監督管理の展望性・有効性を引き続き高め、銀行業・保険業の改革開放を深く推進し、経済社会の質の高い発展の推進に力を入れ、システミックリスクを発生させない最低ラインをしっかり守らなければならない。

「穏」(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進を求めるという要求に基づき、マクロ経済の大基盤の安定を全力で支援し、経済運営を合理的区間で促進しなければならない。銀行・保険機関が大局から出発し、実体経済の発展を断固支援するよう誘導しなければならない。

市場主体の合理的な資金調達需要を満足させ、融資の供給を増やし、新規貸出は適度な伸びを維持しなければならない。中小・零細企業の資金調達の量を増やし、範囲を拡大し、金利を引き下げる。

各部門・出先機関は、銀行・保険機関が国家科学技術研究への支援を刷新し、カギ・コアとなる技術の難関を攻略する企業と「専門的・精密な・特色ある・革新的な」企業を更にしっかりサポートするよう奨励しなければならない。農村振興への金融サービスの質・効率を高め、「新市民」の都市における安住・起業に助力する。第3の柱の年金保険を引き続き規範的に発展させ、健康保険サービスの整備を推進する。

「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、「地価・住宅価格・(市場将来)予想の安定」を図る不動産の長期有効なメカニズムを引き続き整備し、不動産業の発展方式の転換を積極的に推進し、機関がM&A貸出を穏当に秩序立てて展開することを奨励し、質の優れたディベロッパーが困難なディベロッパーを合併吸収する質の優れたプロジェクトを重点支援し、不動産業の良性循環と健全な発展を促進しなければならない。

市場化・法治化・国際化の方針に基づき既定プランを整備し、安定の中で前進を求めることを堅持し、規範的・透明・予測可能な監督管理を通じて、大型プラットフォーム会社の整理・改革を穏当に推進し、できるだけ速やかに完成させ、赤信号・青信号機をしっかり設置し、プラットフォーム経済の平穏で健全な発展を促進し、国際競争力を高めなければならない。

香港金融監督管理部門との意思疎通・協力を強化し、香港金融市場の健全な発展を支援しなければならない。

資本市場の平穏な運営を積極的に支援しなければならない。市場に有利な政策を積極的に打ち出す。

直接金融の支援に力を入れ、資金調達構造の最適化を促進しなければならない。信託・資産管理運用(理財)・保険会社等の機関が長期投資理念を樹立し、真の専業投資・価値投資を展開し、「資本市場の発展を促進し、資本市場の安定を擁護する」中堅パワーとなるよう誘導する。

保険資金の長期投資の優位性を十分発揮させ、保険機関が更に多くの資金を権益資産に配分するよう誘導する。保険会社が直接投資・委託投資・公募ファンド等の各種ルートを通じて、資本市場の投資、とりわけ質の優れた上場会社への株式投資を増やすことを支援する。

権益資産管理商品の発行を強化し、資産管理運用会社が権益資産商品のウエイトを高め、保険機関が組合せ商品を発行することを支援しなければならない。

市場が強い関心をもつホットスポットの問題に即応し、市場の予想を安定させなければならない。

関係部門との意思疎通・協力を積極・主動的に強化し、政策予想の安定・一致を維持する合成力を形成しなければならない。

4.証券監督管理委員会拡大会議

証券監督管理委員会は、当面の複雑な情勢の下、国務院金融安定発展委員会が個別テーマ会議を開催し、当面の経済情勢と資本市場の問題を検討したことは、十分タイムリー、十分重要であり、資本市場対策を高度に重視していることを体現しており、市場の強い関心に十分に応え、行った手配は強い指導性・的確性を備えるものと認識している。

今年に入り、わが国の国民経済は回復の態勢を継続しており、主要マクロ経済指標の動向は合理的区間にあり、各方面の成長安定政策は引き続き力を発揮し、上場会社の業績は安定の中で好転を示し、資本市場の平穏な運営は堅実な基礎を備えており、市場の短期的変動が長期に健全な発展の趨勢を変えることもない。

証券監督管理委員会は国務院金融安定発展委員会の統一的な指揮・協調の下、中央経済工作会議と「全国政協・全人代」の手配を真剣に実施し、改革深化・開放拡大を堅持し、市場化・法治化の原則を堅持し、マクロ経済管理部門・業種主管部門等の方面との意思疎通・協力を主動的に強化し、政策予想の安定・一致性を維持し、マクロ経済の大基盤と金融運営の安定に助力する。

政府活動報告の各任務を実施し、株式発行の登録制改革の全面実行を着実に推進し、民営企業の債券による資金調達支援メカニズムを整備し、ベンチャーキャピタルの発展を促進する。

市場の内生的安定メカニズムの作用を発揮させ、上場会社の質向上推進に力を入れ、上場会社が自社株買戻しを増やすことを奨励し、ファンド会社が自社株を買い戻すことを奨励する。

長期機関投資家が資本市場に参加することに有益な制度メカニズムを整備し、公募ファンド等の各種機関投資家の育成を強化し、長期投資・価値投資を奨励する。

ハイレベルの対外開放を一層推進し、内地と香港の資本市場の実務協力を強化し、香港市場の健全で安定した発展を共同で擁護する。

米国監督管理機関との意思疎通を引き続き強化し、できるだけ速やかに米中会計検査・監督管理協力について協議を達成するよう努力する。

企業の海外上場への監督管理の新ルール実施を速やかに推進し、条件に合致した各種企業の海外上場を支援し、海外上場ルートの円滑さを維持する。

実体経済の合理的な資金調達を引き続き支援し、関係部門と積極的に協調してディベロッパーのリスクを有力・有効に解消し、プラットフォーム経済の規範的で健全な発展、国際競争力の向上を促進する。

今後、証券監督管理委員会は国務院金融安定発展委員会の手配・要求に基づき、政治的立ち位置を確実に高め、質の高い発展の推進というテーマをしっかり念頭に置き、各政策措置を一層深化・細分化し、実施で実効を上げなければならず、資本市場の平穏な運営を全力で擁護する。

  1. ①いささかも揺るぐことなく公有制経済を強固にして発展させ、②いささかも揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導しなければならない。
  2. 外国投資家が所有する海外で上場しているすべての中国株の総称。中国国内で同時に上場していても構わない。①中国大陸で登録し、国外で上場している企業の株、②国外で登録しているものの、主たる業務・関係は依然として中国にある中国大陸の企業の株の2種類が含まれる。米国の投資家が中国企業を買収し、あたかも中国企業であるかのように装って、米国で上場した場合も中国概念株となる。
  3. 習近平総書記の党中央の核心・全党の核心としての地位を確立し、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想の指導的地位を確立すること。
  4. 習近平総書記の党中央の核心・全党の核心としての地位を擁護し、習近平総書記を核心とする党中央の権威と集中・統一的指導を擁護すること。