田中 修

中国経済レポート

当面の不動産・住宅政策

新領域研究センター 田中 修

2022年3月8日


はじめに

2月24日、王蒙徽住宅・都市農村建設部長、倪虹・張小宏副部長は、2022年の政策について記者会見を行った。本稿では、そのうち不動産・住宅政策に関わる部分を紹介する。  

1.2021年の実績
(1)不動産市場の平穏な運営を維持した

各方面の共同努力の下、不動産市場は総体として安定しており、「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけは社会のコンセンサスとなっている。

我々は、不動産の長期有効なメカニズムを穏当に実施し、都市の主体責任を一層履行させ、省レベル政府の監督指導責任を強化した。

「建物引渡し・民生・安定を保障する」ことを主要な目標とし、法治化・市場化を原則として、個別ディベロッパーの不動産プロジェクトの引渡し期限徒過のリスクを断固有効に処理した。

住宅賃貸市場を規範的に発展させ、不動産市場の秩序を整頓し、人民大衆の合法権益を確実に擁護した。

(2)社会保障的性格をもつ住宅(保障性住宅)の建設を着実に推進した

保障性賃貸住宅の発展を加速し、全国40都市で新たに94.2万戸を新たに手配し、新市民・青年の住宅難問題の解決に力を入れた。

賃貸住宅を規範的に発展させ、都市戸籍の最低保障・低所得家庭で、保障すべき者の全部保障を基本的に実現した。

各種バラック地区の改造を165万戸着工し、都市老朽化小住宅団地5.56万個所の改造に新たに着工して、965万戸の住民に恩恵を及ぼした。

フレキシブルな就労者を住宅公的積立金制度に参加させ、他の土地での住宅購入引出等5項目の頻度が高いサービス事項について、省を跨いで処理した。

(3)美しく住みやすい農村建設を深く推進した

農村の低所得層の危険家屋改造・耐震改造を引き続き実施し、年間で49.2万戸の改造に着工した。

28省の81のサンプル県で農村建設評価を展開し、農村建設の不足問題を探り当て、その解決を推進した。

県都建設の規則を制定し、県都のグリーン・低炭素建設を強化した。農村建設の規則を制定し、農村住宅と村の建設の現代化を加速し、農村の居住環境対策を推進し、全国90%以上の自然村の生活ゴミ収集・輸送処理を実現した。

2.不動産情勢

2021年の不動産市場の情況は総体として平穏であった。

住宅・都市農村建設部は、党中央・国務院の政策決定・手配を断固貫徹し、地価・住宅価格・(不動産市場の将来)予想の安定を軸に、不動産の長期有効なメカニズムを穏当に実施した。総体として平穏とは、次の4方面に体現される。

①住宅取引量はプラスの伸びを維持した

21年、年間の分譲住宅販売面積は15.65億㎡に達した。これはここ数年で最高であり、前年比1.1%増である。

②住宅価格の上昇幅がある程度反落した

21年70の大中都市の新築住宅の販売価格は2%上昇し、上昇幅は20年と比べて1.7ポイント縮小、中古住宅は1%上昇し、上昇幅は20年と比べて1.1ポイント縮小した。

22年1月の70大中都市の住宅価格は前年同期比で、新築は上昇50都市、横ばいは0、下落は20である。中古は上昇が39都市、横ばいは1、下落は30である。

③不動産開発投資はプラスの伸びを維持した

21年は年間で14.8兆元に達し、前年比4.4%増であった。住宅投資は前年比6.4%増で、固定資産投資に比べ1.5ポイント高かった。

④分譲住宅の販売サイクルはなお合理的区間にある

一般的に、分譲住宅の販売サイクルは12カ月から18カ月までが比較的正常であり、21年末の水準は14.1カ月と合理的区間にある。

総体として見ると、21年の不動産市場の運営は平穏であり、不動産の長期有効メカニズムがルールに合致し、有効であったことを証明している。

3.不動産に対する2022年の考慮

我々はなおも、いささかも揺るぐことなく「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産を短期的経済刺激の道具・手段とせず、予想の誘導を強化し、都市の事情に応じて施策を講じて不動産業の良性の循環と健全な発展を促進する。これが我々の総論だが、主として以下の4方面を考慮する。

(1)コントロール政策の連続性・安定性を維持する

不動産の長期有効なメカニズムを引き続き穏当に実施し、都市の主体責任と省レベル政府の監督責任をしっかり履行させ、ハードな住宅ニーズを保障し、合理的な住宅改善ニーズを満足させ、引き続き地価・住宅価格・予想を安定させる。

(2)コントロール政策の協調性・精確性を増強する

重点は3つの「強化」である。

①土地・金融・市場の監督管理等の政策の協同を強化する。

②部・省・市のコントロールの連動を強化する。

③都市の「1都市1施策」政策への指導・監督を強化する。

(3)個別のディベロッパーの債務デフォルトにより誘発された不動産プロジェクトの引渡し期限徒過リスクを断固有力に処理する

この政策は、「建物引渡し・民生・安定保障」を主要目標とし、法治化・市場化を原則として、企業主体の責任を徹底させ、管轄地政府の管理責任を履行させ、社会の安定を擁護し、住宅購入者の合法権益を擁護するものである。

(4)不動産市場の秩序を引き続き取り締まり規範化する

21年、我々は7部門と連合して不動産市場の3年取締行動を展開し、21年の取締情況を速やかに発表した。

今後の重点は、市場監督管理の新たなメカニズムを整備し、不動産開発・取引・賃貸・建物管理サービスにおける法律・規定に違反する行為の取締りに力を入れ、人民大衆の合法権益を確実にしっかり擁護する。

4.内需拡大・成長安定方面での対応

住宅・都市農村建設事業は、人民大衆の日常生活と密接に関わっている。同時に、我々も脆弱部分の補強、内需拡大、投資の増加、消費の促進、強大な国内市場の建設の重要分野である。我々は、中央経済工作会議の要求に基づき、内需拡大・成長安定を推進し、経済の質の着実な向上と量の合理的な伸びの実現を促進するために貢献する。

たとえば、わが国は依然として都市が急速に発展する段階にあり、都市の人口規模・家庭数はなお引き続き増加している。現在、わが国の毎年の都市新規就業者増は1100万人を超え、住宅のハードな需要は比較的旺盛である。

同時に、2000年以前に建てた大量の老朽化旧小住宅団地は住宅面積が小さく、周辺環境が悪く、質も高くなく、大衆の居住環境と居住条件改善の要求はいずれも比較的切迫している。

同時に、新型コロナ感染症が、住民の居住条件・居住環境改善方面で更に切迫した要求を提起していることをも、我々は見て取っている。

わが国の都市の発展は既に都市再開発(更新)の重要な時期に入っており、過去の大規模な量を増やす建設から、ストックの質向上・改造とフローの構造調整を共に重んじる方向へと転換しており、内需の潜在力は巨大である。

たとえば、我々が早期に建設した都市インフラは既に老朽化が始まり、地下水道管が既に詰まっているものもあり、とりわけ旧い住宅、さらに天然ガスパイプラインは、一方で老朽化し、他方で安全面の潜在リスクが徐々に顕在化しており、いずれも更新・改造の必要性が切迫している。

同時に、デジタル化・ネットワーク化・スマート化に基づく新しいタイプのインフラ建設の推進も、新たな経済成長スポットである。

農村住宅・農村建設は、農民達の現代化した生活へのニーズになお適応しておらず、発展の潜在力は巨大である。

我々は初歩的に考慮し、2022年は以下の方面で施策をしっかり推進することができる。

(1)不動産市場の平穏な運営を維持する

コントロール政策の連続性・安定性を維持し、コントロール政策の精確性・協調性を増強する。

不動産の長期有効なメカにニズムを引き続き穏当に実施し、住宅のハードな需要を保障し、同時に合理的な改善ニーズを満足させ、不動産業の良性循環と健全な発展を促進し、地価・住宅価格・予想の安定に努力する。

(2)住宅のサプライサイド構造改革を推進する

主として、保障性賃貸住宅の供給増加に力を入れる。統計によれば、我々は年間で保障性賃貸住宅240万戸(部屋)を建設・手配できると期待している。

新規に公的賃貸住宅10万戸を手配し、バラック地区を120万戸改造する。同時に、長期賃貸住宅市場の建設を加速する。

(3)都市の老朽化した小住宅団地の改造を推進する

ここ数年改造した基礎の上、いくらかの体制メカニズム刷新テストを含む各地方の施策の基礎の上に、我々は更に推進し、社会(民間)のパワーの吸引・参加、金融支援方式の刷新、既存住宅の用途調整の促進等の措置を通じて、この重大民生プロジェクト・発展プロジェクトをしっかり実施する。

(4)天然ガス等都市パイプラインの老朽化更新・改造重大プロジェクトを推進する

2022年、我々は安全面の潜在リスクが存在する天然ガスパイプライン約2万㎞の改造着工に努力する。

同時に、我々は都市の水供給・排水・暖房供給パイプラインの改造、冠水防止施設の建設、生活ゴミの処理施設の建設を順序立てて推進する。

(5)「新都市建設」の推進に力を入れる

我々が言うのは、デジタル化・ネットワーク化・スマート化に基づく新しいタイプの都市インフラ建設である。

国家・省・市三級都市情報モデル基礎プラットフォームシステムの構築を加速し、スマート都市インフラ・スマートコミュニティ・スマート建築を全面推進し、スマート都市とスマートコネクテッドカーを協同で発展させ、モデル基地を作り上げることを通じて、「新都市建設」プロジェクトの実施を加速する。

以上述べたこと以外に、我々はさらに高齢化に適応した都市・コミュニティ・住宅の建設・改造を推進し、農村住宅の質・安全の向上プロジェクトを実施し、組立式建築等を大いに発展させ、マクロ経済の大基盤の安定のために積極的役割を発揮する。

5.保障性賃貸住宅

党中央・国務院は新市民・青年の住宅問題を高度に重視している。

2020年12月の中央経済工作会議において、習近平総書記は「新市民・青年とりわけ基本公共サービスに従事する人員等の住宅難の人々の住宅問題をしっかり解決することを重視し、住む家があり、職住がバランスするよう努力しなければならない」と特に強調した。

李克強総理は、21年6月国務院常務会議を主催して、「保障性賃貸住宅の発展加速に関する意見」を審議・承認し、保障性賃貸住宅の5項目制度・6項目政策を明確にした。

7月、韓正副総理は特別会議を主催して、保障性賃貸住宅建設の発展加速を手配した。

政策を打ち出した後、社会各方面は広範に関心を払い、広範な都市住民とりわけ新市民・青年は遍く歓迎した。

我々は、関係部門と共同して党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に実施し、地方が保障性賃貸住宅の発展を加速するよう指導している。

現在のところ、人口の流入がかなり多い都市はいずれも熱意が高く、具体的実施弁法を続々と打ち出し、土地、財政・税制、金融等の方面の政策を実施し、第14次5カ年計画期間に着眼し、保障性賃貸住宅発展目標を検討・確定している。

実施情況からみると、人口流入がかなり多い40の重点都市では、2021年既に保障性賃貸住宅94.2万戸を手配し、300万人近い新市民・青年の住宅難を解決できたと推計され、多くの主体が保障性賃貸住宅を発展させる良好な態勢を初歩的に形成した。

現在、農村集団経済組織、国有企業・公益事業体単位、パーク企業、住宅賃貸企業等の各方面の主体の参加熱意はなお比較的高い。

統計によれば、既存の土地・家屋を利用して建設した保障性賃貸住宅は70%に達する。

2022年、我々は引き続き保障性賃貸住宅の供給増加に力を入れる。現在の統計からみれば、全国で新たに240万戸を手配し、前年比で大幅に増加させる。この目標を実現するカギは、6つの実施にしっかり取り組まなければならない。

(1)土地への支援政策をしっかり実施する

主として5方面で力を発揮する。①農村集団経営性建設用地、②国有企業・公益事業単位の遊休土地、③産業パークの付帯用地、④既存の放置家屋、⑤新たに供給された土地を利用して、保障性賃貸住宅を建設・手配する。

この方面で、各地方はいずれも好い実践がある。たとえば、①北京は農村建設用地を利用して保障性賃貸住宅を建設し、②上海は科学研究単位・大学等が遊休土地を利用して保障性賃貸住宅を建設することを支援し、③広州は住宅賃貸企業が非居住の既存家屋を改造して保障性賃貸住宅にすることを特別支援している。

これに際して、土地の使用性質を変えず、追加土地代金納付も要求せず、保障性賃貸住宅価格を市場の同じ土地柄・同品質の価格に比べてやや低くできるように条件を創造している。

(2)審査・認可プロセスの再構築・簡略化を実施する

これは主として、各レベル政府が連合審査方式を通じて、プロジェクト認定書を作成し、関係部門はプロジェクト認定書に基づき処理を加速する。

上海等21の都市はいずれも既に連合審査メカニズムを展開し、審査・認可時間を大幅に短縮し、効率を高めている。

(3)中央の補助を実施する

21年、中央は40の都市のために予算内投資で28億元補助し、22年は中央財政補助金の支援をさらに強化する。

(4)税・費用優遇政策を実施する

21年10月1日から、住宅賃貸企業が個人に向けて賃貸を実行した保障性賃貸住宅につき、簡易な税額計算方法の選択を認めることを既に開始し、増値税を本来5%で課税するところを、現在1.5%に減らして計算している。

国有企業・公益事業単位、社会団体がその他の組織・個人と専業化した住宅賃貸企業に向けて保障性賃貸住宅を賃貸した場合は、不動産税の税率を12%から4%に減らして課税している。

(5)水道・電気・ガス価格政策を実施する

非居住の既存土地・既存家屋を利用して改造・建築した保障性賃貸住宅については、保障性賃貸住宅プロジェクト認定書を取得した後、水道・電気・ガス使用価格を一律民生用価格で執行する。

(6)金融政策支援を実施する

現在、既に保障性賃貸住宅を、都市インフラ分野不動産投資トラストファンドテストに組み入れ、同時に、保障性賃貸住宅に対する関連貸出を不動産融資集中管理等に組み入れない。

都市は、もし青年に希望があれば、その都市に未来がある。もし、わが国の青年にみな希望があれば、わが国には未来がある。

新市民・青年の住宅問題を解決することは、各レベル政府の職責であり、都市の競争力を高め、持続可能な発展を実現するための必然的要求である。

第14次5カ年計画期間、我々は人口純流入の大都市を重点とし、保障性賃貸住宅の発展を加速する。

了解するところでは、北京・上海・広州・深圳等の重点都市は、いずれも新たに増やす保障性賃貸住宅のウエイトを高めており、遍く新たに増やした住宅供給量の40~45%以上を占めている。

6.都市老朽化小住宅団地の改造

2021年、全国都市老朽化小住宅団地5.56万カ所の改造に着工し、965万戸の住民に恩恵を及ぼし、「政府活動報告」が確定した目標・任務を超過達成した。

2019~21年、全国累計で都市老朽化小団地11.5万カ所の改造に着工し、住民2000万戸超に恩恵を及ぼした。

各地方の改造プロセスにおいて、水道・電気・ガス・熱・通信等の各種パイプライン15万㎞をグレードアップ・整理し、エレベーター5.1万基を増設し、高齢者介護等各種コミュニティサービス施設3万カ所余りを増設した。

実践は、都市老朽化小団地の改造が、人民大衆の素晴らしい生活へのニーズを満足させ、民生を優遇し内需を拡大し、都市の質向上を推進すること等にとって、十分積極的作用を有することを示している1

  1. ここでは、実績のみ紹介する。