田中 修

中国経済レポート

全人代直前党中央政治局会議

新領域研究センター 田中 修

2022年3月3日


はじめに

習近平総書記は2月25日、党中央政治局会議を開催し、政府活動報告を討論し、金融政策・行政への中央巡視情況について審議した。本稿では、その概要を紹介する。

1.政府活動報告

過去一年は、党・国家の歴史上、一里塚の意義を有する一年であった。

習近平同志を核心とする党中央は全党・全国各民族・人民を団結させ牽引して、中国共産党創立百周年を厳かに慶祝し、党19期6中全会を勝利のうちに開催し、党の3つ目の歴史決議を制定し、期限どおり脱貧困堅塁攻略戦に打ち勝ち、期限通り小康社会を全面実現し、第1の百年奮闘目標を実現し、「社会主義現代国家を全面建設し、第2の百年奮闘目標に向け進軍する」新たな征途を開いた。

この一年、複雑・峻厳な内外情勢と多くのリスク・試練に直面し、全国上下は共同で努力し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、年間の主要目標・任務はかなり好く達成され、第14次5カ年計画は良好なスタートを実現し、わが国の発展はまた新しい重大な成果を収めた。

2022年は、第20回党大会が開催され、党・国家事業の発展プロセスにおいて十分重大な一年である。

政府活動をしっかり行うには、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、第19回党大会・19期各全会精神を全面的に貫徹実施し、偉大な建党精神を発揚し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組みを早急に構築し1、改革開放を全面深化させ、イノベーション駆動による発展を堅持し、質の高い発展を推進し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、発展と安全を統一し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)政策を引き続きしっかり実施し、民生を引き続き改善し、マクロ経済の大基盤の安定に力を入れ、経済運営を合理的区間に維持し、社会の大局の安定を維持し、第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。

2022年は、「穏」(安定・穏健)を第一とし、安定の中で前進を求めることを堅持しなければならない。

マクロ政策の実施を強化し、経済の大基盤を安定させなければならない。

改革を断固深化させ、市場主体の活力を奮い立たせ、イノベーション駆動による発展戦略を深く実施する。

内需拡大戦略を断固実施し、地域の協調発展と新しいタイプの都市化を推進する。

農業生産に力を入れしっかり取り組み、農村全面振興を促進する。

ハイレベルの対外開放を拡大し、対外貿易・外資の平穏な発展を推進する。

生態環境を引き続き改善し、グリーン・低炭素発展を推進する。

金融リスクを防止・解消し、システミックリスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

民生を確実に保障・改善し、社会ガバナンスを強化・刷新する。

政府自身の建設を強化し、形式主義・官僚主義を強く戒め、年間の経済社会発展目標・任務の達成に努力する。

2.金融政策・行政に対する中央巡視

19期中央第8回巡視の成果は顕著であり、政府監督の役割を発揮した。

第19回党大会以降、習近平同志を核心とする党中央は、金融政策・行政に対する集中・統一的指導を堅持・強化し、金融改革の深化について全面手配を行い、実体経済のために金融がサービスすることを堅持し、金融分野の腐敗を厳しく取り締まり、重大金融リスクを有効に解消し、わが国の金融業の発展は新たな成果を収めた。

同時に、党の全面指導の実施・党の建設強化・全面的に厳しい党内統治等の方面において、金融単位には依然として少なからぬ際立った問題が存在することも巡視は発見しており、ある問題は共通性を帯びており、真剣に解決しなければならない。

是正の主体責任を徹底させ、是正への日常監督を強化し、1つ1つ問題の解決を推進しなければならない。

金融政策・行政に対する党中央の集中・統一的な指導を強化し、中国の特色ある金融発展の道を断固しっかり歩まなければならない。

金融リスクの防止・コントロールを強化し、金融の安定の大局を断固擁護しなければならない。

全面的に厳しく党内を統治する厳しい雰囲気を強化し、「2つの責任」2を履行し、「トップ」と指導部への監督を強化し、中央8項目規定精神への違反、官民「回転ドア」(天上り・天下り)等の典型的・共通の問題について特別取締りを展開し、「敢えて腐敗せず、腐敗できず、腐敗しようと思わない」ようにすることを一体的に推進しなければならない。

権力への監督制度と紀律・法執行システムを刷新・整備し、金融分野の腐敗取締りと金融リスクの処理を同歩調で推進し、厳格な責任追及と不正金品追跡・損失回復を同歩調で推進し、制度の確立と制度執行の強化を同歩調で推進しなければならない。

新時代の党の組織路線を深く貫徹し、指導部の陣容建設を強化しなければならない。

金融分野の改革を深く推進し、金融ガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化水準を不断に高めなければならない。

中央巡視工作領導小組の2021年の活動を十分肯定し、その2022年の活動手配に同意する。

「2つの確立」3の決定的意義を深刻に理解し、「四つの意識」4を増強し、「四つの自信」5を確固とし、「2つの擁護」6を成し遂げ、巡視活動方針を全面貫徹し、政治巡視を強固にして深化させ、巡視活動の政治性・人民性を際立たせなければならない。

問題志向を際立たせ、党内監督に禁区がないことを堅持し、巡視による全カバーの任務を着実に達成しなければならない。

「巡視による是正の強化と成果の運用に関する意見」を真剣に貫徹し、是正メカニズムを整備し、是正の責任履行を強化しなければならない。

巡視・巡察の上下連動した活動の枠組みを引き続き深化させ、巡視の総合監督の役割を十分発揮させなければならない。

19期巡視活動を真剣に総括し、規律認識を不断に深化させ、巡視活動を更に科学的・有効にしなければならない。

(参考)

中央巡視工作領導小組は、2月21日、19期中央第8回巡視集中フィードバック会議を開催し、22日、人民銀行・中国銀行保険監督管理委員会等にフィードバックした。

(1)人民銀行に対する高飛組長の指摘

①党の指導の堅持・強化に不足があり、金融政策・行政に関する習近平総書記の重要論述が系統組織に十分深く入っておらず、金融管理の牽引・全体把握の役割発揮が十分でない。

②金融機関を誘導して提供している庶民優遇金融サービスが、大衆の期待となお開きがあり、民営及び小型・零細企業の資金調達の難題を解決し、金融機関が国家戦略をサポートするよう誘導・督促することについて、なお強化が必要である。

③統一・協調して実施に取り組むことが不十分であり、重点分野の金融リスクガバナンスに脆弱部分が存在する。

④金融改革の成果の深化推進が十分顕著でなく、金融法治建設がかなり立ち遅れている。

⑤全面的に厳しい党内統治の「2つの責任」が完全履行されておらず、廉潔リスクの防止・コントロールに不足が存在し、「四つの気風」7の是正が十分深まらず、厳格な雰囲気が形成されていない。

⑥指導部自身の建設の不足があり、幹部の人材開発に落差があり、幹部の離職への管理が余り規範的でなく、末端党組織の建設が着実でない。

⑦巡視・会計検査等の監督実施で発見された問題の是正に十分力が入っていない。

(2)銀行保険監督管理委員会に対する楊国組長の指摘

①金融政策・行政に関する習近平総書記の重要論述が系統組織に十分深く入っておらず、政治的立ち位置が十分高くなく、「監督管理」の「監督」の位置づけの堅守が不十分で、政治からみて監督管理政策に落差がある。

②金融政策・行政の「実体経済をサポートし、金融リスクを防止・コントロールし、金融改革を深化させる任務」の統一推進が不十分であり、政策の供給が余り精確でなく、金融資源を誘導して国家戦略をサポートすることにやや欠陥がある。

③金融リスクの防止・解消に落差が存在し、監督管理能力が不足している。

④銀行業・保険業の改革・発展のトップダウン設計が不足しており、関係部門との監督管理の協同が不十分で、地方の金融監督管理への指導が不十分である。

⑤ 全面的に厳しい党内統治の「2つの責任」の履行に落差があり、厳格な雰囲気が形成されておらず、下級の指導部とトップへの監督管理に十分力が入っておらず、一部の重要ポストとカギとなる部分に廉潔リスクが存在し、系統組織の中で監督管理権限を利用して私利を謀る問題が多発し、官民「回転ドア」(天上り・天下り)問題が比較的際立っており、「四つの気風」問題が禁止しても未だ絶えていない。

⑥新時代の党の組織路線実施に不足があり、指導部の建設に脆弱部分が存在し、幹部の人材開発を統一的に計画することに力が入らず、末端党組織の建設取組みが不十分である。

⑦巡視で発見した問題の是正が不十分である。

  1. ここでは、「新たな発展段階に立脚し」が言及されていない。
  2. 党委員会の主体責任と紀律検査委員会の監督責任。
  3. 習近平同志の党中央の核心・全党の核心としての地位を確立し、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想の指導的地位を確立すること。
  4. 政治意識・大局意識・核心意識・一致意識。
  5. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  6. 習近平総書記の党中央の核心・全党の核心としての地位を擁護し、習近平同志を核心とする党中央の権威と集中・統一的指導を擁護すること。
  7. 形式主義・官僚主義・享楽主義・贅沢浪費の気風。