田中 修

中国経済レポート

新型肺炎とマクロ政策(81)

新領域研究センター 田中 修

2022年2月24日


はじめに

本稿では、1月19日・2月15日の国務院常務会議、1月20日の貸出プライムレート引下げ、2月13日の全国春季農業生産会議の概要を紹介する。

1月19日 国務院常務会議
(1)石炭・電力・石油・ガス・輸送の保障と市場の供給保障

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、各地方・各関係部門はエネルギー・重要民生商品の供給保障・価格安定政策を強化する。現在、石炭・電力・石油・ガス・輸送の保障は、総体として平穏であり、食糧・食用油・肉・卵・牛乳・果物・野菜等の民生商品の供給量は足りており、価格は安定している。

エネルギー・市場の供給保障政策に一層しっかりきめ細かく取り組み、経済の発展と人民の生活ニーズを保障しなければならない。

①石炭・電力・石油・ガス・輸送の部間の協調メカニズムの役割をしっかり発揮させなければならない

エネルギー供給保障における政府の管轄地責任と企業の主体責任を徹底させ、石炭の正常生産を維持し、発電・熱供給用の石炭輸送を優先的に保障しなければならない。

石炭火力発電企業の発電すべきすべての発電を支援し、多くのルートで新エネルギーの発電出力を高め、省・地域を跨ぐ送電ルートをうまく用いて、過不足の相互補完を強化する。

油田・ガス田の安全なフル稼働生産を推進し、石油・ガスの供給保証に努力し、北方の資源が逼迫している地域への冬季暖房供給・エネルギー使用の保障を強化する。

②厳格に副食品供給市長責任制を実施しなければならない

土地の事情に応じて施策を講じて野菜の栽培を拡大し、肉・卵・牛乳・水産品の生産・供給にしっかり取り組まなければならない。

生鮮農産品の輸送の優先政策を厳格に執行し、商業貿易企業、Eコマースプラットフォーム、小売店網の春節の正常な営業を誘導し、市場の供給を豊富にし、消費拡大を促進する。

被災者と困窮層に対して支援・救助を強化する。

③引き続き劣悪な大気・疫病の突発等の不確定要因への対応案をしっかり準備しなければならない

地方が疫病防御措置を実施するよう指導すると同時に、骨幹交通網の円滑さを保証し、生活物資の供給保障を強化し、疫病封鎖地域のきめ細かい管理をしっかり行い、社会(民間)パワーとコミュニティの役割発揮を重視し、「最後の1キロ」「最後の1メートル」の物資配送の円滑さを確保しなければならない。

④市場需給のモニタリングを強化しなければならない

食品の品質安全の監督管理を強化し、法に基づき買占め・売惜しみ、価格吊上げ等の違法行為を調査・処分しなければならない。

(2)一部期限到来の減税・費用引下げ政策の延長

減税・費用引下げは、直接・有効・公平な、企業を優遇し民を利する政策である。

企業の困難緩和・解決を支援し、起業・イノベーションを促進するため、これまでに既に一部期限が到来する減税・費用引下げ優遇政策を延長した基礎の上に、さらに科学技術、就業・起業、医療、教育等その他の11項目の税・費用優遇政策を2023年末まで延長する。

①条件に合致した科学技術企業インキュベーター、大学科学技術パーク、大衆起業インキュベーターサービスへの増値税課税を免除し、彼らが自ら用い、及びインキュベーター対象に提供する不動産・土地については、不動産税と都市土地使用税の課税を免除する。

引き続きパイオニアの科学技術企業の認定基準を緩和し、条件に合致するすべてのベンチャー企業・エンジェル投資家については、投資額の一定割合を課税所得額から控除する。

企業の募集に応じて自主的に就業した退役軍人と、退役軍人で個人経営に従事する者については、一定限度額の税控除と関連付加を継続する。

②農産品卸市場、農産品自由市場への不動産税と都市土地使用税課税を免除する。

都市公共交通停車場等の運営用地への都市土地使用税課税を免除する。

③引き続き省レベル地方政府に授権し、地方ダム移民支援基金への課税免除・停止・減額を自主決定させる。

④医療従事者・防疫従事者への臨時の補助・ボーナス・単位が個人に支給した予防薬品等の実物への個人所得税課税を免除する。

防疫製品に関係する医薬・医療器械の登録料を免除する。

⑤大学生用アパートへの不動産税と関連賃貸契約印紙税課税を免除する。

商品備蓄政策業務を請け負った企業の自己使用の不動産・土地については、不動産税と土地使用税課税を免除する。汚染対策第三者企業所得税を15%免除する。

(1)国際環境

疫病・インフレと先進経済体の金融政策の調整は、なお世界経済の3大不確定性である。

オミクロン株は欧米等多くの国で急速に伝播しており、世界の1日当たり新規感染者数の最高は400万例に接近している。世界経済の回復の見通しには屈折が出現し、最近IMF・世界銀行はいずれも2022年の世界経済の成長率予測を引き下げた。

主要先進経済体のインフレ率が高まっており、供給のボトルネックがなお有効に緩和されていない。

FRBは利上げとB/Sの縮小を表明し、市場はその金融政策の引締めの歩みが加速すると予想しており、グローバルなクロスボーダー資本流動と金融市場の調整リスクが上昇している。

1月20日 貸出プライムレート引下げ

1年物貸出プライムレート(LPR)を10ベーシスポイント引き下げ、3.7%とし、5年物
LPRを5ベーシスポイント引き下げ、4.6%とした。現在、LPRは既に貸出基準金利と徐々に代替し、貸出金利決定のアンカーとなっている。LPR引下げは、企業の資金調達・個人住宅ローンの金利引下げを牽引する(新華社2022年1月20日)。

2月13日 全国春季農業生産兼冬小麦肥培管理強化工作会議

山東省徳州市で開催された。李克強総理の指示と胡春華副総理の講話の概要は、以下のとおりである。

(1)李克強総理の指示

春の耕作と耕作準備は、年間の食糧豊作確保にとって極めて重要である。

各地方・各部門は、習近平「新時代の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹し、食糧安全について党・政府は同等の責任を履行し、春季農業生産に着実にしっかり取り組み、経済社会の平穏で健全な発展のために有力なサポートを提供しなければならない。

現在、冬小麦の苗の状態はやや弱く、これが強くなるよう促す任務は繁雑で荷が重く、土地と苗の情況に応じて春季農地管理にしっかり取り組み、病虫害防御と極端な天候への対応・防御をしっかり行い、夏季食糧が再度豊作を得るよう努力しなければならない。

農業生産への支援を強化し、農業資材の生産・供給、農業資材価格の安定を保障し、農業技術指導を強化し、春季耕作・種まき準備の順調な展開を保証しなければならない。

食糧作付面積を安定させ、肉・卵・野菜等の副食品の生産を統一し、耕地の保護とハイレベルの農地整備を強化し、種業振興キャンペーンを深く実施し、年間食糧生産量を確保し引き続き6.5億トン以上を維持し、食糧の安全を確保して、実際の行動により第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。

(2)胡春華副総理の講話

農業の生産安定・増産を確保し、農業の総合生産能力を高めることは、常に急いでしっかり取り組まなければならない大事・重要事である。

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、今年の農業の生産安定・増産の各目標・任務を割り引くことなく達成し、食糧作付面積の安定に力を入れ、大豆・食用油原料生産を確実に拡大し、副食品の生産・供給にしっかり取り組み、農地の管理を際立てて強化し、農業の防災・減災に全面的にしっかり取り組まなければならない。

耕地の保護・整備を強化し、耕地保護の任務を具体的土地・責任者にまで割り当てて実施し、耕地の整備・改造を加速して土地当たりの産出を高め、質の高い新たな耕地整備の保障により、転用と補充をバランスさせなければならない。

農業への科学技術のサポートを強化し、種業振興キャンペーンを深く実施し、農業のカギ・コアとなる技術の堅塁攻略を着実に推進し、農業の特徴に合致した健全な科学研究体系の整備を加速しなければならない。

現代化した施設による栽培・畜産を積極的に発展させ、土地の事情に応じて施策を講じ施設野菜と施設畜産を発展させ、水産養殖の面積を確実に安定させ、養殖の空間を拡大し、重要副食品の供給水準を高めなければならない。

農業の機械化推進に力を入れ、耕地の整備と機械化対応改造を強化し、先進適正農業機械装備の研究開発を加速し、農業機械の作業に適応して品種・技術モデルを刷新しなければならない。

2月15日 国務院常務会議
1.工業・サービス業支援

経済の発展・雇用の安定において、工業・サービス業は骨幹サポートの役割を発揮している。

現在、工業経済の安定・回復の態勢はなお堅固でなく、サービス業は疫病等の影響を受け、一部特殊困難業種が存在し、近く早急に措置を打ち出し、支援を強化しなければならない。その中には次のものが含まれる。

①工業・サービス業への所得税の減免を強化する。

2022年、中小・零細企業が新規購入した価値500万元以上の設備・器具について、減価償却期間3年のものは1回限りの課税前控除を認め、減価償却期間4年・5年・10年のものは半分控除を認める。

製造業中小・零細企業の納税猶予政策を延長する。

地方の「6税2費用」(資源税・都市維持建設税・不動産税・都市土地使用税・印紙税・耕地占用税と、教育費付加・地方教育費付加)減免政策適用主体の範囲を、全部の小型・零細企業と個人工商事業者に拡大する。

②金融サービスの強化を誘導する。

人民銀行は奨励資金支援を提供し、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス等を増やして、製造業向け中長期貸出のかなり速い伸びを推進し、企業の総合資金調達コストの安定の中での低下を促進する。

③製造業のチェーン補強・産業基盤の再生を推進し、新しいタイプのインフラ建設、重点分野の省エネ・炭素排出削減技術改造等を加速し、有効な投資を拡大する。

④レストラン・小売・観光・交通旅客輸送等の特殊困難業種に対して、段階的税の減免・一部社会保険料の納付猶予等の方面で支援を強化し、雇用の安定・消費の回復を促進する。

2022年、路線バス・長距離バス、フェリー、タクシー等公共交通輸送サービスへの増値税課税を免除する。

引き続き80%の割合で観光サービス品質保証金を暫定的に還付する。

国有家屋を賃借するサービス業小型・零細企業、個人工商事業者について、2022年に疫病ミドル・ハイリスク地域に組み入れられた者は6カ月家賃を減免し、その他の地域は3カ月減免する。

各地方が、非国有家屋を賃借するサービス業小型・零細企業、個人工商事業者に適切な支援を与えることを認める。

家賃を減免した家主に対しては、規定に基づき2022年の不動産税・都市土地使用税を減免する。

2.当面の政策

常態化した疫病防御を精確にしっかり行い、内外の複雑・峻厳な情勢に対して、経済運営を阻害する問題の解決を高度に重視し、市場の予想を安定させなければならない。

引き続き大口取引商品の供給保障・価格安定政策をしっかり実施し、川下企業のコスト上昇圧力を緩和し、物価の基本的安定を維持する。

食糧・エネルギー安全を保障し、年間の食糧豊作を確保し、石炭供給を増やし、石炭火力発電企業が多く出力しフル稼働することを支援し、正常な生産と民生の電力使用を保障する。

政策の力発揮を適切に前倒して、企業の困難緩和を一層支援する政策をしっかり準備し、協調・組合せを強化し、合成力を形成して、企業の活力と経済発展の動力を増強する。