田中 修

中国経済レポート

経済諸会議の動向(5)

新領域研究センター 田中 修

2022年2月17日


はじめに

中央経済工作会議終了後、各官庁は全国会議を開催し、政策各論を議論している。本稿では、1月24日にビデオ形式で開催された銀行保険監督管理委員会工作会議の概要を、銀行行政を中心に紹介する。

1.2021年の回顧

データを中心に紹介する。

(1)実体経済へのサービス

重点民生プロジェクトを1055件完成した。

人民元新規貸出は19.95兆元、保険資金運用残高は2.5兆元増、銀行保険機関の新規債券投資は7.73兆元、製造業向け貸出は前年比6234億元増であった。

小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスは24.9%増であり、うち国有大型商業銀行は41.4%増、「三農」関連貸出は11.2%増であった。

(2)金融リスクの防止・解消

年間で銀行業の不良債権を3.1兆元処理した。ハイリスクの銀行保険機関の処理を秩序立てて推進した。

貸出系のシャドーバンキングの規模は、年初に比べ4.2兆元減少した。銀行の理財業務残高整頓・改善任務を基本的に完成した。

大型企業集団リスクの防止・解消は積極的に進展を得た。インターネットプラットフォーム企業関連金融の整頓・改善を秩序立てて推進した。

(3)銀行業改革

株主権と関連取引の特別対策を展開した。財政部門と累計2100億元の地方政府特別債で中小銀行の資本を補充した。浙江省聯社を浙江農商聯合銀行に改組した。

2.2022年の金融行政

2022年の監督管理をしっかり実施し、経済・金融の大局の安定を確保することの意義は重大である。

銀行保険監督管理委員会系統組織は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、第19回党大会、党19期各全会と中央経済工作会議精神を全面貫徹実施し、偉大な建党精神を発揚し、全面的な厳しい党内統治を堅持しなければならない。安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、実体経済への金融サービスの質・効率を引き続き高め、監督管理の展望性・有効性を確実に高め、システミック金融リスクを発生させない最低ラインを断固しっかり守らなければならない。銀行業・保険業の改革開放を深く推進し、金融業のデジタル化転換を加速し、経済社会の質の高い発展の推進に力を入れ、卓越した成績をもって第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。

(1)国民経済の良性循環促進に努力しなければならない

「『穏』(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進を求める」という要求に基づき、マクロ経済の大基盤の安定を全力で支援する。

融資供給を合理的に増やし、第14次5カ年計画の重点分野と重大プロジェクトへの融資保障をしっかり行う。インフラ投資の適度な前倒し展開を支援する。

中小・零細企業向け融資の量増加・範囲拡大・金利引下げを促進する。

国家重大科学技術任務支援を刷新し、カギ・コアとなる技術の堅塁攻略に取り組む企業と、「専門・精密・特色ある・革新的な」企業に更にしっかりサービスする。

炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルを秩序立てて推進することを軸に、グリーン金融商品・サービスを刷新し、エネルギーの生産安定・供給保障を支援する。

農村振興への金融サービスの質・効率を高め、都市における「新市民」の安住・起業に助力する。金融消費者の権益保護を強化する。

北京冬季オリンピック・冬季パラリンピックへの金融サービス保障を全力でしっかり行う。

(2)金融リスクの弛まぬ防止・解消を堅持しなければならない

引き続き「大局を安定させ、統一・協調し、施策を分類し、精確に爆弾処理を行う」という基本方針に基づき、金融分野のリスクを穏当に処理し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインを断固しっかり守る。

各方面の責任を徹底させ、ハイリスク金融機関の処理を秩序立てて推進する。不良債権のリバウンドに適切に対応する。

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、「地価・住宅価格・予想を安定させる」不動産の長期に有効なメカニズムを引き続き整備し、都市の実情に応じて施策を講じ、不動産業の良性の循環と健全な発展を促進する。

ハイリスクのシャドーバンキングを引き続き解体し、資産管理の新ルールを全面実施する。違法な資金収集の既存案件の処理を加速し、リスクのリバウンドを厳格に防止する。

(3)銀行業の改革開放を引き続き深化させなければならない

「党の指導を強化し、各方面の責任を履行させ、株主権の関係を規範化し、コーポレートガバナンスを健全化し、専門的管理を普及する」という指導原則に基づき、「1省1政策」で農村信用社改革を早急に推進する。

中小金融機関のM&A・再編を引き続き推進し、不良債権処理加速を支援する。政策性銀行の種類・勘定を分けた改革を推進する。大型銀行の総合金融サービス水準の向上を誘導する。

資産管理業務の質の高い発展を推進する。信託会社の早急な転換・発展を推進する。ノンバンクの機能・位置づけを明確にする。金融サービス業のデジタル化転換促進に努力する。

銀行業・保険業のハイレベルな対外開放を拡大し、国家重大開放措置を積極的にサポートし、金融機関の「一帯一路」共同建設プロジェクトへの支援強化を推進する。

(4)金融分野における資本の無秩序な拡張を断固防止し、金融分野に資本のための「信号灯」を設置しなければならない

「2つのいささかも揺るぐことなく」1を堅持し、金融活動における資本の積極的役割を十分発揮させる。

中小銀行・保険機関の法に基づきルールに則った、多くのルートによる資本金補充を推進する。

法に基づき資本への有効な監督管理を強化し、産業資本と金融資本のファイアーウォールをしっかり築き、株主へのスキャン式の監督管理を強化し、銀行・保険資金の盲目的なレバレッジ上昇を厳しく防止する。

有効にチェック・バランスされたコーポレートガバナンスメカニズムを整備し、党の指導とコーポレートガバナンスの深い融合を誘導する。中国の金融人材データベースの役割発揮を推進する。

金融の反独占・反不当競争を強化する。金融業務の許可による経営のルールを堅持し、「無灯火走行」行為を厳しく取り締まる。

(5)法治思考を運用して法に基づく行政能力を高めなければならない

習近平法治思想を深く学習・貫徹し、憲法の趣旨と立法精神を遵守し、法治方式を運用して改革を深化させ、発展を推進し、リスクに対応する。

法治意識を確実に増強し、常に人民至上を堅持し、プロセスの正義と結果の正義を共に重んじる。法を尊重し、法を学び、法を守り、法を用いる模範となる。

リスク監視・事前警告システムを一層整備する。非現場での監督管理の威嚇力を高め、現場での先鋭な検査の役割を強化する。行政処罰の高圧的態勢を維持し、金融の法・規定に違反するコストを確実に高める。

法に基づく監督管理への科学技術サポートを強化し、監督管理のデジタル化・スマート化水準を高める。

(6)自己革命精神を発揚し、系統組織の全面的に厳しい党内統治の深い発展を推進しなければならない2

巡視の整頓・改善への政治責任を断固担い、割り引くことなく中央巡視のフィードバック、問題の整頓・改善をしっかり行う3

新時代の党の組織・路線を全面的に貫徹実施し、厳格な管理・厳格なガバナンスを幹部陣容の建設の全プロセスに貫徹させ、とりわけ若い幹部への教育・管理・監督を強化する。

大衆の利益に損害を与えるすべての腐敗・不正の気風を断固是正する。長期に金融分野の反腐敗闘争を深化させ、金融リスクの背後にある重大腐敗問題を厳格に調査・処分する。

(参考)銀行業の監督管理データ

(1)総資産

2021年末の銀行業金融機関の資産は344.8兆元、前年同期比7.8%増。うち、大型商業銀行の資産は138.4兆元で、40.1%を占め、資産総額は前年同期比7.8%増。株式制商業銀行の資産は62.2兆元で、18.0%を占め、資産総額は前年同期比7.5%増。

(2)金融サービス

2021年末、銀行業金融機関が小型・零細企業(小型・零細企業向け貸出、個人工商事業者向け貸出、小型・零細企業主向け貸出を含む)に用いた貸出残高は50.0兆元、うち1件当たり与信総額が1000万元以下の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの残高は19.1兆元で、前年同期比24.9%増。

社会保障的性格をもつ安住プロジェクト向け貸出残高は6.3兆元。

(3)不良債権

2021年末、商業銀行の不良債権残高は2.8兆元、9月末より135億元増加。

商業銀行の不良債権比率は1.73%、9月末より0.02ポイント低下。

2021年末、商業銀行の正常貸出残高は162.0兆元、うち正常類貸出残高は158.2兆元、要注意類貸出残高は3.8兆元。

(4)リスク抵抗能力

2021年末、商業銀行の貸倒引当金残高は5.6兆元で、9月末より242億元増加。

引当カバー率は196.91%で、9月末より0.09ポイント低下。貸出引当率は3.40%、9月末より0.04ポイント低下。

2021年末、商業銀行(外国銀行支店を含まない)の自己資本比率は15.13%、9月末より0.33ポイント上昇。

  1. ①いささかも揺るぐことなく公有制経済を強固にして発展させ、②いささかも揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導する。
  2. ここは政治スローガンが大半であるので一部のみ掲載する。
  3. 21年10月から、中央巡視工作領導小組は金融分野への反腐敗調査を強化している。