田中 修

中国経済レポート

経済諸会議の動向(4)

新領域研究センター 田中 修

2022年1月27日


はじめに

2021年12月25~26日、中央農村工作会議が開催された。会議は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、第19回党大会・党19期各全会精神を全面貫徹し、中央経済工作会議精神を貫徹実施し、現在「三農」政策が直面する情勢・任務を分析し、2022年の「三農」政策を検討・手配した。本稿では、習近平総書記・李克強総理の事前の重要講話と会議の概要を紹介する1

1.習近平総書記の重要講話

会議の前、習近平総書記が中央政治局常務委員会会議を主催し、「三農」政策を特別テーマとして検討し、かつ重要講話を発表した。重要講話の概要は以下のとおりである。

各種リスク・試練に対応するには、国家の戦略ニーズに着眼し、農業の基盤をしっかり安定させ、「三農」政策をしっかり実施しなければならない。措置はハードで、執行力は強くなければならず、生産の安定・供給の保障を確保し、農業・農村の安定・発展を確保しなければならない。

一次産品の供給をしっかり保障することは、1つの重大戦略問題である。

中国人の飯碗はいかなる時でもしっかり自己の手中に収め、飯碗は主として中国の食糧をよそわなければならない。

食糧の安全を保証することは、皆に責任があり、党・政府が同じ責任を担い真に実効を上げなければならない。

合理的に配置しなければならず、主たる生産地域、主たる消費地域、生産と消費が均衡する地域は、いずれも面積・生産量を保障しなければならない。

耕地保護の要求は非常に明確でなければならず、18億ムー(1億2000万ha)の耕地は花も実もあるものでなければならない。農地は、農地であるだけでなく、良好な農地でなければならない。

堅実に構造を調整し、大豆と植物油の原料の作付けを拡大し、審査可能な実効を上げなければならない。

「副食品供給」の市長責任制を真に実施し、豚肉・野菜等の農業副産品の供給安全を確保しなければならない。

農村振興の前提は、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にすることであり、引き続きしっかり取り組み、脱貧困大衆の生活を更に1段階高めなければならない。

農村振興戦略との有機的なリンクを引き続き推進し、大規模な貧困逆戻りが発生しないことを確保し、脱貧困堅塁攻略の偉大な成果を確実に擁護し強固にしなければならない。

「三農」政策分野の指導幹部は、「三農」政策の技量向上にしっかり取り組まなければならない。

2.李克強総理の重要講話

李克強総理は、国務院常務会議において、次のように要求した。

いささかも手を緩めることなく、食糧と重要農産品の生産・供給にしっかり取り組み、地方の食糧安全の主体責任を厳格に実施し、食糧生産に力を入れてしっかり取り組み、食糧の作付け面積を安定させ、大豆と食用油の原料の増産を促進しなければならない。

農業資材の供給と価格の安定を確実に保障し、農民の積極性を動員して農地の管理を強化し、夏季穀物の豊作を全力で確保しなければならない。

食糧を土地と技術に求める戦略を実施し、耕地の保護と品質の建設を強化しなければならない。

脱貧困堅塁攻略の成果を全面的に強固にして拡大しなければならない。

農村の発展・建設を着実かつ穏当に推進し、農村ガバナンスを改善・整備し、農村の居住環境を引き続き改善向上させ、農村インフラ施設と基本公共サービス条件を不断に改善しなければならない。

3.会議の概要
(1)2021年の回顧

2021年に入り、農業生産は安定の中で前進を維持しており、食糧生産量は6.5億トン以上を維持し、脱貧困堅塁攻略の成果は強固となり拡大して、農村振興の全面推進は堅実な歩みを踏み出し、この成績を得るのは容易ではなかった。

農業・農村の改革・発展が収めた顕著な成果は、新たな局面を開き、変局に対応し、大局を安定させることに対して重要な作用を発揮した。

(2)2022年の基本方針

2022年は、第20回党大会が開催され、「三農」政策をしっかり行い、「三農」という基盤を安定させることは、平穏で健全な経済環境、国を安泰させ民を安んじる社会環境を維持することにとって、特殊・重要な意義を有する。

2022年の「三農」政策をしっかり行うには、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとして、第19回党大会・党19期各全会精神を全面貫徹し、中央経済工作会議精神を貫徹実施し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築し、質の高い発展を推進し、共同富裕を促進し、農村政策に対する党の全面指導を堅持・強化しなければならない。国家食糧安全保障と大規模な貧困逆戻りを発生させないという2つの最低ラインをしっかり守り、農村の発展・農村の建設・農村のガバナンスの重点政策を着実に秩序立てて推進し、年度の任務・的確な措置・実効ある方向性を際立たせ、農村の末端党組織の戦闘・堡塁の役割を十分発揮させ、農村振興の全面推進で新たな進展を収め、農業・農村の現代化を推進する面で新たな歩みを踏み出さなければならない。

(3)重要政策

①食糧生産と重要農産品の供給に全力でしっかり取り組まなければならない

食糧面積を安定させ、大豆と食用油原料の生産拡大に力を入れ、2022年の食糧生産を6.5億トン以上に安定させなければならない。

「副食品供給」の市長責任制を強化し、豚の生産を安定させ、家畜・家禽・水産品・野菜の有効な供給を確保する。

耕地を保護・建設するハードな措置をしっかり実施し、耕地保護の責任を厳格化し、耕地の用途管理規制を強化し、1億ムー(約7700万ha)のハイレベル農地を建設する。

種の源等の農業のカギ・コアとなる技術の難関攻略を大いに推進し、農機装置の研究開発・実用水準を高め、農業インフラの発展を加速し、農業科学技術のサポートを強化する。

②脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大しなければならない

農村振興重点支援県への支援傾斜を強化し、監視・支援メカニズムを早急に整備・実施し、産業と雇用による支援を強化し、大規模な貧困逆戻りが発生しないことを確保しなければならない。

③産業による農村発展促進に焦点を絞らなければならない

農村の第1次・第2次・第3次産業の融合を深く推進し、県域の民を富ませる産業を大いに発展させ、農業・農村のグリーン発展を推進し、産業の付加価値収益を農民に更に多く分け与えなければならない。

④農村建設を着実に推進しなければならない

農村の居住環境の改善・向上を掴みどころとして、現行の村落の基礎に立脚し、包摂的・基礎的・最低ラインを保障する民生建設を重点的に強化し、県域内の都市・農村の融合発展を加速し、徐々に農村に基本的現代生活の条件を備えさせなければならない。

⑤農村のガバナンスを強化・改善しなければならない

農村の末端党組織の戦闘・堡塁の役割を発揮させ、農村精神文明建設に有効なプラットフォーム・キャリヤーを刷新し、農村の矛盾・墳丘を適切に解決し、農村社会の調和・安定をしっかり擁護しなければならない。

⑥「三農」政策に対する党の指導を強化しなければならない

省・市・県・郷・村の5つのレベルの書記が農村振興に取り組むという要求を徹底させ、農村振興要素の保障を強化しなければならない。

(4)結び

習近平総書記の「三農」政策に関する重要論述を系統的に貫徹し、精神の実質を適切に理解し、核心の重要意義を把握し、具体的実際と緊密に結びつけて学び精通し、しっかり実行しなければならない。

常に農村政策に対する党の基本経験を遵守し、「三農」分野の作風建設を強化し、奮闘して農村振興を全面推進する政策の新局面を切り開かなければならない。

  1. 今回は習近平総書記の事前の重要講話が強調され、会議では胡春華副総理が講話を行う形に戻っている。