田中 修

中国経済レポート

「歴史決議」の起草プロセス

新領域研究センター 田中 修

2021年11月26日


はじめに

新華社北京電2021年11月17日は、歴史決議の「誕生記」を掲載した。また、新華社北京電11月16日の習近平総書記の歴史決議「説明」でも、起草プロセスが紹介されている。本稿では、誕生記に適宜「説明」の内容を補って、概要を紹介する。

2013年1月5日 新任中央委員会委員・候補委員に対し、習近平総書記は6つの時期・段階から、社会主義思想の提起から現在に至る歴史過程を分析し、中国の特色ある社会主義の歴史的淵源と発展プロセスを示し、世界社会主義500年の大歴史において中国の特色ある社会主義の発展を把握することを強調した。

2013年6月25日 第18回党大会後、最初の党創立記念日(7月1日)前夜、習近平総書記は中央政治局集団学習会を開催し、「党史・国史についての学習を引き続き強化し、歴史に対する深い思考の中で現実の活動をしっかり行い、更にしっかり未来に向かって歩み、中国の特色ある社会主義を堅持・発展させるための合格答案を不断に提出しなければならない」と指摘した。

2021年2月 特殊で重要な党内集中教育である、党史学習教育が開始された。

3月 習近平同志を核心とする党中央は、歴史的・戦略的政策決定を行った。

中央政治局常務委員会、中央政治局は前後して会議を開催し、党19期6中全会が党の百年奮闘の重大成果と歴史経験問題を重点検討・全面総括し、文件起草グループを設け関連文件を起草させることを決定した。

4月1日 党中央は通知を発出し、全会の議題について、党内外の一定の範囲内で組織的に討論し、広範に意見を徴求した。

20日余りで、各地方・各部門・各方面の109件の意見・建議が集まり、文件起草グループは、75.3万字の合本を作成した。

4月9日 北京中南海懐仁堂で、習近平総書記は文件起草グループ第1回全体会議を開催し、起草活動が正式にスタートした。習近平総書記が自ら起草グループ組長を担任した。副組長は、王滬寧と趙楽際であり1、党・国家の関係指導同志と関係中央部門・地方責任者同志が参加し、中央政治局常務委員会の指導下で文件起草活動を担当した。

この会議で、習近平総書記は重要講話を発表し、文件起草活動のために全面的な根本準則を提供した。

①方向性を把握した

 文件起草活動の重大意義を深刻に認識する。

②要求を提起した

 党の重大成果と歴史経験を科学的に総括する。

③主線を明らかにした

 党の百年奮闘のテーマ・主線、主流・本質を正確に把握する。

④原則を立てた

 強烈な政治責任感と歴史使命感をもって、精神を集中して文件起草活動をしっかり行う。真剣に学習し、深く研究し、民主を発揚し、紀律を厳正にしなければならない。

1カ月余りの後、文件稿の枠組方案の形が初歩的にできた重要な節目で、習近平総書記は再度文件起草グループ全体会議を開催した。

この会議で、習近平総書記は特に「歴史の連続性と歴史の段階性」「全面総括と重点を際立たせる」「成果の総括と失策の分析」「既に出ている結論と最新の認識」の4大関係をうまく処理しなければならないと強調した。

習近平総書記の指示に従い、文件起草プロセスにおいて一連の難題をすらすらと解決した。

①党の百年奮闘の重大成果と歴史経験の総括に焦点を絞る。

②中国の特色ある社会主義の新時代という重点を際立たせる。

③重大事件・重要会議・重要人物の評価については、党中央が既に出している結論とのリンクを重視する。

7月1日 中国共産党創立100周年慶祝大会が開催された。

文件起草グループ同志は大会に参加し、現場で習近平総書記の重要講話を拝聴した。この重要講話は、文件起草活動が依拠する重点であるのみならず、その中の多くの重要思想も文件の内容刷新のライトスポットとなった。

各地方・各部門・各方面が、決議意見徴求稿に対してフィードバックした1600件余りの意見に基づき、決議稿は初歩的に547カ所を増補・修正・簡素化し、フィードバックされた意見の吸収率は24.6%に達した。

7月29日 関連会議において、習近平総書記は文件審議送付稿に進展があったことを肯定すると同時に、「更に磨き上げ、更に推敲し、これについておしまいにしてはならない」と提起した。

9月6日 中央政治局会議は、決議意見徴求稿を党内の一定範囲に交付し、党内の一部老同志の意見徴求を含み2、意見を徴求することを決議した。

9月10日 習近平総書記は自ら座談会を開催し、各民主党派中央・全国工商聯の責任者、無党派人士代表から決議意見徴求稿に対する意見を聴取した。参加者は活発に発言し、10件の書面資料を提出し、多くの意見・建議で貢献した。

習近平総書記は、3回起草グループ全体会議、3回中央政治局常務委員会会議、2回中央政治局会議を開催した。枠組方案から審議送付稿に至るまで、一稿ごとに真剣に審査・修正し、具体的意見を出し、明確な要求を提起した。

習近平総書記は、文件起草活動を高度に重視し、常に文件起草活動が正確な方向に沿って前進するようリードした。

中央政治局常務委員同志は、決議文稿について真剣に審査し、多くの重要な修正意見・建議を提起した。

11月8日午前 党19期6中全会が開幕した。

午後 参会同志は10の小グループに分かれ、中央政治局活動報告と決議討論稿について深く討論を開始し、意見・建議を提起した。

2日半の十分な討論を経て、参会同志は138件の修正意見を提起した。文件起草グループは、これらの意見に基づき、討論稿について22カ所の修正を行うよう建議した。

11月10日夜 習近平総書記は、中央政治局常務委員会会議を開催し、各グループの討論情況報告を聴取し、文件の修正問題を検討・確定した。

11月11日午前 決議修正稿は小グループの討論に付され、決議草案を形成した。

午後 決議が承認された。

11月16日 新華社から決議全文が世界に公表された。

  1. 副組長については、習近平総書記の「説明」で明らかにされた。
  2. これは、習近平総書記が「説明」で強調している。