田中 修

中国経済レポート

経済情勢座談会

新領域研究センター 田中 修

2021年11月25日


はじめに

新たな経済の下振れ圧力が強まる中、李克強総理は11月18日、北京で「経済情勢専門家・企業家座談会」、22日は上海で「一部地方政府主要責任者座談会」を相次いで開催し、経済情勢を分析すると共に、今後の経済政策について意見・建議を聴取し検討を行った。

本稿では、この2つの座談会の概要を紹介する。なお、注目すべき個所は太字で示している。

1.経済情勢専門家・企業家座談会(11月18日北京)

李克強総理の発言の概要は、以下のとおりである。

今年に入り、わが国の発展は、疫病の多くの地での散発、深刻な洪水・冠水災害、大口取引商品価格の急速な上昇、電力・石炭供給の一時の逼迫等の多重の試練に遭遇した。

習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各方面は党中央・国務院の手配を実施し、広範な市場主体が奮闘努力して、経済は総体として着実に回復し、今年の主要目標を実現でき、雇用は年間任務を前倒しで達成した。

現在、内外情勢は依然として複雑・峻厳であり、わが国経済には新たな下振れ圧力が出現し、高いベースの上で引き続き平穏な運営を維持することは、多くの試練に直面している。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党19期6中全会精神を実施し、「新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築し、質の高い発展を推進する」という要求に基づき、引き続き常態化した疫病防御をしっかり行い、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)、とりわけ雇用・民生・市場主体の保障を強化し、マクロ政策の展望性・的確性を増強し、改革開放を推進し、周期を跨ぐ調節をしっかり行い、経済の難関越えを推進し、経済運営を合理的区間に維持し、雇用の大局的安定を維持しなければならない。

億を上回る市場主体は、中国経済の強靭性・潜在力の所在であり、雇用基盤を有力にしっかり支えており、マクロ政策は引き続き市場主体を軸に展開しなければならない。

制度的減税を継続し、既に定めた納税猶予政策を実施すると同時に、新たな組み合わせ方式による段階的な減税・費用引下げ措置を検討・採用し、R&D経費の割増控除、増値税の留保分の還付等の政策を整備し、製造業企業、中小・零細企業、個人工商事業者の困難緩和とイノベーション・グレードアップを支援する。

石炭火力発電企業を支援する各政策の完全実施を確保し、電力の安定供給を保証しなければならない。

的確な措置を採用して経済運営の調節を強化し、川下の中小・零細企業への大口取引商品価格上昇の伝播圧力を緩和する。

各方面は多くの方法を考えて、市場主体の発展のために良好な環境を創造し、更に多くの市場主体の難関克服・更なる活躍・新たな発展の実現を促進しなければならない。

改革開放を推進し、市場主体の活力を更に大きく奮い立たせることを通じて、困難・圧力に耐え抜かなければならない。

「行政の簡素化・権限の委譲、規制緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革を引き続き推進し、ビジネス環境を最適化し、公平な競争を擁護し、各種市場主体を同一視し、彼らそれぞれにことごとく腕をふるわせ、更に多くの雇用と個人所得増加をもたらし、消費拡大を促進する。

政府の投入の程度を維持し、重点建設を推進すると同時に、改革の方法を用いて社会(民間)投資の積極性を動員し、国内巨大市場の優位性をしっかり発揮させ、内需の潜在力を発揮させる。

一層対外開放を拡大し、輸出入支援政策を整備し、人民元レートの合理的な均衡水準での基本的安定を維持し、越境Eコマース・海外倉庫等の対外貿易の新業態を支援する。

RCEPの発効・実施のチャンスをしっかり掴み、国際協力を深化・拡大する。

自由貿易試験区等の開放プラットフォームの役割を発揮させ、更に強力に外資を吸収する。

実務にしっかり励み、開拓・イノベーションを進め、中国経済の改革の中での発展・開放の中での前進を推進する。

2.一部地方政府主要責任者座談会(11月22日上海)

上海市書記・市長、吉林省長、湖北省長、広東省長、貴州省長が発言し、李克強総理は、さらに江蘇・浙江・安徽・湖南・雲南等の省政府主要責任者と、経済運営情況についてビデオ交流した。李克強総理の発言の概要は以下のとおりである。

今年に入り、わが国の発展が遭遇した新たな試練は交錯・相乗し、予想を超えている。

習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国上下は党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹し、企業の困難緩和支援政策と改革の深化を併せ打ち出して実施し、大口取引商品価格の上昇、電力・石炭供給の逼迫、深刻な洪水・冠水災害等が経済運営に影響を及ぼすという際立った問題に有効に対応し、経済は堅塁攻略・難関克服の中で引き続き平穏に発展している。

同時に、内外環境には不安定・不確定要因が増大しており、わが国経済は新たな下振れ圧力に直面しており、我々は自信を確固とするのみならず、困難を更に充分に推し量り、方法を更に周到に考えなければならない。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党19期6中全会精神を真剣に貫徹し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、「6つの安定」「6つの保障」、とりわけ雇用・民生・市場主体の保障を強化し、歳末・年初を統一的に計画した周期を跨ぐ調節措置をしっかり実施し、エネルギー・電力保障を強化し、改革開放を推進し、工業化・都市化プロセスを推進し、常態化した疫病防御を引き続きしっかり実施し、リスクを防止・解消し、難関を越える中での経済の持続的で健全な発展を推進しなければならない。

現在、わが国の市場主体は既に1.5億社(件)を超えている。

市場主体が多く、発展が良好な地方では、経済はより活力と強靭性があることを実践は証明している。

各地方は、市場主体とりわけ中小・零細企業、個人工商事業者の保障を政策の注力点とし、国家の減税・費用引下げ、市場の供給保障・価格安定等の政策をしっかり実施し、措置を採用して中小企業への代金未払いを整理し、市場主体のコスト引下げ・難題解決を支援しなければならない。

国家は、減税・費用引下げを組み合わせた政策を検討して打ち出し、一定の規模を形成し、改革の方法を用いて市場主体の活力を奮い立たせる。

地方と関係部門は、市場主体の生存と発展のために良好な環境を創造し、関連経済政策措置を打ち出すと同時に、必ず実際から出発し、実際に即して適切な方法を見出し、キャンペーン式・盲進式・一律式の措置を避けなければならない。

政府は倹約を堅持し、財政力を集中して減税・費用引下げ措置の実施を保障し、基本民生と末端の運営を保障する。

国家は地方への移転支出を更に多く末端に直接交付し、省レベル財政も県レベル以下への支援を強化しなければならない。

経済の下振れ圧力に耐え抜くには、改革開放のひと踏ん張りを重視しなければならない。

市場主体の発展を制約する体制メカニズムの打破を軸に、精確に力を発揮し、「行政の簡素化・権限の委譲、規制緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革で新たなブレークスルーを得て、(各種市場主体を)同一視した公平な競争の市場環境を形成し、各種市場主体の活力を発揮させる。

ハイレベルの対外開放を推進し、RCEP実施のチャンスをしっかり掴み、国際協力を拡大し、更にうまく外資を吸収し、国際産業チェーン・サプライチェーンに更に深く融け入って、これを堅固にする。

民生の保障・改善等の政策をしっかり実施しなければならない。

市場・民間による雇用ルートを拡大し、大衆が冬を暖かく過ごすことを確保し、疫病・自然災害から受けた影響が深刻な民衆の基本生活を確保する。

形式主義・官僚主義に断固反対し、各政策が実効を上げることを保証する。