田中 修

中国経済レポート

金融分野への反腐敗調査

新領域研究センター 田中 修

2021年11月18日


はじめに

9月26日、趙楽際中央巡視工作領導小組組長は、金融単位の党組織に集中巡視を行うよう指示し、これを受け、中央巡視組が10月上旬頃、人民銀行、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、国家外貨管理局に入った(対外公表は10月12日)。


反腐敗調査は2カ月に及び、10月20日には、元人民銀行科学技術司長の王永紅が審査・監察調査を受けていることが判明した。


大手民間不動産会社の経営悪化から、金融リスクについて市場で懸念が広がるこの時期に、なぜ金融分野が狙い撃ちにされたのかは、不明である。本稿では、その際の巡視組組長の発言と各組織トップの発言を紹介する。

1.人民銀行

 (1)人民銀行担当:高飛中央巡視組長

金融は現代経済の核心であり、発展と安全に関わる。

第18回党大会以降、習近平同志を核心とする党中央は、金融政策・行政について一連の政策決定・手配を行い、新時代の金融の改革・発展のために根本準則を提供した。

金融単位に巡視を展開することは、党中央が金融政策・行政を高度に重視していることを十分体現しており、金融政策・行政への党の全面指導を堅持・強化し、党の建設とりわけ政治建設を促進するための重要措置であり、国家の経済安全を擁護し、金融業の質の高い発展を促進するための重要措置であり、金融分野で党内の厳格な統治を強化し、反腐敗闘争を促進・深化させるための重要措置である。

中国人民銀行党委員会は、政治的立ち位置を高め、政治責任を強化し、金融単位に対する巡視展開の重要意義を深刻に認識し、中央巡視組の活動を積極的に支援し、巡視監督を受けることの自覚性・主動性を確実に増強し、党中央が下した巡視任務を断固しっかり完成させなければならない。

巡視は政治監督であり、党内を厳格に統治するための有力な掴みどころである。

中央巡視組は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、巡視活動方針を全面貫徹し、政治巡視の位置づけを堅守し、金融単位の政策巡視の任務・重点を正確に把握し、政治と業務の関係を正確に処理し、党委員会の機能・責任に焦点を絞り、主要責任者・指導グループへの監督を強化し、「四つの意識」1を増強し、「四つの自信」2を確固とし、「二つの擁護」3を成し遂げるよう督促することを根本任務とし、党委員会が党の指導責任を履行する際に存在する政治面の拙さを深く査察し、巡視により党・国家が賦与した職責・使命を党組織が真剣に履行するよう督促し、新発展理念を完全・正確・全面貫徹し、人民大衆・実体経済の金融ニーズを更に好く満足させ、システミック金融リスクを発生させない最低ラインを断固しっかり守る。

習近平総書記の金融政策・行政に関する重要論述と党中央の重大政策決定・手配を学習貫徹し、「実体経済をサポートし、金融リスクを防止し、金融改革を深化させる」3項目の任務を実施している情況を重点的に了解する。

全面的に厳格な党内統治の主体責任・監督責任を実施し、紀律の作風の建設を強化している情況を了解する。

新時代の党の組織路線を実施し、指導グループの建設、幹部人材陣容の建設、末端党組織の建設を強化している情況を了解する。

中央巡視・会計検査等の監督実施で発見した問題の整頓・改善状況を了解し、政治巡視による執行の監督・保障、発展の促進・整備における役割を十分発揮し、金融の健全な発展のために堅固な政治保障を提供する。

 (2)郭樹清人民銀行書記・副行長

今回の巡視は、人民銀行党委員会の職務履行に対する、初めての全面的な「政治体験」であり、人民銀行系統組織が金融政策・行政に関する党中央の重大政策決定・手配を貫徹実施することへの監督検査・有力な後押しでもある。

人民銀行党委員会・各レベル党組織、党員・幹部全体が、党・人民の事業に対して高度に責任を負う態度に基づいて、誠心誠意巡視を受け、全力で中央巡視組と協調して活動を展開し、中央が下した巡視任務を共同でしっかり完成する。

巡視プロセスで、とりわけ将来のフィードバックを指示され引き継がれた問題について、誠意をもって受け、厳粛に対応し、直ぐに実行・改善し、真にしっかり改善し、整頓・改善の実際の行動・成果によって「二つの擁護」を実践する。

中央の巡視を受けることを政策改善の重要な契機とし、更に系統的に深く習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を学習・貫徹し、金融政策・行政に対する党中央の集中・統一的な指導をいささかも揺るぐことなく堅持し、新時代の人民銀行事業の質の高い発展を全面推進し、社会主義現代化強国建設の偉大な目標実現のために更に大きな貢献を行う。

 (3)易綱人民銀行行長

人民銀行は政治意識・全局観念を確実に増強し、中央巡視を受け入れ、巡視による整頓・改善を現在及び今後一時期の重要な政治任務として、同じ課題に共に答え、同じ方向に力を発揮し、巡視活動に関する党中央の重大手配を共同で質高く完成する。

中央巡視を受け、問題を全面的に探り出し、不足部分を早急に補充することを、実体経済の改善・サポート、金融リスクの防止・解消、金融改革開放政策の深化と緊密に結びつける。

今回の政治巡視を受けることを通じて、マクロ・コントロールと金融の管理・サービス水準を一層高め、現代中央銀行制度の建設を早急に推進し、開拓・イノベーション精神により中央銀行の各政策をしっかり実施し、更に好い成績を上げる。

2.銀行保険監督管理委員会

 (1)銀行保険監督管理委員会担当:楊国中中央巡視組長

話の内容は、高飛と同じ内容である。

 (2)郭樹清銀行保険監督管理委員会主席

中央第4巡視組が中国銀行保険監督管理委員会に対し巡視を展開することは、中国銀行保険監督管理委員会系統組織にとって、初めての全面的な政治体験・深刻な政治洗礼であり、銀行保険監督管理委員会の活動を党中央が高度に重視していることを体現している。

各レベル系統組織と広範な党員・幹部は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、「四つの意識」を増強し、「四つの自信」を確固とし、「二つの擁護」をしっかり成し遂げ、「国の大事」を胸に刻み、政治判断力・政治理解力・政治執行力を不断に高め、思想・政治・行動において、習近平同志を核心とする党中央と高度に一致させる。

巡視活動を支援し協調することを当面の重要任務とし、活動の中で存在する問題・不足を主動的に調査・処分し、系統的に整理して、実際に基づいて正確な方法を見出して情況に報に反映させなければならない。

今回中央巡視を受けたことを契機とし、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、金融ガバナンスシステムとガバナンス能力の建設を強化し、人民大衆と実体経済の金融ニーズを更に好く満足させ、国家経済・金融の安全を擁護し、金融業の質の高い発展を有力に促進しなければならない。

3.証券監督管理委員会

 (1)証券監督管理委員会担当:王栄軍中中央巡視組長

話の内容は、高飛と同じ内容である。

 (2)易会満証券監督管理委員会主席

党創立100周年、第14次5カ年計画事業の発展を推進するカギとなる時期において、中央第6巡視組の証券監督管理委員会への巡視は、中国証券監督管理委員会党委員会が党を管理・統治する責任を履行することにとって、最初の「政治体験」であり、中国証券監督管理委員会の活動に対する最初の「脈の診断」でもある。

党委員会は政治的立ち位置を一層高め、金融政策・行政に関する習近平総書記の重要論述を深く貫徹実施し、同じ課題に共に答えることを堅持し、巡視監督を受ける思想的自覚・政治的自覚・行動的自覚を確実に増強し、中央巡視組の活動に全力でしっかり協力する。

同時に、巡視を契機として、金融政策・行政に対する党の全面指導を自覚的に堅持・強化し、新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組の構築をサポートし、中国証券監督管理委員会系統組織の党建設の質を全面的に高め、資本市場の改革・発展・安定の各政策に着実にしっかり取り組み、「規範的で、透明、開放的、活力があり、強靭性のある」資本市場の建設に努力し、経済社会の質の高い発展を更に好くサポートする。


4.国家外貨管理局

 (1)国家外貨管理局担当:高飛中中央巡視組長

話の内容は、人民銀行と同じ内容である。

 (2)潘功勝国家外貨管理局長

国家外貨管理局党組織と党員・幹部全体は、巡視活動と金融政策・行政に関する習近平総書記の重要論述を深く学習貫徹し、政治的立ち位置を確実に高め、「四つの意識」を増強し、「四つの自信」を確固とし、「二つの擁護」を断固成し遂げ、思想・行動を巡視活動に関する政策決定・手配に確実に統一し、態度を正し、いささかも留保することなく巡視を受け入れる。

中央が国家外貨管理局に巡視活動を展開することの重大意義を十分認識し、中央巡視を受けることを党性の鍛錬の機会とし、中央巡視に協力することを重要な政治任務として、巡視活動がしっかり完成するよう断固協力しなければならない。

積極・主動的に整頓・改善を実施し、今回の巡視活動を、党・国家が賦与した職責・使命をしっかり履行することと結びつけ、金融改革を断固深化させ、国家経済・金融の安全を確実に擁護し、巡視活動の成果を実際の政策の中で真に体現し、外貨管理の各事業推進で新たな更に大きな成績を得なければならない。

  1. 政治意識・大局意識・核心意識・一致意識
  2. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  3. 習近平総書記の党中央・全党の核心としての地位を擁護し、党中央の権威と集中・統一的指導を擁護する。