田中 修

中国経済レポート

金融関連会議

新領域研究センター 田中 修

2021年9月30日


はじめに

恒大集団の経営危機が波紋を広げるなか、9月24日、人民銀行貨幣政策委員会第3四半期例会が開催された。また、29日には人民銀行と銀行保険監督管理委員会が合同で不動産金融工作座談会を開催した。本稿では、この2つの会議の概要を紹介する。なお、重要部分を太字で示した。

1.人民銀行貨幣政策委員会第3四半期例会(9月24日)
(1)内外の経済・金融情勢

今年に入り、わが国は疫病防御と経済社会発展政策を統一的に推進し、マクロ政策を有効に実施し、経済は総体として回復の態勢を継続している。

穏健な金融政策は連続性・安定性・持続可能性を維持し、市場の予想を科学的に管理し、実体経済のサポートに努力し、金融リスクを有効に防止・コントロールした。

貸出プライムレート改革のボーナス効果が引き続き発揮され、金融政策の伝達効率が増強され、貸出金利は安定の中で低下している。

人民元レートの予想は平穏であり、双方向への変動の弾力性が増強され、マクロ経済の安定器としての機能が発揮された。

(2)当面の金融政策

現在、世界の疫病はなお引き続き変化し、外部環境は更に峻厳・複雑化傾向にあり、国内経済の回復は依然として堅固ではなく、アンバランスである。

内外経済情勢の限界的変化の検討・判断・分析を強化し、国際マクロ経済政策の協調を強化し、外部の衝撃を防止し、精力を集中して自身の事柄にしっかり取り組み、周期を跨ぐ政策設計をしっかり行い、今年・来年のマクロ政策を統一的にしっかりリンクさせ、経済の質の高い発展を支援しなければならない。

穏健な金融政策は柔軟・精確、合理的・適度で、流動性の合理的充足を維持し、貸出総量の伸びの安定性を増強し、マネーサプライ・社会資金調達規模の伸びと名目成長率との基本的釣合いを維持し、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持しなければならない。

実体経済へのサポートを更に際立てて位置付けることを堅持し、経済の大局の総体としての平穏を擁護し、経済発展の強靭性を増強する。

再貸出・再割引と実体経済に直接到達する金融政策手段等の措置の牽引・帯同作用を一層しっかり発揮させ、新たに増やした3000億元の小型・零細企業支援再貸出をうまく用いて、小型・零細企業と個人工商事業者向け貸出の増加を支援し、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの元本償還・利払猶予政策と無担保貸出支援計画の期限延長をしっかり実施し、施策を総合して地域の協調発展を支援する。

金融サプライサイド構造改革を深化させ、大銀行がサービスの重心を下方に移すよう誘導し、中小銀行が主たる責任・本業に焦点を絞ることを推進し、金融市場の活力・強靭性を増強し、高度な適応性・競争力・包摂性を備えた健全な現代金融システムを整備する。

銀行の資本補充を支援し、実体経済へのサービスと金融リスク防止の能力を高める。

市場化した健全な金利形成・伝達メカニズムを整備し、中央銀行の政策金利体系を整備し、預金金利の監督管理を最適化し、貸出プライムレート改革の潜在力を引き続き発揮させ、実質貸出金利の一層の低下を推進する。

為替レートの市場化改革を深化させ、人民元レートの弾力性を増強し、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を堅持するよう誘導し、予想の管理を強化し、内部均衡と外部均衡のバランスをしっかり把握し、人民元レートの合理的水準での基本的安定を維持する。

金融が実体経済を有効に支援する体制メカニズムを構築し、イノベーションへの金融支援の体系を整備し、金融機関が製造業向け中長期貸出を増やすよう誘導し、民営企業への金融支援を経済社会発展への民営企業の貢献と適応させ、炭素排出削減支援手段を順序立てて推進し実効を上げ、炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルの実現促進を目標としてグリーン金融体系を整備する。

不動産市場の健全な発展を擁護し、住宅消費者の合法権益を擁護する。

金融のハイレベルで双方向の開放を推進し、開放の条件下、経済・金融の管理能力とリスク防止・コントロール能力を高める。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党19期5中全会、中央経済工作会議、「政府活動報告」精神を真剣に貫徹実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、「穏」(穏健・安定)の字を頭に置き、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、サプライサイド構造改革を深化させ、新たな発展の枠組の構築を加速し1、内需拡大戦略を堅持し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)を着実にしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)を全面実施し、金融政策を柔軟・精確に実施し、財政・産業・監督管理政策の間の協調を強化し、実体経済への金融支援とリスク防止を統一的に企画し、経済運営を合理的区間に維持し、経済の質の高い発展を推進しなければならない。

2.不動産金融工作座談会(9月29日)

会議は易綱人民銀行行長が主催し、潘功勝副行長が出席。銀行保険監督管理委員会からは周亮副主席・肖遠企副主席が出席し、ほかに住宅都市農村建設部、証券監督管理委員会の責任者、全国24の主要銀行の責任者が出席した。会議の概要は以下のとおりである。

近年、金融部門は不動産の長期有効なメカニズムを全面実施し、不動産金融のプルーデンス管理制度を適切に実施し、不動産金融政策の連続した安定を維持し、実体経済へのサービス、経済の転換・グレードアップの推進、不動産市場の平穏で健全な発展の促進において、積極的役割を発揮してきた。

金融部門は、党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、「地価・住宅価格・予想の安定」という目標を軸に、不動産金融のプルーデンス管理制度を正確に把握・執行し、「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産を短期的な経済刺激の手段としないことを堅持し、不動産の長期有効なメカニズムを引き続きしっかり実施し、住宅賃貸金融政策体系の整備を加速しなければならない。

金融機関は、法治化・市場化の原則に基づき、関係部門・地方政府と共同で不動産市場の平穏で健全な発展を擁護し、住宅消費者の合法権益を擁護しなければならない。

  1. 「新たな発展段階をしっかり把握」は削除されている。