研究者の紹介

中国経済レポート

地方政府主要責任者ビデオ座談会

新領域研究センター 田中 修

2021年4月1日


はじめに

江蘇省を視察していた李克強総理は、3月25日、一部の地方政府主要責任者ビデオ座談会を開催し、当面の経済情勢を分析するとともに、経済社会発展政策を一層しっかり実施することについて要求を提起した。座談会には、江蘇省書記・省長、江西省省長、広東省省長、四川省省長が出席した(新華社南京電2021年3月26日電)。本稿では、座談会における李克強総理の発言の概要を紹介する。

今年に入り、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各地方・各部門は党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に実施し、経済運営のスタートは良好であり、総体として安定・回復の態勢を持続している。

今年の情況は特殊であり、経済を分析するには前年同期比を見るだけでなく、前期比をも見なければならない。いくらかの経済指標の前年同期比の伸びは速いが、それは大きな程度前年同期のベースが低いという要因があり、前期比で見ると経済運営は総体として平穏である。

経済成長の予期目標は6%以上と確定したが、実際の運営ではやや高くなる可能性がある。やはり確固とした経済の基盤に立脚し、乱高下を回避し、平穏で健全な発展を実現しなければならない。

情勢を全面的・客観的・冷静に分析し、市場の予想をうまく誘導しなければならない。習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築して、引き続き「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策をしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を実施して、年間の経済社会発展の主要目標・任務の実現に努力し、質の高い発展を推進しなければならない。

経済運営を合理的区間に維持することに力を入れ、持続可能で健全な発展のために堅実な基礎を打ち固めなければならない。

現在、国際環境は依然として複雑であり、多方面に影響をもたらしている。とりわけ、大口取引商品価格の上昇が速く、国内経済運営においても雇用圧力がかなり大きく、一部業種の回復がかなり遅い等の問題が存在する。自信を確固とするだけでなく、困難・試練を正視しなければならない。

キーポイントにしっかり取り組み、雇用・民生・市場主体を保障する政策の程度を減じてはならず、財政直接交付資金の末端への下達を加速し、小型・零細企業等への減税・費用引下げ政策を早急に打ち出して実施し、かつ個人工商事業者への支援を増やすことを検討しなければならない。

実体経済への金融サービスを強化し、多くの措置を併せ打ち出して小型・零細企業の円滑な資金調達、綜合資金調達コストの安定の中での低下を確保する。

雇用の拡大、個人所得の増加、物価の平穏、生態環境の改善の実現に努力しなければならない。これは、経済運営を合理的区間に維持するための重要な基本任務である。

市場主体の活力を更に大きく奮い立たせることに力を入れなければならない。

わが国には1.38億社を超える市場主体があり、大企業が天地を支え、小企業が天地を覆い、9000万余りの個人工商事業者が2億人余りの雇用をもたらしている。まさに、市場主体の強靭性と努力が、経済のかなり速い回復、雇用の安定・拡大、民生の改善を支えているのである。

我々は、政策の注力点を市場主体に据え、彼らが一層回復し元気になることを促すだけでなく、改革開放を深化させ、市場主体の活力と内生動力を増強しなければならない。

引き続き「行政の簡素化・権限の委譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革を推進し、企業に係る審査・許認可を一層簡素化し、公正な監督管理を整備し、日常的な政務サービスを最適化する。

「起業・イノベーション」への支援を強化し、更に多くの新たな市場主体を育成し、人民大衆の創造力を奮い立たせる。

各地方は、土地の事情に応じて施策を実施し、心と力を尽くしてビジネス環境を改善し、市場主体と人民大衆に更に大きな実感を与えなければならない。

RCEP実施に関係する準備活動をしっかり行い、国内・国際大市場の連結に立脚して、開放を一層拡大し、協力拡大の中で産業チェーン・サプライチェーンの安定を擁護する。