経済諸会議の動向(2)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2021年1月7日


はじめに

中央経済工作会議終了後、各官庁は全国会議を開催し、政策各論を議論している。本稿では、12月31日に開催された全国財政工作ビデオ会議の概要を、2021年の財政政策を中心に紹介したい。

1.2021年の基本方針

2021年は、わが国現代化建設プロセスにおいて、特殊重要な一年であり、第14次5カ年計画のスタートであり、社会主義現代化国家の全面建設の征途のスタートであり、財政経済政策をしっかり行うことの意義は重大である。

2021年の財政政策をしっかり行うには、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、19回党大会、19期2中全会・3中全会・4中全会・5中全会及び中央経済工作会議精神を全面貫徹し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築し、質の高い発展の推進をテーマとし、サプライサイド構造改革の深化を主線とし、改革・イノベーションを根本動力とし、人民の日増しに増大する素晴らしい生活への需要を満足させることを根本目的として、システムの概念を堅持し、疫病防御と経済社会発展の成果を強固にして拡大し、発展と安全を更に好く統一し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を着実にしっかり行い、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を全面実施し、マクロ政策を科学的・精確に実施し、経済運営が合理的区間を維持するよう努力し、内需拡大戦略を堅持し、科学技術の戦略的サポートを強化し、ハイレベルの対外開放を拡大しなければならない。

積極的財政政策は質・効率を高め、更に持続可能にしなければならない。財政資源の統一を強化し、適度な支出の強度を維持し、支出構造の最適化を強化し、国家の重大戦略任務への財政力の保障を増強する。刻苦奮闘・勤倹節約・詳細な見積もりを堅持し、党・政府機関の倹約を堅持する要求を全面実施する。現代財政・税制の確立を加速し、予算制約・業績効果管理を強化する。地方政府債務の管理を強化し、地方政府の隠れ債務リスクの解消にしっかり取り組み、第14次5カ年計画の良好なスタートを確保し、卓越した成績で建党100周年を慶祝する。

2.財政政策の重点

2021年は、財政機能を積極的に発揮させ、サプライサイド構造改革という主線をしっかり把握し、需要サイドの管理を重視し、新たな発展の枠組の構築を推進する良好な第一歩を踏み出し、新たな気風を見出し、以下の10項目の重点政策を着実にしっかり行わなければならない。

(1)積極的財政政策を精確・有効に実施し、経済運営を合理的区間に維持するよう推進する

直接交付メカニズムの実施を一層整備し、しっかり取り組み、中央財政の直接交付資金の範囲を拡大し、直接交付資金の管理水準を高める。

引き続き減税・費用引下げを推進し、政策の連続性を維持する。地方政府特別債をうまく用いて、債券資金の使用業績効果を高める。

(2)財政・租税政策の支援・誘導を強化し、内需拡大戦略を断固実施する

投資構造を最適化し、投資空間を積極的に開拓する。税制・社会保障・移転支出等の調節を強化し、個人消費の拡大を促進する。国家重大地域戦略を実施する。人を核心とした新しいタイプの都市化を推進する。

(3)イノベーションの発展と産業のグレードアップを推進し、経済の質・効率とコアコンピタンスを高める

科学技術を財政支出の重点分野とすることを堅持し、カギ・コアとなる技術の堅塁攻略戦をしっかり戦い、科学技術の自立・自強を支援する。産業の基礎再構築プロジェクトを深く実施し、産業チェーン・サプライチェーンの最適化・グレードアップを推進する。政府の債務保証機関の役割を発揮させ、企業のイノベーションの活力を奮い立たせる。

(4)力を尽くして成果を出し、力量に応じて実施することを堅持し、基本民生の保障を強化する

雇用優先政策を実施し、教育の質の高い発展を促進し、社会保障の水準を着実に高め、社会保障基金の管理を整備し、健康中国の建設を推進し、文化事業・産業の発展を支援する。

(5)財政による農業支援政策を整備し、農村振興の全面推進を支援する

国家の食糧安全を保障し、農業の質・効率を高め、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大することと農村振興の有効なリンクを支援する。

(6)資金投入と汚染対策堅塁攻略任務を釣り合わせることを堅持し、グリーン発展を大いに推進する

汚染対策を強化し、重点生態保護・修復を推進し、気候変動への対応を積極的に支援し、生態環境の顕著な改善を推進する。

(7)重点分野のリスク防止・解消をしっかり実施し、財政・経済の健全な運営・持続可能性を確保する

地方政府の隠れ債務解消にしっかり取り組む。財政支出における「三保(基本民生、賃金、運営の保障)」支出の優先的地位を堅持し、末端の「三保」リスクを断固防止する。

(8)系統的に集積し、協同で効率を高めることを堅持し、現代財政・税制を早急に確立する

健全な地方税体系を整備し、綜合と分類が結合した個人所得税制度を検討して適時整備し、知的財産権保護・年金保険等の分野の中央と地方の財政権限・支出責任区分改革を推進し、予算管理制度改革を深化させ、国有資本・国有企業改革を着実に推進する。

(9)健全な制度メカニズムを整備し、財政への管理・監督を一層強化する

予算執行管理を強化し、予算管理の一体化を加速し、財政・会計監督体制メカニズムを整備し、監督管理局の役割を更に好く発揮させ、財政資金の使用業績効果を高める。

(10)対外財政・経済実務協力を深化させ、国際協力の新たな空間を開拓する

グローバルガバナンスシステムの改革に深く参加し、貿易・投資の自由化・円滑化を推進し、改革発展政策の大局を更に好くサポートする。

財政政策に対する党の指導を堅持・強化し、財政系統組織の党建設の質を全面的に高めなければならない。

学習・教育の的確性・実効性の向上に力を入れ、党の理論刷新を更に好く運用して、頭脳を武装し、実践を指導し、政策を推進する。

政治機関としての意識を牢固に樹立して、引き続き「二つの擁護」1を実践する思想的自覚・政治的自覚・行動上の自覚を増強する。

新時代の党の組織路線を断固貫徹し、忠誠・清廉・責任感のある素質の高い財政幹部の陣容の建設に努力する。

常に気風を正し、綱紀を粛正して、党風の廉潔政治建設を断固推進する。

中央の巡視による整理・改善活動をしっかり実施し、整理・改善の成果を財政の改革・発展のための強大な動力に転化する。

(参考)1-11月の財政政策の実施情況(「中国財政」2020年12月16日)

以下は数値が示されている部分を中心に概要を紹介する。

1.減税・費用引下げ

今年に入り、疫病の衝撃に対応するため、財政部は関係部門と迅速にパワーを組織化し、統一・協調を強化し、7種類28項目の優遇程度の大きい減税・費用引下げ措置を連続して公布・実施した。その中には、疫病防御の供給を保障する緊急措置もあれば、疫病の影響がかなり大きい困難業種への支援措置もあり、企業の業務・生産再開支援措置もあった。

とりわけ、小型・零細企業の難関克服支援に焦点を絞り、一層税・費用面の支援を強化した。これらの政策措置に2019年の大規模な減税・費用引下げの今年形成される次年度効果の減収を加えると、年間で企業の新たな負担減は、2.5兆元超と予想される。

減税・費用引下げが確実に実施・実現することを確保するため、関係部門は入念に組織化し、一連の積極有効な措置を採用し、政策実施の一定期間の有効性と精確性を高めた。地方への移転支出を強化し、地方財政の保障能力を増強し、かつ直接交付メカニズムを確立し、新たに増やした財政資金を市・県・末端に直接交付し、企業・人民に直接恩恵を与えた。

政策の宣伝・解説を強化し、納税・費用徴収サービスを最適化し、企業が政策を十分うまく用いるよう援助した。監督検査を強化し、法・法規に基づき収入の組織化を確保し、規定に反した企業に係る費用徴収問題を厳格に調査処分した。

各方面の共同努力の下、現在・費用引下げは有力に実施され、政策効果が徐々に顕在化している。1-10月、全国で新たな減税・費用引下げは2兆2301.61億元である。うち、新たな減税は7461.12億元、新たな費用引下げは1兆4840.49億元(うち企業の社会保険料引下げは1兆4335.45億元)である。

総じて見ると、今年疫病対応のために実施した減税・費用引下げ政策は、絶対額でも対GDP比でも、世界各国から見て比較的大きいものである。

2.財政資金の直接交付

財政資金の直接交付メカニズムは、疫病の影響に対応する重要措置であり、財政マクロ・コントロール方式の重大刷新である。

今年の実施情況から見ると、直接交付資金の下達速度は更に速く、投下先は更に精確で、管理は更に規範化され、予算管理の改善・資金の使用効率向上・財政コントロール効果の増強等の方面において、重要な役割を発揮した。

11月末、直接交付資金の下達は終了し、80%以上の資金は既に投入・使用されており、地方が「6つの安定」政策をしっかり行い、「6つの保障」任務を実施するために、堅実な保障を提供した。

今後、財政部は今年の直接交付メカニズムの経験・方法を真剣に総括した基礎の上に、常態化した財政資金直接交付メカニズムを検討・確立する。

(1)直接交付資金の範囲を合理的に拡大する

直接分配が可能な共同財政権限移転支出、条件に合致した特別移転支出、及び直接末端の財政力保障に用いる一般性移転支出を直接交付の範囲に組み入れる。初歩的な試算では、2021年の直接交付資金の規模は20年より大きい。

(2)部門の政策協調・組合せのメカニズムを整備する

部門の範囲を拡充し、職責の分業を最適化し、財政監督管理・会計検査を強化し、「職責が明確、分業が明確、疎通が円滑、協調の効率が高い」政策の枠組みの形成を推進する。

(3)直接公費資金への監督コントロール系統のサポートを強化する

直接交付資金への監督・コントロール系統を早急にグレードアップし、データ分析・事前警告機能を拡大し、部門間のデータ開放・シェアを一層推進する。

(4)財政資金直接交付メカニズムを予算管理制度改革深化の重要内容とする

直接交付メカニズムを予算管理プロセスに組み入れ、体制メカニズムを不断に整備し、制度による保障・制約を強化し、財政資金の使用効率を確実に高める。

3.中央から地方への移転支出

近年、予算法の関連規定に基づき、財政部は中央から地方への移転支出を省レベル財政部門に前倒しで下達し、省レベル財政部門は規定に基づき、これを細分化して地方各レベル財政予算に組み入れ、地方予算編成の完全性・合理性を高めている。

今年、財政部は「下達できるものはすべて下達する」の原則に基づき、引き続き移転支出の前倒し下達を強化し、実際に基づく清算、政策細分化の途中、緊急災害救助等の特殊項目を除き、その他移転支出資金は10月31日までに既に規定に基づき前倒し下達を終了した。

統計によれば、一般公共予算移転支出の前倒し下達は6.38兆元である。うち、一般性移転支出の前倒し下達は6.21兆元(うち共同財政権限移転支出2.74兆元)、特別移転支出の前倒し下達0.17兆元である。このほか、政府基金移転支出の前倒し下達が433億元、国有資本経営移転支出前倒し下達が14億元である。

4.地方政府特別債

2020年、全人代は新たに特別債3.75兆元の計上を批准した。国務院の批准を経て、財政部は既に各地方へ年間の新規特別債の額を下達し、地方が発行・使用の進度を加速するよう指導・督促し、疫病の影響のヘッジ・有効投資の拡大・マクロ経済の平穏な運営の促進等に対する特別債の積極的な役割を有効に発揮させた。1-11月、全国各地の特別債発行・使用情況は総体として良好であり、政策の期待に合致している。

(1)発行・使用進度が早く、規模が大きい

11月30日までに、全国累計で新たに3.55兆元を発行し、発行進度は95%、発行規模は前年同期比1.42兆元、67%増である。発行した特別債資金は、既に3.32兆元を支出し、発行規模の94%を占める。

(2)重点的に党中央・国務院が確定した重点分野に投下した

2020年の特別債資金は、主として党中央・国務院が確定した交通インフラ、エネルギー、農林・水利、生態環境保護、民生サービス、コールドチェーン物流インフラ、都市公共インフラ、産業パーク等の7大分野に用いると同時に、「新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市化、交通・水利等の重大プロジェクト」、公共衛生インフラ建設等を積極的に支援した。

うち、民生サービス、交通インフラ、都市公共インフラ、産業パークインフラに用いたものが73%を占める。同時に、各地方は規定に基づき特別債発行を推進し、中小銀行の資本の合理的補充に関連する政策にしっかり取り組んでいる。

(3)いくらかの重大プロジェクト建設を推進した

「プロジェクトを資金がフォローする」原則に基づき、各地方が特別債資金を使用するプロジェクトの前期施策を最重要な段階として、詳細・堅実にしっかりと行うよう督促し、消費を促し民生を優遇するのみならず、構造調整の持続力を増す「新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市化、交通・水利等の重大プロジェクト」建設及び公共衛生インフラ建設プロジェクトを着実に推進した。

同時に、重点を北京・天津・河北協同発展、「一帯一路」建設、長江経済ベルト発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア、海南自由貿易港建設等の国家重大地域発展戦略に傾斜させた。

(4)重大プロジェクトの資本金を用いて、牽引作用を発揮した

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、特別債を条件に合致した重大プロジェクトの資本金とする範囲を合理的に拡大し、かつ各地方が特別債をプロジェクト資本金に用いる規模のウエイトを20%から25%に高めた。既に3000億元超が、鉄道、軌道交通、農林・水利、生態環境保護等分野で条件に合致した重大プロジェクトの資本金に用いられており、うち84%は交通インフラ分野に投下され、特別債の「小よく大を制す」牽引作用が有効に発揮された。

  1. 習近平総書記の党中央・全党の核心としての地位の擁護、党中央の権威と集中・統一的な指導の擁護