新型肺炎とマクロ政策(54)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年10月15日


はじめに

本稿では、10月12日の一部地方政府主要責任者ビデオ座談会、14日の深圳経済特区設立40周年祝賀大会における習近平総書記の重要講話の概要を紹介する。

10月12日 一部地方政府主要責任者ビデオ座談会

李克強総理が主催し、座談会には遼寧省・江蘇省・福建省・江西省・陝西省の各省長が出席し、現地の経済情勢を報告し、今後の経済社会発展政策について建議した。

(1)各省長の報告の概要

ここ数カ月、国家規模の困難緩和政策、とりわけ減税・費用引下げの効果が引き続き顕在化し、経済は回復・上昇の態勢を続け、主要指標は徐々に回復し、新たな市場主体がかなり速く増えて大量の雇用を牽引し、民生の保障は有力・有効である。

(2)李克強総理のコメント

習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各地方・各部門は、党中央・国務院の政策決定・手配を積極的に実施し、わが国経済は巨大な困難・試練の中で基盤をしっかり安定させ、成長の安定・回復の態勢を示している。これは、ことに容易ではなかった。

発展は、わが国の一切の問題を解決する基礎・カギである。現在、内外環境は依然として複雑・峻厳であり、不確定性が増大しており、年間の目標・任務の達成にはなお刻苦・努力が必要である。

自信を確固とするだけでなく、困難・問題について透徹した分析を行い、実務に励み、経済成長の安定・回復の態勢を強固にしなければならない。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、新発展理念を貫徹し、「質の高い発展を推進し、新たな発展の枠組を構築する」という要求に基づき、常態化した疫病防御にしっかり取り組む中で、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を引き続きしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)任務を実施し、改革開放に依拠して発展の難題を解決し、脱貧困堅塁攻略戦に断固打ち勝ち、年間のプラスの経済成長の実現に努力し、年間の主要目標・任務の達成を確保しなければならない。

減税・費用引下げ・利益の委譲は、企業の困難緩和を助ける重要な支えであり、当面の経済の安定・回復のためのカギとなる措置である。

引き続き今後数カ月の政策実施にしっかり取り組み、直接(末端に)到達する財政資金を精確にうまく用いて、約束したことはすべて市場主体の身に実現することを確保しなければならない。決して割り引いてはならず、彼らの発展能力を増強しなければならない。

各レベル政府は倹約を堅持し、税未納分を集中して取り立て、むやみに費用を徴収することにより、政策のボーナス効果を削減することを防止しなければならない。

インクルーシブファイナンスのカバー範囲を拡大し、更に多くの中小・零細企業と困難業種のために有効な金融サービスを提供する。

新たな動力エネルギーの発展を加速しなければならない。

市場のパワーを積極的に動員し、新業態・新モデルを発展させ、オンライン・オフラインの融合を早急に推進し、新しいタイプと伝統的な消費を協同で共に前進させ、消費の潜在力発揮により経済成長を更に有力に牽引する。

経済の転換・グレードアップ推進を軸に、ルールを遵守し、「新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市化、水利・交通等の重大インフラ」プロジェクトの建設を着実に推進し、生態環境保護、カギとなる技術の難関攻略等の方面で、更に多くの新しい有効な投資の成長スポットを発掘する。

改革開放を引き続き推進し、ビジネス環境を最適化し、市場の活力と社会の創造力を更に大きく奮い立たせなければならない。

「行政の簡素化・権限の委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革を不断に深化させ、更に多くの新たな市場主体を出発・成長させて、経済の強靭性と活力を増強する。

断固開放を拡大し、対外貿易・外資を安定させる政策を実施し、輸出入の空間を開拓し、産業チェーン・サプライチェーンの安定擁護に努力する。

いささかも手を緩めることなく、基本民生の重点政策にしっかり取り組まなければならない。

多くの措置を併せて打ち出して、大学卒業生・出稼ぎ農民等の重点層の雇用を推進する。

退職者の年金の期日通りの支給を確保し、失業・最低生活保障等の保障政策をしっかり実施し、疫病、洪水・冠水災害の影響を受けた特殊困窮者の基本生活の最低ラインをしっかり保障する。

石炭・電力・石油・ガスの供給を統一し、大衆が暖かく冬を越せることを保障する。責任制を強化し、安全生産活動を着実にしっかり実施する。

10月14日 深圳経済特区設立40周年祝賀大会における習近平総書記の重要講話

ポイントは、以下の部分である。

(1)中国の特色ある社会主義経済特区建設のルール

①経済特区建設に対する党の指導を堅持し、常に経済特区建設の正確な方向を維持しなければならない。

②中国の特色ある社会主義制度を堅持・整備し、改革の実践を通じて中国の特色ある社会主義制度の更なる成熟化・定型化を推進しなければならない。

③「発展は絶対の道理である」ことを堅持し、大胆に突き進んで試し、大胆に人に先んじ、思想によって氷を砕き改革をリードして包囲を突破しなければならない。

④全方位の対外開放を堅持し、外資導入の吸引力をと海外進出の競争力を不断に高めなければならない。

⑤イノベーションを第一の動力とすることを堅持し、グローバルな科学技術革命と産業変革において主動権を勝ち取らなければならない。

⑥人民を中心とする発展思想を堅持し、改革の成果を、より多く、より公平に人民大衆にもたらさなければならない。

⑦科学的な立法、厳格な法執行、公正な司法、全人民の遵法を堅持し、法治を経済特区発展の重要な保障としなければならない。

⑧「きれいな水・山こそが宝の山である」という理念を実践し、経済社会と生態環境が全面的に協調した持続可能な発展を実現しなければならない。

⑨「一国二制度」の基本方針を全面・正確に貫徹し、内地と香港・マカオの融合発展を促し、相互促進しなければならない。

⑩全国一体における経済特区の放射作用を更に好く発揮させ、全国の発展のために貢献しなければならない。

(2)深圳経済特区の使命

現在、世界は百年未曾有の大変局を経ており、わが国は中華民族の偉大な復興を実現するカギとなる時期にあり、経済は既に、高速成長の段階から質の高い発展の段階に転換している。

深圳は、中国の特色ある社会主義の先行模範地区をしっかり建設し、社会主義現代化強国の都市の模範例を創建し、新発展理念貫徹実施の能力・水準を高め、改革を全面深化させ開放を全面拡大する新たな枠組を形成し、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設を推進し、「一国二制度」事業発展の新たな実践を豊富にして、社会主義現代化を率先して実現しなければならない。

①新発展理念を断固貫徹する。

サプライサイド構造改革という主線を堅持し、イノベーション駆動による発展戦略を断固実施し、基礎研究と応用基礎研究への投入を強化し、新たな動力エネルギーを育成し、新たなポテンシャルエネルギーを高めなければならない。

現代サービス業を大いに発展させ、サービス業発展のエネルギーレベルと競争力を高めなければならない。

更に開放的な人材政策を実施し、天下の英才を集めて用いなければならない。

②時代と共に進み、改革を全面深化させる。

党中央は深い検討を経て、深圳が総合改革テストを実施することを支援し、まとまった量のリストによる授権方式により、重要分野・カギとなる部分の改革について、深圳に更に多くの自主権を賦与する。

深圳経済特区は、責任を担い、正確な方向をしっかり把握し、重要分野において重大改革措置の推進に努力しなければならない。

③鋭意開拓し開放を全面拡大する。

生産・分配・流通・消費システムを最適化・グレードアップし、国内の大循環を円滑にし、国内・国際の2つの循環を連結する機能を増強し、ルール・基準等の制度型開放を早急に推進し、更にハイレベルの開放型経済新体制を率先して建設しなければならない。

「一帯一路」沿線国・地域と多層レベル・多分野の実務協力の展開を強化しなければならない。

④思考を刷新し、都市ガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化を推進する。

全サイクルへの管理意識を樹立し、都市ガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化を早急に推進し、超大型都市の特徴・ルールに合致したガバナンスの新たな道を歩むよう努力しなければならない。

⑤実務に励み、人民を中心とする発展思想を実践する。

更に多くの改革・イノベーション措置を打ち出し、雇用・教育・医療・社会保障・住宅・老人ケア・食品安全・生態環境・社会治安等の問題を1つ1つしっかり解決し、人民大衆の獲得感の質をより高め、幸福感をより持続可能にし、安全感をより保障するよう努力しなければならない。

人民大衆のパイオニア精神を尊重し、人民大衆の中から経済特区発展のイノベーション・創造活力を不断に汲み取らなければならない。

⑥積極的に成果を出し、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設を深く推進する。

広東・香港・マカオ大ベイエリア建設の重大な歴史的チャンスをしっかり掴み、三地域経済運営のルール・メカニズムのマッチングを推進し、市場の一体化水準を高めなければならない。

香港・マカオ同胞と海外華僑同胞が投資・興業、双方向の開放で重要な役割を発揮し、経済特区発展において新たな貢献を行うことを、引き続き奨励・誘導しなければならない。