新型肺炎とマクロ政策(49)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年9月17日


はじめに

本稿では、9月15日の世界経済フォーラムグローバル企業家ビデオ特別対話会での李克強総理の発言、16日の「新時代の民営経済統一戦線工作会議」の概要を紹介する。

9月15日 世界経済フォーラムグローバル企業家ビデオ特別対話会

600名近くの企業家が参加して開催された。李克強総理の発言は、以下のとおりである。

現在、世界範囲で新型コロナ肺炎の疫病がなお全面的にコントロールされていないことは、人民の生命の安全に深刻な脅威をもたらしており、世界経済に深刻なダメージをもたらしている。

習近平国家主席は人類運命共同体を強調し、疫病対応と経済回復には、いずれも団結協力の道を歩まなければならないとしている。グローバルな試練に対して、国際社会は広範にコンセンサスを凝集し、疫病防御と経済発展を協同で推進し、できるだけ早く疫病に戦勝し、世界経済の繁栄再現を推進する必要がある。

疫病が中国経済にもたらした深刻な影響に対して、我々は疫病防御と経済社会発展を統一的に推進し、経済は安定傾向・回復上昇を実現しており、ここ数カ月主要指標が安定回復の態勢を示していることは、中国経済が強大な強靭性を有することを表明している。

中国は1.2億の市場主体があり、中国人民は勤勉で知恵がある。億を上回る市場主体とりわけ数が多く範囲が広い中小・零細企業、個人工商事業者をしっかり保障してこそ、今年の都市新規就業者900万人以上増の目標を実現し、経済の基盤をしっかり安定させ、未来の発展のために基礎を打ち固めることができるのである。

マクロ・コントロールは程度をしっかり把握し、疫病に有効に対応するのみならず、持続可能でなければならない。

我々は改革の方法を用いてマクロ政策の実施方式を刷新し、新たに増やす財政資金について、末端に直接交付し、直接企業に恩恵を与え人民を利するメカニズムを確立し、政策実施の一定期間の有効性と精確性を高め、適時庶民の雇用を保障し、基本民生を保障し、市場主体を保障するために支えを提供している。

マクロ政策をしっかり実施すると同時に、「行政の簡素化・権限委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革の深化・ビジネス環境の最適化を重視し、企業の困難緩和を助けるのみならず、市場主体の活力を奮い立たせている。

7・8月の中国経済が引き続き安定・回復していることは、マクロ政策のポジティブな成果が不断に現れていることを物語っている。しかし、中国経済の更なる発展は、なお世界経済の不確定性に直面している。

困難・試練に対し、我々はマクロ政策の「適時・有力・合理性」を維持するプロセスにおいて、政策の実施を重視し、情勢の変化に応じて政策の中身を整備し、豊富にもして、経済の安定化傾向・回復上昇を強固にしている。

努力を経て、中国の経済発展は年度の主要な予期目標を実現でき、年間の経済はプラス成長を実現するものと見込まれる。

現在、国際環境には深刻・複雑な変化が発生しており、世界経済の不確定性が上昇しているが、平和と発展は依然として時代のテーマであり、交流と協力は依然として世界の趨勢である。

各方面は、共同で責任を担い、多国間主義を支援し、国際秩序を擁護し、世界人民に希望と自信をもたらさなければならない。自由貿易は曲折の中で前進しているが、大方向は変わっていない。経済のグローバル化の大趨勢には変化がないからである。共同で貿易と投資の自由化・円滑化を擁護し、できるだけ速やかにグローバル産業チェーン・サプライチェーンを回復し、世界経済を活性化しなければならない。

中国経済は既に深く世界に融け込んでおり、中国の発展は世界と不可分であり、世界の発展も中国を必要としている。外部環境がいかに変化しようとも、中国は常に断固改革を深化させ、開放を拡大する。

国内の大循環を主体とし、国内・国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展の枠組みを構築することは、閉鎖的な国内循環ではなく、開放的な国内・国際の2つの循環である。国内市場の潜在力を十分掘り起こすだけでなく、より強力に外資を吸収し、対外貿易を発展させて、ハイレベルの対外開放を実現しなければならない。

中国は、世界最大の発展途上国として、まさに新しいタイプの工業化・情報化・都市化・農業の現代化が深く発展する段階にあり、内需の空間は広大である。

中国は、引き続き市場参入を緩和し、外資の合法権益を保障し、内資・外資企業を同等と見なし、公平な競争の市場環境を作り上げる。

中国は、疫病の有効な防止・コントロールの前提の下、更に多くの人員往来の「クイックレーン」と貨物通関の「優遇レーン」を開設し、企業のグローバル経営のために便宜を提供する。

9月16日 新時代の民営経済統一戦線工作会議
(1)習近平総書記の重要指示

改革開放とりわけ第18回党大会以降、民営経済統一戦線工作は不断に強化・整備され、党・国家への奉仕のためのメインの活動において重要な役割を発揮した。

非公有制経済は、社会主義市場経済の重要な構成部分であり、非公有制経済の健全な発展と非公有制経済人士の健全な成長を促進することは、十分需要な意義を備えている。

「いささかも動揺することなく、公有制経済を強固にし発展させ、いささかも動揺することなく、非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導する」ことを堅持し、民営経済人士としっかり団結し、これをしっかり誘導することを重要任務としなければならない。

各レベルの党委員会は、民営経済統一戦線工作への指導を強化し、党の方針・政策を全面貫徹し、党中央の各政策決定・手配の貫徹実施にしっかり取り組まなければならない。

各レベルの統一戦線工作領導小組と党委員会統一戦線部は、リード・協調の役割を発揮し、工商聯は団体組織の役割を発揮して、民営経済人士を党の周囲に団結させ、民営経済の健全な発展を更に好く推進し、新時代に中国の特色ある社会主義事業を堅持・発展させ、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために、パワーを貢献するよう努力しなければならない。

(2)汪洋中央統一戦線工作領導小組組長の重要講話

習近平総書記の重要指示精神を真剣に学習・理解し、政治的高みから新時代の民営経済統一戦線工作をしっかり行うことの重要意義を深刻に認識し、「信任・団結・サービス・誘導・教育」の方針を堅持し、民営経済人士が「いささかも動揺することなく、公有制経済を強固にし発展させ、いささかも動揺することなく、非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導する」ことを完全正確に理解し、制度への自信を確固とするよう誘導し、彼らを党の周囲に更にしっかりと団結させ、民族復興の実現のために心と力を凝集させなければならない。

民営経済統一戦線工作は、ポイントが多く、範囲が広範で、戦線は長い。各レベルの統一戦線工作領導小組の構成員・単位は、党委員会の指導の下、各自が職責を果たし、政策・力を合わせなければならない。

民営経済人士を動員し、「自主学習・自主教育・自主向上」を強化し、個人の成功が自身の努力に由来するのみならず、「偉大な時代・偉大な事業・偉大な党」の賜物であることを深刻に認識させ、中国共産党と中国の特色ある社会主義への政治的アイデンティティ・思想的アイデンティティ・情感的アイデンティティを増進させなければならない。

民営経済人士を誘導し、国家への心情を樹立し、「産業により報国し、実業により国を強める」ことを己の任務とし、企業家精神と匠の精神を発揚させ、栄光ある事業と精確な貧困支援に積極的に参加させ、「国を愛し・事業を敬い、法を守って経営し、起業・イノベーションを進め、社会に還元する」模範としなければならない。

民営経済人士の陣容作りにしっかり取り組み、「素質を高め、構造を最適化し、役割を発揮させる」ことを目標とし、綜合評価活動を改善し、若者の育成を重視しなければならない。

民営企業発展の情況と要望を適時把握し、民営経済の発展を党中央が支援する政策措置の実施に一致協力し、企業が眼前の困難を正確に認識し克服することを援助し、発展への自信を強めなければならない。

親しみやすく清廉な政府とビジネスの関係を構築するという要求に基づき、政府と企業の健全な意思疎通・協議の制度を整備し、民営企業の権益擁護のメカニズムを整備し、幹部が主動的に成果を出し、前のめりでサービスを行うことを奨励し、真に親しみやすく清廉に実施させなければならない。

工商聯と業界代表団体の役割をうまく発揮させ、中国の特色ある業界代表団体組織を積極的に育成・発展させなければならない。