新5カ年計画と下半期の経済政策

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年8月4日


はじめに

7月30日、党中央政治局会議が開催され、今年10月に党19期5中全会が開催されることが決定された。テーマは、第14次5カ年計画と2035年までの長期目標に関する建議である。また、当面の経済情勢を分析・検討し、下半期の経済政策を手配した。本稿では、この会議の概要と、同時に公表された28日の党外人士座談会における習近平総書記の講話、及び参考として、李克強総理が13日に開催した経済情勢専門家・企業家座談会での総理発言の概要を紹介する。

1.党中央政治局会議(7月30日)
(1)第14次5カ年計画

第14次5カ年計画期間は、わが国が小康社会を全面的に実現し、第1の百年奮闘目標を実現して後、勢いに乗って上昇し、社会主義現代化国家建設の新たな征途をスタートさせ、第2の百年奮闘目標に向けて進軍する最初の5カ年計画である。

現在及び今後一時期、わが国の発展は依然として戦略的チャンスの時期にあるが、チャンスと試練にはいずれも新たな進展・変化がある。現在、世界は百年未曾有の大変局を経ており、平和と発展は、依然として時代のテーマであるが、同時に、国際環境は日増しに複雑になり、不安定性・不確定性は顕著に強まっている。わが国は既に質の高い発展の段階に入っており、発展は多方面の優位性と条件を備えているが、同時に、発展がアンバランス・不十分という問題が依然として際立っている。

わが国社会の主要な矛盾の進展・変化がもたらした新たな特徴・新たな要求を深刻に認識し、チャンスの意識とリスク意識を強め、発展ルールを把握し、闘争精神を発揚し、危機の中で新たなチャンスをうまく育て、変局の中で新たな局面をうまく切り開き、チャンスをしっかり掴み、試練に対応し、利に赴き害を避け、勇気を奮って前進しなければならない。

第14次5カ年計画期間のわが国経済社会の発展を推進するには、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、19回党大会と19期2中全会・3中全会・4中全会精神を深く貫徹し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」重要思想、科学的発展観、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党の基本理論・基本路線・基本方略を全面貫徹し、新発展理念を断固貫徹しなければならない。発展と安全を統一的に企画し、国家のガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化を推進し、経済の安定的な長期への歩み・社会の安定と調和を実現し、社会主義現代化国家の全面建設のために良好なスタートを切り、良好な歩みを踏み出さなければならない。

第14次5カ年計画期間の経済社会の発展を推進するには、経済社会の発展を党が指導する体制メカニズムを堅持・整備し、質の高い発展の実現のために根本的保証を提供しなければならない。常に「発展は人民のために、発展は人民に依拠し、発展の成果は人民が共に享受する」ようにし、素晴らしい生活への人民の志向を不断に実現しなければならない。

新発展理念を発展の全プロセス・各分野に貫徹し、更に質が高く、更に効率がよく、更に公平で、更に持続可能で、更に安全な発展を実現しなければならない。断固改革を推進し、開放を引き続き拡大し、発展の動力・活力を引き続き増強しなければならない。展望性をもって思考し、全局性をもって計画し、戦略的に配置し、全体として推進し、発展の規模・速度・質・構造・効率・安全の統一を実現しなければならない。

(2)経済の現状認識

今年に入り、新型肺炎疫病の深刻な衝撃に対し、我々は人民の生命の安全と身体の健康を第一とすることを堅持し、マクロ政策の対応を強化し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)を着実にしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)を全面実施して、疫病防御と経済社会発展政策の統一において重大な成果を得た。

経済は着実に回復し、業務・生産の再開は月ごとに好転し、4-6月期の経済成長は明らかに予想よりも好く、3大堅塁攻略戦(脱貧困・環境対策・債務リスク解消)は着実に推進され、経済構造は引き続き最適化され、産業のデジタル化・スマート化への転換が顕著に加速し、改革開放は引き続き深化され、人民の生活は有力な保障を得た。

このことは、党中央の政策決定・手配が正確であり、党の指導が堅固・有力であり、わが国の経済の強靭性が高まっており、中国人民が偉大な創造力を有しており、中国の特色ある社会主義制度が強大な生命力を備えていることを十分示すものである。

当面の経済情勢は依然として複雑・峻厳であり、不安定性・不確定性がかなり大きく、我々が遭遇している多くの問題は中長期的なものである。持久戦の観点から認識し、国内の大循環を主体とし、国内・国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展の枠組みを早急に形成し、疫病防御と経済社会発展政策の中長期における協調メカニズムを確立し、構造調整の戦略方向を堅持し、更に多く科学技術イノベーションに依拠し、景気サイクルを跨ったマクロ・コントロールの設計・調節を整備し、成長の安定とリスク防止の長期バランスを実現しなければならない。

(3)下半期の経済政策

下半期の経済政策をしっかり行うには、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、疫病防御と経済社会発展政策を更に好く統一し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、改革開放の深化を堅持し、内需拡大という戦略的基点をしっかり把握し、市場主体の活力を大いに保護し奮い立たせ、「6つの安定」政策を着実にしっかり実施し、「6つの任務」を全面的に実施して、質の高い発展を推進し、社会の安定・大局を擁護し、年間の経済社会発展の目標・任務の達成に努力しなければならない。

マクロ政策の実施で実効を上げることを確保しなければならない。

財政政策は更に積極的に成果を出し、実効を重視しなければならない。重大プロジェクトの建設資金を保証し、質・効率を重視しなければならない。

金融政策は更に柔軟・適度にし、精確に導かなければならない。マネーサプライと社会資金調達規模の合理的伸びを維持し、総合資金調達コストの顕著な低下を推進しなければならない。新規融資の重点を製造業、中小・零細企業に向けなければならない。

マクロ経済政策は協調を強化し、財政・金融政策と雇用・産業・地域等の政策が集合効果を形成するよう促進しなければならない。

①いささかも緩むことなく、常態化した疫病防御にしっかり取り組み、健全な常態化した疫病防御メカニズムを整備し、医療・衛生物資の備蓄を強化し、疫病防御国際協力を強化し、実際の行動によって人類衛生健康共同体の構築を推進しなければならない。

②引き続き内需を拡大し、疫病の影響を克服して、最終消費を拡大し、個人消費のグレードアップのために条件を創造しなければならない。

③長期に着眼し、有効な投資を積極的に拡大し、社会(民間)資本の参加を奨励しなければならない。

④新しいタイプのインフラ建設を加速し、重大地域の発展戦略を深く推進し、国家重大戦略プロジェクトの実施の歩みを加速しなければならない。

⑤新しいタイプの都市化によって、投資・消費需要を牽引し、メガロポリス(都市群)・都市圏の一体化した発展を推進する体制メカニズムの刷新を推進しなければならない。

⑥産業チェーン・サプライチェーンの安定性と競争力を高め、脆弱部分の補強と長所の増強を更に重視しなければならない。

⑦農業の基礎的地位を全力で強固にしなければならない。

⑧改革開放を更に強力に推進し、改革深化の方法を用いてビジネス環境を最適化し、国有企業改革3年行動方案をしっかり実施し、引き続き開放を拡大しなければならない。

⑨資本市場の基礎制度の建設を推進し、法に基づき証券の違法活動を厳しく取り締まり、資本市場の平穏で健全な発展を促進しなければならない。

⑩「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産市場の平穏で健全な発展を促進しなければならない。

⑪民生保障をしっかり行い、困窮大衆の基本生活保障政策をしっかり実施し、有効な措置を採用して若者の雇用に対する疫病の影響を緩和し、出稼ぎ農民への就業サービスを強化し、帰郷した出稼ぎ農民の近場での就業を誘導しなければならない。

⑫脱貧困堅塁攻略を強化し、現行基準下での農村貧困人口の全部脱貧困・貧困県の全部解消を確保しなければならない。

⑬引き続き汚染対策堅塁攻略戦をしっかり戦い、長江・黄河の生態保護重大プロジェクトを推進し、長江での10年禁漁をしっかり実施しなければならない。

⑭緊急管理にしっかり取り組み、安全生産を強化しなければならない。

⑮水害防止・災害救助を有力に組織し、南北方面の河川が安全に増水の時期を乗り切るよう統一的にしっかり取り組み、災害後の復興・再建を入念に計画し、人民の生命・財産の安全を確保しなければならない。

2.党外人士座談会(7月28日)

習近平総書記が主催した。会議には李克強総理、汪洋全国政協主席、王滬寧党中央書記処書記、韓正副総理が出席し、李克強総理が上半期の経済政策に関連した情況を報告し、下半期の経済政策に関する党中央の考慮を紹介した。習近平総書記の重要講話の概要は、以下のとおりである。

当面の経済情勢を正確に認識し、深く調査研究し、改革の全面深化を更に強く推進し、発展が直面する難題を積極的に解決し、各方面から来るリスク・試練と巨大なプレッシャーを解消して、改革・発展を推進し、各種リスク・試練に戦勝するため、広範なコンセンサス・強大なパワーを凝集しなければならない。我々は試練に対応する堅固な決意・断固とした意志・堅実な国力を有し、各種リスク・試練に戦勝する十分な気力・能力・知恵があり、いかなる国家・いかなる者も中華民族が偉大な復興を実現する歴史的歩みを阻むことはできない。

今年から、我々は突如やって来た峻厳な試練に直面している。今回の新型肺炎疫病は、新中国成立以降わが国が遭遇した伝染速度が最も速く、感染範囲が最も広く、防御の難度が最大の重大突発公共衛生事件であり、わが国経済社会に未曾有の衝撃をもたらした(以下は、出席者の貢献への評価)。

現在疫病防御の局面・情勢は平穏であり、経済運営は基本的に回復しており、7-9月期、10-12月期は勢いに乗って上昇し、疫病防御と経済回復の成果を強固にして拡大し、1-6月期の損失を補填するよう努力する。

安定の中で前進するという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、常態化した疫病防御と経済社会発展政策を更に好く統一し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持しなければならない。内需拡大という戦略的基点をしっかり把握し、市場主体の活力を保護し奮い立たせることに力を入れ、「6つの安定」政策を着実にしっかり実施し、「6つの保障」任務を全面実施し、マクロ経済政策の実施で実効を上げることを確保しなければならない。産業チェーン・サプライチェーンの安定性・競争力を高め、改革開放を最大程度推進し、経済の質の高い発展を推進し、民生の保障と水害防止救援活動をしっかり行い、社会の安定の大局を擁護し、年間の経済社会発展の目標・任務の達成に努力しなければならない。

民主諸党派、工商聯、無党派人士の皆さんに3点を希望する、

①経済発展において遭遇する困難・試練に、全面的・弁証的・発展的に対応し、広範な構成員が自信・決意を確固とし、経済の持続的発展のために新たな貢献を行うよう誘導しなければならない。

②目標・任務に焦点を絞り、共産党中央が関心を払う重点問題・国家経済社会の発展におけるカギとなる問題に焦点を絞って、各自の特色・優位性を発揮し、各レベル組織と各方面人材の積極性・創造性を発揮させ、各種人的資源と専業シンクタンクを統一的にうまく運用し、見識・価値ある意見・建議を提起し、質の高い発展推進のために献策し力を発揮する。

③思想の誘導を強化し、広範な構成員が、改革深化・発展プロセスにおいて出現した矛盾・問題を正確に認識して対応し、自国内外の各種リスク・試練を正確に認識して対応するよう誘導して、疑惑を解消し、情緒をなだめ、矛盾を解消する政策をしっかり実施しなければならない。

(参考)7月13日 経済情勢専門家・企業家座談会

李克強総理が主催した。李克強総理の発言概要は、以下のとおりである。

「今年の疫病の衝撃と世界経済の衰退は、わが国経済に未曾有の影響をもたらしている。習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国上下が共同で努力し、疫病を有効に抑制し、時機を失することなく業務・生産再開を推進して、最近経済は伸びが回復する勢いが現れ、徐々に安定を回復する態勢が現れ、中国経済の強大な強靭性と巨大な挽回の余地を示しており、発展への自信を確固としなければならない。

しかし、国際環境の不確定性はなお増加しており、情勢は依然として峻厳で、国内経済が直面する困難・試練とりわけ雇用圧力はなお十分際立っており、引き続き激戦への準備をしっかり行わなければならない。

習近平『新時代の中国の特色ある社会主義』思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、疫病の常態化した防御をしっかり行い、『6つの安定』『6つの保障』をしっかり軸として、企業の困難緩和を助け、市場の活力を奮い立たせる規模の大きい政策を全面実施し、更に強力に改革開放を推進し、経済の基盤をしっかり安定させ、基本民生をしっかり保障し、リスクを有効に防止して、年間の経済社会発展の目標・任務の達成に努力しなければならない。

マクロ政策実施の一定期間における有効性を増強し、雇用・民生・市場主体の保障に力を入れなければならない。

積極的財政政策・穏健な金融政策・雇用優先政策を堅持し、かつ全面実施して、企業に対して更に大規模な減税・費用引下げ・利益移譲を行う。

今年は、改革を通じて、新たに増やした財政資金を末端に直接交付するメカニズムを確立した。できるだけ速やかに効果が現れ、企業・人民に恩恵をもたらすことを確保しなければならない。

流動性の合理的充足を維持し、企業とりわけ中小・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題の緩和を一層推進し、現代の技術・手段を運用してインクルーシブファイナンスを発展させ、貸出量を有効に増やすのみならず、綜合的な資金調達コストを引き下げる。

多くの措置を併せ打ち出して、大学卒業生・帰郷した出稼ぎ農民等の重点層の就業を援助し、労働集約型企業に対し差別化した税・費用、金融支援政策を実施し、より多くの雇用吸収を奨励する。

改革開放を動力とすることを堅持し、市場主体の活力を十分奮い立たせ、発展の強靭性を増強しなければならない。

『行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化』改革を一層深化させ、ビジネス環境を最適化し、資源配分における市場の決定的な役割を更に大きく発揮させ、政府の役割を更に好く発揮させる。

起業・イノベーションの生態環境を整備し、人材を誘導・集約し、工業インターネット(産業用モノのインターネット)を大いに発展させ、大中小企業の調和のとれた発展により、更に多くの新業態・新モデルを生み出し、更に大きい開放条件の下で、国際競争・協力の新たな優位性を育成する。

改革の方法を用いて消費の潜在力を更に大きく発揮させ、オンライン・オフラインの融合を通じて農産品の販売と輸出商品の国内販売等の新たな空間を開拓し、品質の優れた消費財の供給を豊富にし、消費のグレードアップを誘導する。

政府投資の役割を発揮させ、社会(民間)のパワー投入を牽引し、『新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市、重大プロジェクト』等のプロジェクト建設を推進して、有効な投資によって関連産業の発展と雇用の増加を牽引する」。