新型肺炎とマクロ政策(38)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年7月16日


はじめに

本稿では、7月14日の国家発展・改革委員会座談会、一部重点省市対外貿易安定・外資安定座談会、15日の国務院常務会議の概要を紹介する。

7月14日 国家発展・改革委員会座談会

韓正副総理が主催し、次のように述べた。

「今年に入り、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、疫病防御と経済社会発展政策の統一推進は顕著な成果を得て、わが国経済は徐々に安定・回復しており、潜在力が十分で強靭性が強いという鮮明な特徴を十分に示し、年間の経済社会発展の目標・任務の実現のために堅持な基礎を打ち固めた。

今後、引き続き明晰な頭脳を維持し、情勢の予想・検討・判断を強化し、常態化した疫病防御をしっかり行う前提の下、『6つの安定』(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、『6つの保障』(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)にしっかり軸を定め、実施で効果を上げるようしっかり取り組み、小康社会の全面実現の目標・任務の実現に努力しなければならない。

目標志向・問題志向・結果志向をより重視し、目標・任務を細分化し、精確な施策を強化し、各方面の政策を統一的にしっかり実施しなければならない。

マクロ政策の協調メカニズムの作用を好く発揮させ、産業チェーンの協調、業務・生産の回復をより重視し、国際産業チェーン・サプライチェーンが不安定であることによるリスク・試練に積極的に対応しなければならない。

需給両サイドの『温度差』の解消をより重視し、長期と短期を結びつけ、内需拡大という大方策にしっかり取り組まなければならない。

人民を中心とする発展思想を堅持し、庶民の雇用・基本民生を保障する政策の実施に力を入れなければならない。

分類した指導の強化をより重視し、差別化した政策を実施し、各地方の発展の潜在力を奮い立たせなければならない。

重点政策を際立たたせてしっかり取り組み、北京・天津・河北協同発展、長江経済ベルトの発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設、海南の改革開放全面深化、長江デルタの一体化発展、黄河流域の生態保護と質の高い発展等の重大地域発展戦略を引き続き推進する。

質の高い『一帯一路』の共同建設をより重視し、重点プロジェクトにしっかり取り組み、リスクを有効に防止しなければならない。

戦略的高みに立つことをより重視し、重大問題に対する研究を強化し、経済社会の発展の大局に奉仕しなければならない」。

7月14日 一部重点省市対外貿易安定・外資安定座談会

胡春華副総理が浙江省義烏で主催し、次のように述べた。

「対外貿易・外資は、経済発展において十分重要な作用があり、対外開放を直接体現したものであり、対外貿易・外資の基盤をしっかり安定させることは、政策全局にとって極めて重要である。

峻厳・複雑な国際経済情勢に対して、各地方とりわけ対外経済・貿易重点地域は、責任感・使命感を一層増強し、主体的責任を確実に担い、さらに積極・主動的に政策をしっかり実施しなければならない。

実際の情況に基づいて政策目標を画定し、あらゆる手を尽くして達成に努力しなければならない。

各政策の実施にしっかり取り組み、管轄地の需要に合致した政策措置を遅滞なく検討して打ち出し、企業の難関克服を援助し、市場主体をしっかり保障するより努力し、『倒産の波』『海外移転の波』の出現を防止しなければならない。

越境Eコマース・市場調達貿易 等の新業態・新モデルの模索を奨励し、自由貿易試験区・総合保税区・越境Eコマース総合試験区等のプラットホームの役割を十分に発揮させなければならない」。

7月15日 国務院常務会議
(1)大衆による起業・万人によるイノベーション

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、「6つの安定」政策を全面的にしっかり実施し、「6つの保障」任務を実施し、疫病の衝撃と発展環境の変化に対応するには、イノベーション駆動の発展戦略を貫徹し、大衆による起業・万人によるイノベーションを深く推進し、市場の活力と社会の創造力を奮い立たせ、新動力エネルギーによって雇用・市場主体の保障を支え、とりわけ大学卒業生・帰郷した出稼ぎ農民等の重点層の雇用を支援しなければならない。

①起業・イノベーション主体への支援を増やさなければならない

中央予算内投資で計上した特別資金で起業・イノベーションモデル基地建設を支援する。放置された工場・住宅、利用効率の低い土地等を活性化し、起業・イノベーション重点プロジェクトの支援を強化する。政府が投資するインキュベーション基地等は、一定割合の敷地を大学卒業生・出稼ぎ農民等に無料で提供しなければならない。初めて起業し、1年以上正常な経営を行っている帰郷・入郷起業者に対し、臨時の起業補助金を与えることを認める。

②起業・イノベーションモデル基地が、大中小企業横断的、地域横断的な発展プラットホームを建設することを奨励しなければならない

専門化した科学技術成果の実用化サービスプラットホームを建設する。

③金融機関が設備のファイナンスリースと起業関連の保険業務を展開することを奨励しなければならない

保険資金で財務上の株式投資業を展開することへの規制を廃止し、地域的な株式市場において、株式投資・起業投資の割当譲渡のテストを展開する。

④起業により雇用を牽引するモデルキャンペーンを実施しなければならない

企業、起業・イノベーションモデル基地、インターネットプラットホームが連合した、幼児保育・家事サービス・観光・Eコマース等の起業訓練の展開を推進し、職業選択の観念を誘導し、雇用空間を開拓する。

数学・物理学・化学・バイオ等の基礎理論研究を強化・促進し、青少年が基礎理論を学習・模索することを奨励し、国家イノベーション能力の向上のために基礎を打ち固めなければならない。

(2)地方政府特別債

7月中下旬までに、全人代の承認を得た3.75兆元の地方政府特別債新規増発枠は、既に2.24兆元を発行し、1.9兆元を支出し、すべて脆弱部分の補強・重大建設に用い、疫病の影響に対応し、有効な投資を拡大し、経済の基盤をしっかり安定させることに、積極的な役割を発揮した。

各地方は、特別債の発行・使用を加速し、「新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市化、重大プロジェクト」、公共衛生施設の建設を支援し、需要に応じて防災・減災建設強化に用いてもよく、できるだけ速やかに実物の成果量を形成し、プロジェクトの質を確保しなければならない。

プロジェクトが短期内には建設実施が難しく、資金用途の調整が確かに必要なものについては、原則9月末までに手順に従い報告・届出を済ませなければならない。

債券資金の投下先を最適化し、既存債務の借換に用いることを厳禁し、イメージ作りプロジェクトや面子を立てるだけのプロジェクトを実施することを決して認めない。

(3)予算法実施条例

会議は、「中華人民共和国予算法実施条例(修正案)」を決定した。案は、予算法関連に規定を細分化し、近年の財政体制改革と予算管理実践成果を法形式により固定化したものである。特に公共財政を節約し人民を豊かにすることに用いるため、財政支出を社会に向けて公開することを明確に規定しており、一般性移転支出をきめ細かく公開して地方に交付し、特別移転支出をきめ細かく公開して地域・プロジェクトに交付し、単位の予算・決算を項目まで公開し、基本支出を細目まで公開し、政府債務・機関運営経費・政府調達等を規定に基づき公開することを要求している。

また財政資金使用の一定期間における効果を高めるため、県レベル以上の各レベル政府は、次年度の移転支出の一定割合を、前倒しで1つ下のレベル政府に交付することを規定している。